洋紙(ようし)とは? – 基本的な定義と読み方

洋紙とは、一般的に西洋で生まれ発展した製紙技術を用いて製造される紙の総称です。
「ようし」と読みます。
これは、日本の伝統的な手漉き和紙(わし)と対比して使われることが多い呼称です。
現代社会において、私たちが日常的に目にする新聞、書籍、コピー用紙、印刷物などの多くは洋紙に分類されます。
その最大の特徴は、主に木材パルプを原料とし、機械によって大量生産される点にあります。
これにより、比較的安価で均質な紙を安定的に供給することが可能となっています。
英語では、洋紙を指す特定の単語はなく、一般的に "paper" と表現されます。
文脈によっては "Western-style paper" や "machine-made paper" と説明的に表現することもあります。

製紙工場イメージ

洋紙の製造と歴史的背景

洋紙の原料は何ですか? – 主成分と補助材料

洋紙の主原料は、主に木材パルプです。
木材を機械的または化学的に処理して繊維を取り出したもので、針葉樹(マツやスギなど繊維が長い)と広葉樹(ユーカリやブナなど繊維が短い)のパルプが用途に応じて使い分けられます。
木材から新たに製造されたパルプは「バージンパルプ」と呼ばれます。

木材パルプ以外にも、以下のようなものが原料や補助材料として使用されます。

  • 古紙パルプ: 回収された古紙を再利用したもので、環境負荷低減の観点から重要です。
    コスト削減や環境負荷低減の観点から、多くの洋紙はバージンパルプと古紙パルプを配合して製造されています。
  • 非木材パルプ: ケナフ、竹、バガス(サトウキビの搾りかす)など、木材以外の植物繊維から作られるパルプ。
    特定の性質を持たせたい場合や、森林資源保護の観点から注目されています。
  • 填料(てんりょう): 炭酸カルシウムやクレー(カオリン)などの鉱物粉末。
    紙の白色度や不透明度、平滑性を高め、インクの裏抜けを防ぐ目的で加えられます。
  • サイズ剤: インクの滲みを防ぐために加えられる薬品。
    かつては酸性の硫酸アルミニウム(ミョウバン)とロジンが使われていましたが、現在は中性のAKD(アルキルケテンダイマー)やASA(アルケニル無水コハク酸)が主流です。
  • その他薬品: 紙力増強剤、染料、蛍光増白剤などが用途に応じて使用されます。

洋紙の作り方 – 製紙機械による連続生産

洋紙の製造は、大規模な製紙機械(抄紙機:しょうしき)を用いて連続的に行われます。
基本的な工程は以下の通りです。

  1. パルプ化: 原料となる木材チップや古紙を水とともに煮解したり、機械的に解繊したりして、繊維をバラバラの状態にします(パルプ)。
  2. 調成: パルプに填料やサイズ剤などの薬品を混合し、叩解(こうかい)という工程で繊維を物理的に処理して紙の強度を高めます。
  3. 抄紙(しょうし): 調成されたパルプ液(パルプスラリー)をワイヤーパートと呼ばれる網の上に薄く均一に流し込み、脱水しながら繊維を絡み合わせて湿った紙の層(湿紙)を形成します。
  4. プレス: 湿紙を複数のロールで挟んで圧力をかけ、さらに水分を絞り取るとともに紙の地合いを緻密にします。
  5. 乾燥(ドライヤー): 加熱された多数のシリンダー(ドライヤーロール)に紙を交互に接触させ、蒸気で水分を蒸発させて乾燥させます。
    この段階で紙の水分率は数%程度になります。
  6. 仕上げ(カレンダー処理など): 必要に応じて、カレンダーロールと呼ばれる金属製のロールで紙の表面に圧力をかけて平滑性や光沢を与えます。
    その後、巻き取り機で大きなロール状に巻き取られ、断裁されて製品となります。

洋紙の歴史 – 日本への導入と普及

洋紙の技術は、18世紀末から19世紀初頭にかけてヨーロッパで確立されました。
日本に洋紙が本格的に導入されたのは明治時代初期です。
日本で初めて洋紙の生産に成功したのは有恒社(ゆうこうしゃ)で、1874年(明治7年)に東京で製造を開始しました。
その翌年の1875年(明治8年)には、渋沢栄一らが設立した抄紙会社(後の王子製紙)も工場を竣工させ、日本の洋紙産業の黎明期を築きました。

当初は、伝統的な和紙に比べて品質が安定せず、また高価であったため普及は限定的でしたが、政府の殖産興業政策の後押しや、活版印刷技術の導入、新聞や雑誌の発行部数増加に伴い、洋紙の需要は急速に高まりました。
日清・日露戦争を経て国内生産体制も強化され、大正時代には和紙の生産量を凌駕するようになりました。

なぜ過去の洋紙は酸性紙だったのですか?そして現代は?

かつての洋紙、特に19世紀後半から20世紀後半にかけて製造されたものの多くは「酸性紙」でした。
これは、インクの滲みを抑えるためのサイズ剤として、ロジンと硫酸アルミニウム(ミョウバン)が広く用いられたためです。
硫酸アルミニウムは水と反応して硫酸を生成し、紙のpH値を酸性にします。

酸性紙は、時間とともに紙に含まれるセルロース繊維が酸によって加水分解され、黄ばみや脆化(ぜいか:もろくなること)が進行しやすいという欠点がありました。
これが「洋紙の寿命は100年ですか?」という疑問の一因ともなっています。
実際に、50年から100年程度の期間でボロボロになってしまう酸性紙の図書や文書は少なくありません。

しかし、この問題に対処するため、1980年代以降、製紙技術は大きく進歩しました。
現在主流となっているのは「中性紙」または「アルカリ性紙」です。
これらは、中性のサイズ剤(AKDやASA)を使用し、填料としてアルカリ性の炭酸カルシウムを配合することで、紙のpH値を中性~弱アルカリ性に保ちます。

中性紙は酸性紙に比べて格段に保存性が向上し、適切に保存されれば数百年以上の寿命が期待できるとされています。
国際標準化機構(ISO)では、恒久的な保存を目的とした紙の規格としてISO9706(紙-永久保存用-要求事項)を定めており、この規格を満たす紙は「永久保存用紙」として認められています。

洋紙の種類と他の紙との比較

多種多様な洋紙の種類 – 用途に応じた分類

洋紙は、その用途や特性によって非常に多くの種類に分類されます。
代表的なものを以下に示します。

  • 印刷・情報用紙:
    • 非塗工紙(上質紙、中質紙など): 表面に塗工処理を施していない紙。
      書籍本文、ノート、コピー用紙などに使われます。
      上質紙は化学パルプ100%、中質紙は化学パルプ配合率が40%~100%未満の紙と規定されています。
    • 塗工紙(アート紙、コート紙、軽量コート紙など): 表面にクレーや炭酸カルシウムなどの顔料と接着剤を混ぜた塗料を塗布し、平滑性や光沢、印刷適性を高めた紙。
      雑誌の表紙やグラビア、ポスター、カタログなどに使われます。
      塗工量によってアート紙(両面で40g/m²程度)、コート紙(両面で20g/m²程度)、軽量コート紙などに分かれます。
    • 微塗工紙: 塗工紙と非塗工紙の中間的なもので、薄く塗工されています。
      チラシや書籍本文などに使われます。
    • 新聞用紙: 主に新聞印刷に使用される、比較的低品質で安価な紙。
      高い古紙パルプ配合率が特徴です。
  • 包装用紙:
    • クラフト紙: 強度が高く、包装材や紙袋などに使われます。
      未晒し(茶色)と晒し(白色)があります。
    • 純白ロール紙: 薄手で片面に光沢がある紙。
      菓子などの包装に使われます。
  • 衛生用紙:
    • ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオルなど: 吸水性や柔軟性が重視されます。
  • その他特殊紙: 感熱紙、ノーカーボン紙、耐油紙、合成紙など、特定の機能を持たせた紙も洋紙の範疇に含まれます。

和紙と洋紙の根本的な違い

和紙と洋紙は、原料、製法、特性において多くの違いがあります。

特徴 和紙 (Washi) 洋紙 (Youshi)
主な原料 楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの靭皮繊維 木材パルプ、古紙パルプ
繊維の長さ 長い 短い
製法 主に手漉き(一部機械漉きもある) 機械漉き(大量生産)
紙の構造 繊維が複雑に絡み合い、薄くても強靭 繊維の絡み合いは比較的単純
耐久性 高い。
特に中性~弱アルカリ性のものは数百年~千年以上の保存性も
(酸性紙は低い)中性紙は大幅に向上、数百年程度が期待される
風合い 独特の温かみ、柔らかさ、美しい繊維の表情 均質、平滑、多様な加工が可能
主な用途 書道、日本画、表具、工芸品、文化財修復など 印刷物全般、筆記用、包装用、衛生用など、広範な用途

和紙の繊維は非常に長いため、薄くても丈夫で、独特の風合いと優れた保存性を持ちます。
一方、洋紙は繊維が短く、機械による大量生産に適しており、均質で印刷適性が高いのが特徴です。

「洋紙」と一般的な「用紙」という言葉の違い

「用紙(ようし)」という言葉は、紙全般を指す非常に広範な用語です。
これには、洋紙も和紙も、さらには板紙なども含まれます。

一方、「洋紙(ようし)」は、その「用紙」という大きなカテゴリの中で、西洋起源の製紙技術で作られた紙を特定して指す言葉です。
つまり、「用紙」は「洋紙」に含まれるという関係になります。
文脈によっては、単に「紙」と言う場合でも洋紙を指していることが現代では多いですが、厳密には「用紙」が最も包括的な表現です。

洋紙と板紙の違いは?

洋紙と板紙を区別する基準は、その坪量(つぼりょう)厚さですが、その境界は必ずしも明確に定義されていません。

  • 洋紙(Paper): 比較的薄く、柔軟性があります。
    日本では坪量が120~130g/m²程度を境とすることがあります。
  • 板紙(Paperboard): 厚く、剛性(曲げにくさ)が高いのが特徴です。
    段ボールの原紙(ライナー、中芯)、紙器(箱)、台紙などに使われます。

一般的には、折ったり丸めたりしやすいものが「紙(洋紙)」、箱を作ったり構造材として使われるような厚手のものが「板紙」と理解されています。

洋紙のメリット・デメリットは?

メリット:

  1. 大量生産と低コスト: 機械による連続生産が可能で、比較的安価に安定供給できます。
  2. 均質性: 品質が均一で、印刷や加工に適しています。
  3. 種類の豊富さ: 印刷適性、筆記適性、白色度、平滑度、光沢など、用途に応じて多種多様な製品が存在します。
  4. 加工適性: 裁断、折り、製本など、様々な加工が容易です。
  5. リサイクル性: 古紙として回収・再利用するシステムが確立されています。

デメリット:

  1. (過去の酸性紙の)保存性の低さ: 前述の通り、過去の酸性紙は経年劣化しやすかったですが、現代の中性紙では大幅に改善されています。
  2. 和紙に比べた耐久性: 一般的に、同じ厚さであれば和紙ほどの物理的強度や長期保存性(特に修復を繰り返すような用途)は期待しにくい場合があります。
  3. 環境負荷の側面: 原料調達(森林伐採)や製造工程(エネルギー消費、薬品使用)における環境への影響が指摘されることがありますが、持続可能な森林管理(FSC認証など)や環境配慮型製法の導入が進んでいます。

洋紙まとめ

洋紙は、私たちの生活や文化、経済活動に不可欠な素材です。
木材パルプを主原料とし、機械で大量生産されることで、安価かつ均質で多様な種類の紙が供給されています。
歴史的には酸性紙による劣化問題がありましたが、現代では保存性に優れた中性紙が主流となり、その寿命も大幅に向上しました。
和紙とは異なる特徴を持ち、板紙とは坪量や厚さで区別されます。
そのメリットを活かしつつ、環境負荷低減への取り組みも進められている洋紙は、今後も情報伝達や包装など多岐にわたる分野で重要な役割を担い続けるでしょう。

国際紙パルプ商事では、デジタル時代だからこそ響くアナログ表現物として、紙媒体での魅力を再発見する資料をしております。
売り上げアップに貢献する、紙媒体を今一度活用してみてはいかがでしょうか。
資料詳細は以下よりダウンロードいただけます。

関連資料はこちら

デジタル時代だからこそ響く
アナログ表現物の魅力とは?

紙など実際に手に取れる媒体に印刷した、いわゆるアナログな印刷物。

紙の質感やギミックなど視覚以外でも訴求できたり、長期保存性が高いなどのメリットがあります。

~SHIFT ONではこんなサービスがご提供可能です~

SHIFT ON greenとは

SDGsやカーボンニュートラルなど、環境対応プロジェクトの企画から実行まで包括的に支援します。

関連ページ

SHIFT ONの関連サービスについてお問い合わせ

SHIFT ON greenでは環境・機能材ソリューションをご提案いたします。
まずはお気軽にお問い合わせよりどうぞ。

SHIFT ONについて、
もっと詳しく知りたい方へ

SHIFT ONのソリューションに
関するお問い合わせや、
資料のダウンロードはこちらで承ります。

お問い合わせ

ソリューションに関する
ご質問やご相談など、
お気軽にお問い合わせください。

問い合わせる

お役立ち資料

事業の最適化に役立つ
ホワイトペーパーが、
無料でダウンロードいただけます。

資料ダウンロード

持続可能な社会や事業に向けた行動変容に対して意識を「シフト」させるための取り組みを提案します。

SHIFT ONについて

紙製品に関する意外と知らない用語が詰まってます!
ぜひお役立ち用語集、ご活用ください。

用語集