食品包装フィルムの全知識|種類・材質から環境対応まで解説

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私たちの食生活は、目に見えない技術によって支えられています。
スーパーマーケットの棚に並ぶ色とりどりの商品、開封したてのポテトチップスの香ばしさ、電子レンジで温めるだけで食べられる便利な惣菜。
その鮮度、風味、そして安全性を守っているのが、今回解説する「食品包装フィルム」です。

食品包装フィルムは、単なる「包み紙」ではありません。
食品を有害な微生物から守り、酸化による品質劣化を防ぎ、栄養や風味を長期間維持するための、いわば「見えない盾」です。
その役割は、食品の品質保持(保護機能)、流通や消費における利便性の向上(利便機能)、そして原材料や消費期限といった重要な情報を伝える(情報機能)など、多岐にわたります。

しかし、その高い機能性の裏側で、私たちは環境という大きな課題に直面しています。 この記事では、「食品包装フィルムとは何ですか?」という基本的な問いに答えるだけでなく、包装フィルムの基礎知識から、専門的な材質の種類、PPフィルムとPEフィルムの違い、そして現代のビジネスに不可欠な環境対応まで、あらゆる角度から徹底的に解説します。 食品メーカーの製品開発担当者から、品質管理、すべての関係者が知るべき情報を網羅し、最適なパッケージング戦略を立て、さらにはそのサステナブルな取り組みをいかにしていくか、その道筋を示す一助となることを目指します。

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  • ISCCとはなにか
  • マスバランス方式とはなにか
  • ISCC認証取得でのメリット
  • 環境配慮製品でサプライチェーンを構築
目次

食品包装フィルムの役割と基礎知識

食品包装フィルムを理解する第一歩は、その基本的な役割と構造を知ることから始まります。
なぜフィルムで包装する必要があるのか、そして一枚に見えるフィルムが、実は高度に設計された構造体であることを理解することで、材質選びの重要性が見えてきます。

食品を守る4つの重要な役割

食品包装フィルムが果たす役割は、大きく分けて4つあります。
これらは互いに影響し合うため、製品の特性に合わせて最適なバランスを見つけることがパッケージ設計の鍵となります。

  1. 保護機能
    食品を外部の様々な要因から守り、品質を維持する最も基本的な役割です。
    具体的には、酸素、水分、光、微生物の侵入を防ぎ、食品の腐敗や酸化、風味の劣化を抑制します。
    また、輸送中や陳列時の衝撃や圧力から中身が壊れるのを防ぐ物理的な保護も重要です。
    当然ながら、食品と直接触れるため、その安全性は法律によって厳しく管理されており、日本では厚生労働省が策定した「ポジティブリスト制度」に基づき、使用が許可された物質のみで製造されなければなりません。
  2. 利便機能
    生産、流通、販売、そして消費に至るすべての段階で、利便性を高める役割です。
    例えば、商品を運びやすく、保管しやすくすることで物流効率を向上させます。
    消費者にとっては、手で簡単に開けられる「イージーオープン機能」、開封後も保存できる「チャック付き」、袋のまま電子レンジで加熱できる「レンジ対応機能」などが、商品の付加価値を高めます。
  3. 情報機能
    パッケージは、製品に関する情報を消費者に伝える重要なメディアです。
    原材料名、内容量、栄養成分表示、アレルギー情報、消費期限といった法律で定められた表示義務を果たすだけでなく、魅力的なデザインやキャッチコピーで商品の価値を伝え、消費者の購買意欲を刺激する販売促進の役割も担います。
  4. 環境配慮
    現代において、これは他の3つと同等に重要な役割となりました。
    製品のライフサイクル全体を考慮し、環境負荷を低減することが求められます。
    具体的には、リサイクルしやすい素材の選定、植物由来のバイオマス原料の使用、フィルムを薄くして使用するプラスチックの量を減らす(軽量化)といった取り組みが含まれます。
  5. そして、こうした取り組みが確かなものであることをステークホルダーに示すため、国際的な認証制度の活用が新たなスタンダードになりつつあります。

これら4つの役割は、時に相反する関係にあります。
例えば、最高のバリア性を持つアルミ箔(保護機能)は不透明であるため、中身を見せて訴求したい商品(情報機能)には不向きです。
また、複数の素材を貼り合わせた高機能フィルムは、リサイクルが困難になる(環境配慮)というジレンマを抱えています。
したがって、完璧な万能フィルムは存在せず、製品の特性、コスト、ブランド戦略、そして環境目標を総合的に評価し、最適な解を見つけ出す専門的な知見が不可欠です。

包装フィルムの基本的な構成とは?

店頭で手にする食品包装の多くは、一枚のフィルムに見えても、実は複数の異なる機能を持つフィルムを貼り合わせた「多層フィルム(ラミネートフィルム)」です。
これにより、単一の素材では実現不可能な高い性能を発揮させています。
一般的な多層フィルムは、主に3つの層から構成されます。

この多層構造こそが、食品包装フィルムの優れた性能の源泉です。
しかし同時に、異なる種類のプラスチックやアルミが強固に接着されているため、使用後に分離してリサイクルすることが極めて困難であるという、環境面での大きな課題も生み出しています。
この矛盾を解決するため、リサイクルしやすい単一素材(モノマテリアル)で多層フィルムと同等の機能を目指す技術開発が、業界全体の大きなトレンドとなっています。
それに伴い、使用されるリサイクル素材やバイオマス素材が、サプライチェーン全体で適切に管理されていることを証明する必要性も高まっています。

代表的な包装形態とそれぞれの特徴

フィルムの材質だけでなく、どのような形で包装するかによっても、食品の保存性は大きく変わります。
代表的な包装形態には以下のようなものがあります。

【材質別】食品包装フィルムの種類と特徴を徹底比較

食品包装フィルムの世界は、多種多様なプラスチック材質によって成り立っています。
それぞれの材質が持つ固有の特性を理解し、製品の要求に合わせて適切に組み合わせることが、最適なパッケージングを実現する上で不可欠です。
ここでは、主要な材質を比較しながら、その特徴と用途を詳しく解説します。



材質名 (略称) 主な特徴 耐熱性 酸素バリア性 水蒸気バリア性 透明性 強度・耐衝撃性 主な役割
ポリエチレン (LLDPE) 柔軟で強度が高い。最も汎用的なシール材。 シーラント
ポリプロピレン (CPP) PP系のシール材。PEより耐熱性が高い。 シーラント
ポリプロピレン (OPP) 硬く、透明性と光沢に優れる。印刷適性が高い。 基材
ポリエステル (PET) 強度、耐熱性、保香性に優れる。 基材
ナイロン (ONy) 突き刺し強度、耐衝撃性、耐寒性に非常に優れる。 非常に高い 基材、中間層
アルミ箔 (AL) ガス、水蒸気、光をほぼ完全に遮断する最強のバリア材。 非常に高い 非常に高い 非常に高い なし 中間層
EVOH 乾燥状態ではアルミに匹敵する酸素バリア性を持つ。 非常に高い 中間層

ポリエチレン(PE)系フィルムの特徴

プラスチックの中で最も生産量が多く、包装フィルムにおいても中心的な役割を担うのがポリエチレン(PE)です。
その最大の特徴は、優れたヒートシール性(熱で溶着する性質)と柔軟性です。

ポリプロピレン(PP)系フィルムの特徴

ポリエチレン(PE)と並んで多用されるのがポリプロピレン(PP)です。
PEに比べて硬く、耐熱性に優れるという特徴があり、用途に応じて使い分けられます。

OPPとCPPの違いは、ポリマー科学の基本原理を見事に示しています。
化学的には同じポリプロピレンという物質からできていますが、フィルムを物理的に引き伸ばす「延伸」という工程を経るかどうかで、その機能が全く異なるものになります。
延伸によってポリマーの分子が規則正しく整列し、OPPは高い透明性と剛性を獲得しますが、その代償として熱で溶融しにくくなります。
一方、延伸しないCPPは分子がランダムな状態を保つため、熱で容易に溶けて強力なシールを形成できるのです。
このように、最終的なフィルムの特性は、化学的な組成だけでなく、どのような物理的加工を施されたかによって決定されるのです。

結局、PPフィルムとPEフィルムの違いは何ですか?

この二つの材質は非常によく似ていますが、その違いを理解することは、適切なフィルム選定の第一歩です。
重要な違いを以下にまとめます。

その他の主要なプラスチック材質

PEとPP以外にも、特定の機能を持たせるために重要な役割を果たすプラスチックがあります。

安全性が気になるポリ塩化ビニル(PVC)とは?PPとの違いも解説

ポリ塩化ビニル(PVC)は、かつてはラップフィルムや食品トレーなどに広く使われていた汎用プラスチックです。
しかし、近年その安全性と環境への影響から、世界的に使用が見直される傾向にあります。

高いバリア性を持つ特殊な材質

酸素や光に極めて敏感な食品を守るためには、通常のプラスチックフィルムだけでは不十分です。
そのような場合には、特殊な高バリア性素材が中間層として組み込まれます。

袋の密封を担う「シーラントフィルム」とは何ですか?

パッケージの最も内側にあり、目立たない存在ながら、その品質を最終的に決定づけるのが「シーラントフィルム」です。

シーラントフィルムの定義は、「加熱圧着によって袋を密封(シール)するために使われる、パッケージの最内層のフィルム」です。
その役割は、中身の漏れを防ぎ、外部からの酸素や雑菌の侵入をブロックし、製品の品質を最後まで守り抜くことです。
もしシーラントの性能が不十分であれば、シール不良による液漏れや、早期の品質劣化、最悪の場合は製品リコールにつながる可能性もあります。

シーラントに求められる性能は、単に「くっつく」ことだけではありません。
例えば、包装機械が高速で動く中、シール部分がまだ熱く柔らかい状態でも剥がれない強度、いわゆる「ホットタック性」は、生産効率を大きく左右します。
優れたホットタック性を持つシーラント材を使えば、包装機械のスピードを上げることができ、単位時間あたりの生産量が増加し、結果として製造コストの削減に直結します。
このように、シーラントフィルムの技術革新は、製品の安全性確保だけでなく、食品メーカーの収益性向上にも貢献する重要な要素なのです。
代表的なシーラント材は、汎用性が高く冷凍食品にも使われるLLDPE、耐熱性が求められるレトルト食品用のCPPです。

パッケージデザインを彩る食品包装フィルムの印刷技術

フィルムの材質が決まったら、次に重要なのがパッケージの「顔」となる印刷です。
印刷方式の選択は、デザインの再現性、コスト、生産ロット、そして企業の環境姿勢を示す上で、戦略的な意味を持ちます。
主流となるのは「グラビア印刷」と「フレキソ印刷」です。

比較項目 グラビア印刷 フレキソ印刷
印刷品質 ◎ 非常に高い(写真品質) ○ 高い(近年向上著しい)
版のコスト 高い 低い
適したロット数 大ロット(数十万~数百万) 小~中ロット(数千~数万)
環境負荷 (VOC) 高い(油性インキの場合) 非常に低い(水性インキの場合)
素材対応力 ○ フィルムなど平滑な素材 ◎ フィルム、紙、段ボールなど凹凸のある素材にも対応

まとめ:未来の食品包装フィルムとISCC認証によるサステナブルな選択

食品包装フィルム業界は、食品の安全性を守るという使命と、環境負荷を減らすという社会的要請との間で、大きな変革期にあります。
パッケージ選びは単なる資材選定ではなく、企業の未来を左右する経営戦略そのものになりました。
そして、そのサステナブルな取り組みを消費者や取引先などに客観的に「証明」することが不可欠となっており、その強力な解決策が「ISCC認証」です。

ISCC認証とは? – 持続可能な未来へのパスポート

ISCC(International Sustainability & Carbon Certification)は、持続可能性と二酸化炭素削減への取り組みを国際的に証明する認証制度です。
企業が使用するバイオマス素材やリサイクル素材などが、環境に配慮した方法で生産・流通されているかを第三者の視点で認証します。
この認証の取得は、企業の信頼性向上、ブランド強化、そして国際市場での競争力強化に直結します。

ISCC認証を導入するメリット

SHIFTONが提供する「トータルバリュー」

SHIFT ONを運営する国際紙パルプ商事は、ISCC PLUS認証を取得済みです。
私たちは、単に環境配慮型フィルムを提案するだけではありません。

食料品・製造業の皆様へ:包装から始めるサステナビリティ経営

脱炭素社会への移行が加速する中、食品・製造業に携わる企業にとって、製品の流通に不可欠な包装資材の選定は、持続可能性を左右する重要な鍵となります。
SHIFT ONは、お客様の環境負荷低減に向けた具体的な取り組みをサポートします。

パッケージングの課題は、企業の経営課題そのものです。
SHIFT ONは、お客様の課題に焦点をあて、事業の最適化を実現するソリューションパートナーとして、共に未来を創造します。
サステナブルな社会と事業の成長に向けて、まずはお気軽にご相談ください。

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参考

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