広葉樹とは:多様な姿を持つ森の主役

「広葉樹(こうようじゅ)」とは、その名の通り、幅の広い葉を持つ樹木の総称です。
私たちの身の回りにある多くの木々、例えば街路樹のケヤキや公園のサクラ、秋に美しく紅葉するモミジなどが広葉樹の仲間です。
これらの樹木は、一般的に春に葉をつけ、秋から冬にかけて葉を落とす「落葉樹」が多いですが、一年を通して葉をつける「常緑樹」の広葉樹も存在します。
カシやシイなどがその代表例です。

広葉樹は、地球上の様々な環境に適応しており、熱帯雨林から温帯、さらには冷温帯の一部にまで広く分布しています。
その種類は非常に多岐にわたり、世界には数万種、日本国内だけでも数百種以上の広葉樹があると言われています。
これらの樹木は、私たちの生活や地球環境において非常に重要な役割を担っています。

広葉樹の主な特徴

広葉樹は、針葉樹と比較していくつかの明確な特徴を持っています。

  • 葉の形: 最も分かりやすい特徴は、その葉の形です。
    広葉樹の葉は、一般的に平たくて幅が広く、様々な形(丸い、卵形、手のひら状など)をしています。
    葉脈が網の目のように走っているのも特徴です。
  • 花の形: 広葉樹の花は、一般的に小さくて目立たないものが多いですが、サクラやツバキのように大きくて美しい花を咲かせる種類もあります。
  • 果実: 様々な形の果実をつけます。
    ドングリ(ナラ、カシ)、クリ、サクラの実、カエデのプロペラ状の果実など、種類によって多種多様です。
    これらの果実は、鳥や動物の餌となり、森林生態系を支えています。
  • 材の構造: 広葉樹の材(木材)は、細胞の構造が複雑で、道管と呼ばれる水の通り道が発達しています。
    この道管の配列によって、木目が多様な模様を描き出します。
    材の硬さや重さも種類によって大きく異なり、非常に柔らかいバルサ材から、非常に硬いカシ材まで様々です。
  • 成長速度: 種類や環境にもよりますが、一般的に針葉樹に比べて成長が遅い傾向があります。
    しかし、一度大きくなると、豊かな枝葉を茂らせ、広い面積に日陰を作ります。
  • 生態系への貢献: 広葉樹林は、多様な生物の生息地となります。
    昆虫、鳥類、哺乳類など、多くの生き物が広葉樹の葉、花、果実、樹皮、材を利用して生活しています。
    また、落ち葉は分解されて腐葉土となり、土壌を豊かにし、森林全体の生産性を高めます。

代表的な広葉樹の種類

日本には様々な広葉樹が自生しており、それぞれの地域や環境に適応した固有種も見られます。
代表的な広葉樹をいくつかご紹介します。

      • ブナ: 冷温帯の山地に広大な森を形成する代表的な落葉広葉樹です。
        幹は灰色で滑らか、葉は楕円形です。
        ブナ林は豊かな水源を育む「緑のダム」としても知られています。
      • ナラ・カシ: ブナ科の仲間で、硬くて丈夫な材を持ちます。
        ナラは落葉樹、カシは常緑樹が多いです。
        ドングリをつけ、古くから人々に親しまれてきました。
        家具材や建築材、燃料としても利用されます。
      • ケヤキ: 大きく枝を広げる姿が美しい落葉広葉樹で、街路樹や公園木としてよく見られます。
        材は硬く、建築材や家具材として高級とされています。
      • カエデ: 秋の紅葉が特に美しいことで知られる落葉広葉樹です。
        種類が多く、葉の形も様々です。
        材は家具や楽器などに使われます。
      • サクラ: 春に美しい花を咲かせることで日本人に最も親しまれている樹木の一つです。
        多くの種類があり、園芸品種も豊富です。
        材は家具や工芸品に利用されます。
      • シイ・タブノキ: 西日本などの温暖な地域に多い常緑広葉樹です。
        照葉樹林の主要な構成種であり、一年中緑豊かな森を作ります。

これらの他にも、クリ、クルミ、トチノキ、ホオノキなど、日本には多様な広葉樹が存在し、それぞれの特性を活かして様々な形で私たちの生活に関わっています。

広葉樹とは:産業と生態系におけるその重要性

広葉樹は、その多様な特性から、木材としての利用だけでなく、紙パルプの原料、さらには地球全体の生態系維持においても極めて重要な役割を担っています。
ここでは、広葉樹が持つ産業的な価値と、針葉樹との違い、そしてパルプ利用に焦点を当てて詳しく見ていきましょう。

広葉樹と針葉樹、その違いとは?

樹木は大きく「広葉樹」と「針葉樹」に分類されます。
これらの違いを理解することは、それぞれの樹木の特性や用途を知る上で非常に重要です。

特徴 広葉樹 針葉樹
葉の形 平たくて幅が広い(様々な形) 細くて尖った針状または鱗状
花の形 小さくて目立たないものが多い(例外あり) 目立たない(風媒花が多い)
果実 多様(ドングリ、クリ、サクランボなど) 球果(マツボックリなど)
種子 果実の中に含まれる 球果の鱗片の間にある
落葉/常緑 落葉樹が多いが、常緑樹もある 常緑樹が多いが、落葉樹もある(カラマツなど)
材の構造 複雑(道管が発達)、木目が多様 単純(仮道管)、木目が比較的まっすぐ
成長速度 一般的に遅い 一般的に速い
代表例 ブナ、ナラ、ケヤキ、サクラ、カエデ、カシ スギ、ヒノキ、マツ、カラマツ、モミ

このように、広葉樹と針葉樹は、葉の形から材の構造、成長の仕方まで、様々な点で違いがあります。
これらの違いが、それぞれの木材の特性や用途に影響を与えています。
例えば、広葉樹材は硬くて丈夫なものが多く、家具やフローリング、楽器などに適しています。
一方、針葉樹材は軽くて加工しやすいため、建築材や構造材として広く利用されます。

広葉樹パルプ(LBKP)とは?

「パルプ」とは、植物繊維をほぐして作られる、紙の原料となるものです。
パルプは、原料となる樹木の種類によって大きく「広葉樹パルプ」と「針葉樹パルプ」に分けられます。
広葉樹パルプとは、広葉樹を原料として作られたパルプのことです。
英語では「Hardwood Kraft Pulp」と呼ばれ、漂白されたものは「Bleached Hardwood Kraft Pulp」、略して「BHKP」または「LBKP (Leaf-tree Bleached Kraft Pulp)」と呼ばれます。
LBKPは、広葉樹材を化学的または機械的に処理して繊維を取り出し、漂白工程を経て白色にしたものです。

広葉樹パルプの製造と用途

広葉樹パルプの製造には、主にクラフトパルプ法という化学的な方法が用いられます。
これは、木材チップを薬品とともに高温・高圧で煮ることで、繊維同士を結びつけているリグニンなどの成分を溶かし、セルロース繊維を取り出す方法です。
LBKPは、その繊維の特性から様々な種類の紙の製造に利用されます。

      • 印刷用紙: 表面が滑らかでインクの乗りが良いという特性から、雑誌、書籍、広告チラシなどの印刷用紙に広く使われます。
      • 筆記用紙: なめらかな書き心地の筆記用紙にも適しています。
      • 情報用紙: コピー用紙やFAX用紙などにも利用されます。
      • ティッシュペーパー・トイレットペーパー: 柔らかさや吸水性を出すために、LBKPが配合されることがあります。

日本の紙・板紙の生産量に占めるパルプの割合は高く、その中でもLBKPは重要な位置を占めています。
例えば、2022年の日本の紙・板紙生産量約1,600万トンのうち、パルプ消費量は約1,000万トンであり、そのうちLBKPの割合は約4割程度を占めています(日本紙パルプ連合会データより)。
これは、LBKPが様々な紙製品の品質向上に貢献していることを示しています。

広葉樹パルプの強度と特性

広葉樹 パルプ 強度は、針葉樹パルプと比較すると一般的に低いとされています。
これは、広葉樹の繊維が針葉樹の繊維に比べて短いことに起因します。

      • 広葉樹パルプ(LBKP)の繊維長: 平均約0.7〜1.0mm程度
      • 針葉樹パルプ(NBKP)の繊維長: 平均約2.5〜3.5mm程度

繊維が短いと、繊維同士が絡み合う力が弱くなるため、紙にしたときの引裂強度や破裂強度といった機械的な強度が低くなる傾向があります。
しかし、LBKPにはLBKPの優れた特性があります。

      • 平滑性: 繊維が短く均一なため、紙の表面が非常に滑らかになります。
        これが印刷適性や筆記適性を高めます。
      • 不透明度: 繊維が細かく密に詰まるため、紙の不透明度が高くなります。
        これは裏写りを防ぐ上で有利です。
      • 嵩高性: 繊維が柔らかいため、紙にふっくらとした嵩(かさ)を与えることができます。
      • 柔らかさ: ティッシュペーパーなどの柔らかさを求める製品に適しています。

これらの特性を活かすことで、LBKPは様々な高品質な紙製品の製造に不可欠な原料となっています。

広葉樹パルプの価格推移と市場動向

広葉樹パルプ 価格推移は、世界の需給バランスや為替レート、燃料価格など様々な要因によって変動します。
一般的に、パルプ価格は国際商品市場で取引されており、景気動向や製紙会社の生産状況に左右されます。
過去の価格推移を見ると、世界的な紙需要の変動や、新しい製紙工場の稼働、あるいは原料となる木材の供給状況の変化などによって、価格が大きく変動することがあります。
例えば、中国などのアジア諸国での紙需要の増加は、パルプ価格を押し上げる要因の一つとなります。
また、世界的な環境規制の強化や森林認証制度の普及なども、長期的なパルプ供給や価格に影響を与える可能性があります。
一般的に、繊維が長く強度の高い針葉樹パルプ(NBKP)の方が、繊維が短い広葉樹パルプ(LBKP)よりも価格が高い傾向にあります。
しかし、特定の時期には需給の逼迫などにより、LBKPの価格が急騰することもあります。
パルプ価格の動向は、製紙会社の経営や、私たちが日常的に使用する紙製品の価格にも影響を与えます。

針葉樹パルプ(NBKP)との比較

針葉樹パルプとは、スギやヒノキ、マツなどの針葉樹を原料として作られたパルプのことです。
英語では「Softwood Kraft Pulp」と呼ばれ、漂白されたものは「Bleached Softwood Kraft Pulp」、略して「BSKP」または「NBKP (Needle-tree Bleached Kraft Pulp)」と呼ばれます。
広葉樹パルプ 違いとして最も重要なのは、前述の通り、繊維の長さとそれに伴う紙の特性の違いです。

LBKPとNBKPの繊維長と特性の違い

 

パルプの種類 繊維長 特性 主な用途
LBKP 約0.7〜1.0mm 繊維が短く均一、平滑性・不透明度・嵩高性・柔らかさに優れる 印刷用紙、筆記用紙、情報用紙、ティッシュペーパーなど
NBKP 約2.5〜3.5mm 繊維が長く丈夫、引裂強度・破裂強度・引張強度といった機械的強度に優れる 新聞用紙、段ボール原紙、紙袋、特殊紙など

NBKPは繊維が長いため、繊維同士がしっかりと絡み合い、丈夫で破れにくい紙を作ることができます。
そのため、新聞用紙や段ボール原紙、紙袋など、強度が必要とされる紙製品に多く使用されます。
一方、LBKPは繊維が短いため、単独では強度の高い紙を作るのには限界がありますが、その平滑性や不透明度、柔らかさといった特性を活かして、NBKPとブレンドして使用されることが一般的です。
例えば、印刷用紙では、NBKPで強度を持たせつつ、LBKPを配合することで表面の滑らかさや印刷適性を向上させています。
ティッシュペーパーやトイレットペーパーでは、LBKPの柔らかさを活かすために配合率が高くなる傾向があります。
このように、LBKPとNBKPはそれぞれ異なる特性を持っており、製造する紙製品の種類や求められる品質に応じて、最適な比率でブレンドして使用されています。
パルプの使い分けは、紙製品の機能性やコストに大きく影響を与える重要な要素です。

広葉樹パルプ まとめ

広葉樹パルプ(LBKP)は、広葉樹を原料とする紙の主要な原料の一つです。
その特徴は、針葉樹パルプ(NBKP)に比べて繊維が短いこと(平均約0.7〜1.0mm)ですが、この特性が紙に平滑性、不透明度、嵩高性、柔らかさといった優れた性質をもたらします。
LBKPは主に印刷用紙、筆記用紙、情報用紙、ティッシュペーパーなどの製造に利用され、特に表面の滑らかさや柔らかさが求められる製品に適しています。
NBKP(平均約2.5〜3.5mm)が持つ繊維の長さによる強度とは異なる特性を持ち、両者は紙製品の用途や品質に応じてブレンドして使用されることが一般的です。
LBKPの価格は世界の需給バランスや市場動向によって変動します。

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