化学パルプとは－SHIFT ON（シフトオン）の用語集

化学パルプとは

化学パルプとは？その定義と特徴

化学パルプとは、薬品を使って木材などの植物繊維からリグニンなどの不要成分を溶解除去し、繊維を分離・精製したパルプのことです。

化学パルプと機械パルプの3つの違い

1．製造方法：化学パルプは薬品、機械パルプは機械的な力で製造
2．強度と品質：化学パルプは強度・白色度・印刷適性に優れる
3．コストと用途：機械パルプは安価で大量生産向き、化学パルプは高価格で高品質用途

項目	化学パルプ	機械パルプ
製造方法	薬品でリグニンを溶解	機械的な力で遷移を分離
繊維の損傷	少ない	多い
白色度	高い	低い
印刷適性	高い	普通
価格	高い	安い
環境負荷	薬品使用による排水処理が必要	比較的低い
用途	印刷用紙、記録用紙、高級紙、包装用紙など	新聞用紙、チラシ、パンフレット、段ボール中芯、衛生用紙など

化学パルプの製造工程と紙の特性：用途や環境への影響

化学パルプの一般的な製造工程

化学パルプの製造工程は、大きく分けて以下の５つの工程から構成されます。

1．蒸解：
木材チップを蒸解釜に入れ、硫化ナトリウムなどの薬品と高温高圧下で反応させ、リグニンを溶解します。
クラフトパルプ製造の場合は、黒液と呼ばれる廃液が生成されます。
2．洗浄：
蒸解後のパルプを水で洗浄し、未蒸解物や異物を除去します。
3．漂白：
必要に応じて、パルプ中の残存リグニンを除去し、白色度を高めるために漂白処理を行います。
塩素漂白、二酸化塩素漂白、酸素漂白など、様々な漂白方法があります。
近年では、環境負荷の低い**無塩素漂白（TCF、ECF）**が主流となっています。
4．叩解：
パルプ繊維に機械的な衝撃を与え、繊維を微細化させ毛羽立ちをさせることで結合を促すことをフィブリル化させるといいます。
これにより、紙の密度、強度、平滑性、印刷適性などが向上します。
5．抄紙：
叩解されたパルプを大量の水で希釈し、抄紙機と呼ばれる機械で薄く均一な形に成形します。
最後に水分を除去し、乾燥・圧搾することで紙が完成します。

化学パルプから作られる紙の特徴

化学パルプを主原料とする紙は、その製造方法と原料の特性から、以下のような特徴を持ちます。

●高い白色度：純粋なセルロース繊維から作られるため、白色度が高く、印刷が鮮やかに映えます。
●強度が高い：機械パルプと比較して繊維が損傷しにくく、引っ張り強度、破裂強度、引き裂き強度などの紙の強度特性に優れています。
●滑らかな表面：表面が滑らかで、インクの乗りが良く、高品質な印刷が可能です。
●印刷適性が高い：表面が平滑でインクの吸収性が均一なため、オフセット印刷やグラビア印刷など、様々な印刷方式に適しています。
●保存性が高い：リグニンなどの劣化しやすい成分が少ないため、長期保存が必要な記録用紙や書籍用紙などに適しています。

化学パルプの用途例

化学パルプはその優れた特性から、様々な分野で利用されています。

●印刷・情報用紙：コピー用紙、書籍用紙、印刷用紙、PPC用紙、インクジェット用紙、OA用紙など
●衛生用紙：ティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、紙おむつ、生理用品など
●特殊用紙：写真用紙、感熱紙、ノーカーボン紙、トレーシングペーパー、耐水紙、合成紙など

環境への影響と持続可能性

化学パルプ製造は、環境負荷が高い産業の一つとされてきました。特に、蒸解工程での薬品使用、漂白工程での塩素系薬品の使用、黒液と呼ばれる廃液の処理などが課題でした。

しかし近年では、環境負荷低減に向けた技術開発が進んでいます。

●無塩素漂白（TCF、ECF）：
塩素系薬品を使用しない漂白方法（ECF：Elemental chlorine Free）や二酸化塩素を含めた塩素系漂白薬品も全く使用しないTCF（Total Chlorine Free）などがある。
●黒液回収システム：
蒸解廃液である黒液を回収・濃縮し、ボイラー燃料として再利用するシステムの導入
●持続可能な森林経営：
計画植林や認証制度による、持続可能な森林経営の推進
●非木材パルプ：
竹、ケナフ、麦わらなどの非木材資源を活用したパルプ製造

これらの技術革新と取り組みにより、化学パルプ産業は、環境負荷を低減し、持続可能な産業へと進化しつつあります。

まとめ化学パルプとは？

紙製品の例

化学パルプは、薬品を用いて製造されるパルプであり、機械パルプと比較して強度、白色度、印刷適性に優れています。
印刷・情報用紙、衛生用紙など、幅広い用途で使用されており、私たちの生活に欠かせない素材です。
環境負荷低減に向けた技術開発も進んでおり、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。