
「熱可塑性」とは、物質に熱を加えると柔らかくなって変形しやすくなり、冷却すると再び硬くなる性質のことを指します。
身近な例でわかりやすく例えるなら、「チョコレート」や「バター」のような性質です。
チョコレートは温めるとドロドロに溶けて好きな型に流し込むことができ、冷やせばその形のままカチカチに固まります。
そして、固まった後に再び熱を加えれば、何度でも溶かすことができます。
これと全く同じ原理が、工業製品の材料にも応用されているのです。
まず、基本的な言葉の知識をご紹介します。
「熱可塑性」の読み方は「ねつかそせい」です。
「可塑(かそ)」という言葉には、力を加えると形が変わり、その力を取り除いても元の形に戻らない性質(粘土のような性質)という意味があります。
また、熱可塑性の英語表現は「Thermoplasticity(サーモプラスティシティ)」と言います。
「Thermo(熱)」と「Plasticity(可塑性)」を組み合わせた単語です。
工業分野などでよく使われる熱可塑性樹脂は、「Thermoplastic resin」あるいは単に「Thermoplastics」と呼ばれ、世界共通のビジネス用語としても頻繁に登場します。
熱可塑性を理解する上で欠かせないのが、対となる性質である「熱硬化性(ねつこうかせい)」との違いです。
熱硬化性とは、熱を加えると化学反応を起こして硬く固まり、一度固まると再び加熱しても柔らかくならない性質のことです。
こちらは「クッキー」や「目玉焼き」に例えるとわかりやすいでしょう。
生卵は熱を加えると目玉焼きとして固まりますが、冷ましてからもう一度加熱しても、元の生卵には戻りません。
| 熱可塑性(チョコレート型): 加熱で柔らかくなり、冷却で固まる。 再加熱で再び柔らかくなるため、リサイクルが容易。 |
熱硬化性(クッキー型): 加熱で硬く固まる。 再加熱しても溶けないため、耐熱性や強度に優れるが、元の形には戻せない。 |
世界のプラスチック生産量のうち、約90%が熱可塑性、残りの約10%が熱硬化性だと言われています。
用途に合わせてこの2つの性質が使い分けられています。
世の中に流通している大半のプラスチック製品は、「熱可塑性プラスチック」に分類されます。
熱可塑性プラスチックの最大の特徴は、「圧倒的な加工のしやすさ」と「大量生産への適性」です。
ペレットと呼ばれる粒状の原料を機械の中で加熱して溶かし、金型に高圧で流し込んで冷やす「射出成形」などの方法により、複雑な形状の製品を短時間で安価に大量生産することができます。
また、環境問題の観点からも熱可塑性プラスチックは重要な役割を担っています。
熱を加えることで何度でも溶かして形を変えられるため、不要になった製品を回収し、再び別の製品に生まれ変わらせる「マテリアルリサイクル」が理論上可能です。
日本のプラスチックの有効利用率は約87%(2022年度実績)と非常に高い水準にありますが、その多くは燃やして熱エネルギーとして回収するサーマルリサイクルであり、素材をそのまま再利用するマテリアルリサイクル率は約22%前後にとどまっています。
今後は、熱可塑性の性質を活かしたマテリアルリサイクルの割合をさらに高めていくことが、社会的な課題となっています。
一口に熱可塑性と言っても、その素材(樹脂)には様々な種類があり、それぞれ硬さや耐熱性、透明度などが異なります。
ここでは、代表的な素材とその活用例をご紹介します。
私たちの生活を支えている汎用的な熱可塑性樹脂の一覧と、その主な特徴は以下の通りです。
これらの樹脂は、それぞれに適した特性を活かして、あらゆる産業で活用されています。
近年、特に注目を集めている素材が「熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomer、略称:TPE)」です。
エラストマーとは、英語の「Elastic(弾力のある)」と「Polymer(重合体)」を合わせた造語で、ゴムのような弾力性を持つ素材を指します。
従来のゴム(加硫ゴム)は熱硬化性に近い性質を持つため、加工に時間がかかり、一度形を作るとリサイクルが難しいという弱点がありました。
一方、熱可塑性エラストマーは、「常温ではゴムのような弾力がありながら、高温にするとプラスチックのように溶けて加工できる」という、ゴムとプラスチックの“良いとこ取り”をした素材です。
これにより、プラスチックと同じ設備で高速かつ安価に成形でき、リサイクルも容易になりました。
歯ブラシのグリップ部分や、スポーツ用品、自動車の内装部品などに広く使われています。
熱可塑性エラストマーの一種でもありますが、特に身近な素材として知られているのが「熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane、略称:TPU)」です。
熱可塑性ポリウレタンは、非常に優れた耐摩耗性(擦れに対する強さ)と、引っ張りに対する強さ、そして油や薬品への耐性を持ち合わせています。
最もわかりやすい用途は、スマートフォンの保護ケースです。
シリコンのように柔らかすぎず、ハードケース(ポリカーボネートなど)のように硬すぎて割れる心配もない、絶妙な柔軟性と衝撃吸収性を持っています。
また、スポーツシューズの靴底(ソール)や、医療用のチューブなど、耐久性と柔軟性が同時に求められる過酷な環境下でも活躍する、非常に優秀な素材です。
普段何気なく使っている日用品も、熱可塑性という性質のおかげで、使いやすく安価に私たちの手元に届いています。
モノづくりの背景や素材の特性を知ることで、製品選びや環境保全(リサイクル)に対する見方も少し変わってくるのではないでしょうか。
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