樹脂成形とは?主な成形方法や特徴と環境対応における重要性を解説

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樹脂成形とは、プラスチックなどの樹脂素材を加熱・加圧して製品をつくる加工方法です。製品の用途に応じて多様な成形法が用いられますが、温度や圧力、時間などの条件が適切でないと成形不良につながるおそれがあります。
近年は、脱プラスチックの流れを受けて、企業にも環境負荷の低い素材選びや製造手段が求められています。
本記事では、樹脂成形の基本と代表的な成形方法、さらに環境対応樹脂の活用例について解説します。

環境対応樹脂 活用事例集
種類・特徴・活用方法をご紹介

  • 環境対応樹脂の必要性
  • 廃棄物発生量削減
  • 再資源化
  • バイオマス素材の活用
目次

樹脂成形とは

樹脂成形とは、加熱して溶かした樹脂材料を型に流して成形し、製品を生産する方法です。
ここでは、樹脂成形の具体的な仕組みと主な材料について解説します。

樹脂成形の仕組み

樹脂成形は、プラスチック製品の製造に広く用いられている加工技術です。
樹脂材料を加熱して柔らかくし、金型に流し込んで目的の形状に成形したのち、冷却・固化させて製品化します。
一般的な工程は次のとおりです。

  1. 粉末または粒状の樹脂を加熱し、成形に適した状態にする
  2. 溶融した樹脂を金型に流し込んで、形状を形成する
  3. 金型内で冷却・固化させ、製品を取り出す

製品の用途や形状に応じて成形法を使い分けることで、品質や生産性の向上が可能です。

熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い

樹脂成形で使われる材料は、大きく分けて「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」の2種類があります。両者の違いは、加熱時の性質やリサイクル性、加工のしやすさ、適した用途などです。

熱可塑性樹脂は、加熱すると柔らかくなり、冷やすと再び固まる性質です。
加熱・成形を繰り返すことができるため、加工性やリサイクル性に優れています。
融点が低い素材も多く、日用品や包装材、家電部品など、耐熱性や高い強度が求められない製品の大量生産に適しています。

熱硬化性樹脂は、一度硬化すると再加熱しても形が変わりません。
成形には時間と手間がかかり、リサイクルも困難ですが、耐熱性と強度に優れているのが特長です。
工業用部品や自動車部品など、高い性能が求められる製品に使用されています。

樹脂の成形条件

樹脂成形によって生産された製品の品質を保つには、一定の成形条件を満たさなければなりません。
ここでは、主な成形条件と成形条件が重要とされる理由を解説します。

主な成形条件

成形条件とは、成形時に設定する温度や圧力、時間、樹脂量(ストローク)、スピードなどの各種パラメータを指します。
条件を適切に設定することで、製品の寸法や見た目などの品質が安定します。
量産を行う場合は、製品や金型の設計後、金型を成形機に取り付けた段階で成形条件を細かく調整するのが一般的です。

成形条件の重要性

成形条件が重要とされるのは、不適切な設定が成形不良を引き起こす原因になるからです。
樹脂の種類や金型の仕様に加え、成形機側の温度・圧力・時間などの条件も、製品の仕上がりを左右します。
製品ごとに求められる性能が異なるため、樹脂の特性を理解したうえで、最適な条件を見つけ出すことが求められます。

主な成形方法とその特徴

ここからは主な5つの成形方法と特徴、用途を解説します。

射出成形

射出成形は、約200度の熱で溶かした材料を金型に高速で注入し、圧力を加えたうえで冷却して成形する方法です。
金型を用いるため製品の均一性を保ちやすく、高精度かつ複雑な形状の製品を迅速に大量生産できます。
主な用途には、家電部品、自動車部品、玩具、精密機器のケースなどが挙げられます。
射出成形では、金型の温度や冷却時間が重要です。

押出成形

押出成形は、加熱して溶かした樹脂を「ダイ」と呼ばれる金型から連続的に押し出し、冷却して成形する加工方法です。
断面形状が一定の製品を、長さを問わず連続的に製造できます。
金型を交換すれば形状の切り替えも可能なため、大量生産に向いており、コストも抑えやすいのが特徴です。
また、金型の中で樹脂を固めるわけではないため、生産ラインを連続的に構成できるメリットもあります。
主な製品例には、パイプやホース、フィルム、シート、電線の被覆などがあります。

真空(シート)成形

真空(シート)成形は、熱で軟化させた樹脂シートや樹脂フィルムなどの材料を金型に被せ、穴から空気を吸引して材料を金型に吸い付けて真空状態にして成形する方法です。
シート状に成形されるため、薄くて大型の製品を作りやすく、連続使用できるのがメリットです。
片面のみの金型を利用するため、製造コストを比較的低く抑えられます。
主な用途は、パネル、看板、食品トレイ、自動車内装部品などです。

ブロー成形

ブロー成形は、加熱して溶かした熱可塑性樹脂をチューブ状に成形し、空気を吹き込んで膨らませることで、中空構造の製品をつくる加工方法です。
中が空洞になったボトルやタンクなどの成形に適しており、大量生産に向いています。
軽量でありながら強度も確保できるため、複雑な形状でも効率よく成形できます。
近年では、ペットボトルなどに再生可能な素材を使う取り組みも進んでいます。
主な用途は飲料ボトル、容器、燃料タンク、空洞部品などです。

インフレーション成形

インフレーション成形は、押出成形の一つで、溶かした樹脂を吹き出しながら空気圧で膨らませて成形し、フィルムやシート、袋などを作る方法です。
薄くても高い強度を持たせることができ、大量生産にも適しています。
また、厚みや形状を調整しやすいため、薄く均一なフィルムの製造が可能です。
主な用途は、包装用フィルム、農業用シート、レジ袋などです。

樹脂の成形方法と素材の適合関係

成形方法によって適した素材は異なり、それぞれに特有の注意点があります。以下の表は、主な成形法と相性の良い素材、そして品質確保のために押さえておくべきポイントをまとめたものです。

成形方法 適合のある素材 注意点
射出成形 熱可塑性樹脂が主流(PP、ABS、PC、PEなど)で、複雑な形状や高精度製品に対応可能 温度や圧力、速度の設定が不適切な場合に不良品が発生しやすくなる
押出成形 連続した断面形状を作りやすい熱可塑性樹脂が中心。特にPE、PP、PVCなどのフィルムやパイプ向け 押出速度が速すぎたり遅すぎたりすると、製品が不均一になりやすい
真空(シート)成形 薄いシート状に加工しやすい熱可塑性樹脂(ABS、PS、PVC、PMMAなど)が多く使われる 金型の表面の滑らかさが製品の質感に影響。新空圧が適切でない場合、製品がゆがみやすい
ブロー成形 中空容器の生産には、熱可塑性樹脂(PE、PET、PVCなど)が最適。耐衝撃性や成形性が求められる 空気の注入圧が過剰でも不足しても製品が破損しやすくなる
インフレーション成形 主にポリエチレン(LDPE、HDPE)、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂で薄膜の連続生産が可能 押出速度はフィルムやシートの均一性、強度に影響。冷却が不十分では製品の収縮や品質低下のおそれがある

それぞれの成形法には向いている素材がある一方で、適切な条件管理が不可欠です。
特に大量生産では、こうした特性を理解したうえで、最適な組み合わせを選定することが製品の安定供給につながります。

樹脂成形における課題と環境対応の重要性

樹脂成形は、製品の製造工程における重要な技術である一方で、環境問題やその対応が求められています。
ここからは、樹脂成形における代表的な課題と、環境対応の重要性を解説します。

樹脂成形における課題

樹脂成形における大きな課題のひとつが、環境負荷の高さです。
大量生産によって発生するプラスチック廃棄物は、海洋汚染をはじめとする環境問題を深刻化させています。
特に、製造や焼却の過程で有害物質や温室効果ガスが排出されることで、地球温暖化への影響も懸念されています。
さらに、複数の素材が組み合わされた製品や、汚れが付着したプラスチックは再資源化が難しく、リサイクル率が思うように向上しないという課題も残されています。
こうした現状に対しては、素材の見直しや成形技術の革新、廃棄物処理の改善など、製造から回収・処理までを含めた包括的な対応が大切です。

環境対応の重要性

樹脂成形の現場でも、環境対応の重要性は年々高まっています。
企業活動には、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点が強く求められ、脱プラスチックの推進や資源循環への取り組みが企業の責任とされつつあります。
加えて、「プラスチック資源循環促進法」などの法整備や、消費者の環境意識の高まりを受け、迅速かつ具体的な対応が求められています。
こうした背景の中、製造現場では再生樹脂やバイオマス樹脂の導入、省エネ化に向けた成形条件の最適化など、さまざまな改善が進められています。

KPPで取り扱う環境対応樹脂の成形バリエーション

KPPでは、環境課題に対応した新しい環境対応樹脂素材を取り扱っています。
ここでは、環境対応樹脂の概要と成形バリエーションを解説します。

環境対応樹脂とは

環境対応樹脂とは、環境への負荷を軽減することを目的に開発・使用されるプラスチックの代替素材です。
従来の石油由来プラスチックに比べて、CO₂排出量の削減や廃棄時の生分解性などを持ち、持続可能な社会の実現に貢献する素材として注目されています。
環境対応樹脂は主に、以下の2つの種類があります。

KPPでは再生可能資源を活用し、温室効果ガス排出抑制と資源の持続的利用を両立できるよう、環境に配慮した素材選びをサポートいたします。

企業に選ばれるバイオプラスチックとは?
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環境対応樹脂の成形バリエーション

KPPが取り扱う環境対応樹脂もさまざまな成形方法に対応しており、以下のように豊富な選択肢があります。

成形方法 対応樹脂 説明
射出成形 NEQAS OCEAN, バイオPP, minima PLA, TERRAMAC 再生樹脂やバイオマスプラスチックで、小型から大型まで幅広い製品を成形できる。特に、精密部品に最適。
押出成形 NEQAS OCEAN, バイオPP, TERRAMAC, minima PLA 連続的な形状を効率的に生産し、パイプやシートなどの建材や産業資材に成形可能。
真空(シート)成形 NEQAS OCEAN, TERRAMAC, minima PLA 薄いバイオマスプラスチックシートを成形し、食品トレイや包装材を製造可能。
ブロー成形 NEQAS OCEAN, TERRAMAC, minima PLA バイオマスプラスチックを利用した容器やボトルの製造で活用できるほか、軽量で環境負荷が少ない製品に最適。
インフレーション成形 TERRAMAC, minima PLA 農業用フィルムや食品包装などにバイオマスプラスチックを導入可能。

環境対応樹脂については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

サステナブルな環境対応樹脂素材と選び方を解説
脱プラ実現にバイオプラスチック

バイオプラスチックの種類や選び方、そしてKPPが提供するバイオプラスチック製品を紹介します...

環境対応樹脂を取り扱うならKPPへご相談を

樹脂成形は、プラスチック素材を使ってさまざまな製品を生産する、ものづくりの基本となる加工技術です。
しかし近年は、脱プラスチックの流れが加速し、企業にも環境への配慮が強く求められるようになっています。
そこで注目されているのが、「環境対応樹脂」の活用です。
たとえば、生分解性を持つ素材であれば、廃棄時の環境負荷を抑えることができます。
また、原料や製造方法の見直しにより、CO₂排出量の削減も実現可能です。
KPPでは、NEQAS OCEANやバイオPPなど、成形加工に対応したさまざまなバイオプラスチックを取り扱っており、商品試作から量産まで一貫してサポートしています。
従来の樹脂と同様に、用途に応じた幅広い成形方法に対応できる点も特長です。
環境対応樹脂の具体的な活用方法については、以下の事例集をご覧ください。

環境対応樹脂 活用事例集
種類・特徴・活用方法をご紹介

  • 環境対応樹脂の必要性
  • 廃棄物発生量削減
  • 再資源化
  • バイオマス素材の活用