地球環境意識が高まる中、衣料品・繊維製品の生産方法も見直されています。
その中で重要性を増すのが「リサイクルコットン」です。これは再生綿に留まらず、持続可能な社会実現の鍵を握る素材です。
リサイクルコットンとは?その定義と環境への貢献
リサイクルコットンは、廃棄される綿製品や製造工程で発生する綿の端材を回収・再加工して作られる繊維です。新たな綿花栽培が不要なため、従来の綿(バージンコットン)生産と比べ、環境負荷を大幅に削減できます。
綿花栽培は、Tシャツ1枚に約2,700リットルの水を使うなど、大量の水、農薬、化学肥料を必要とし、土壌汚染や生態系への影響も懸念されます。
リサイクルコットンは、こうした環境負荷を低減する画期的な方法です。廃棄繊維の活用により、ゴミの埋め立てや焼却によるCO2排出を抑制し、新たな資源消費を抑えることで、地球の持続可能性に貢献します。

リサイクルコットンの特徴:サステナビリティと機能性の両立
リサイクルコットンの最大の特徴は「サステナビリティ」です。
- 環境負荷の低減: 水、農薬、化学肥料の使用、CO2排出量、廃棄物削減に貢献します。繊維製品のライフサイクル全体での環境負荷は無視できず、リサイクルコットンの導入は喫緊の課題です。
- 風合いや肌触り: バージンコットン同様、柔らかく肌触りの良い特性を引き継ぎます。高品質なリサイクル技術により、元の風合いを損なわずに快適な着心地や使い心地を提供します。
- 混紡による機能性: ポリエステルや麻など他繊維と混紡することで、強度、速乾性、耐久性など、用途に応じた機能性を持たせられ、幅広い製品への応用が期待されます。
- 色ムラの可能性: 原料の綿の色や状態が不均一なため、製品によってはわずかな色ムラや風合いの差が生じますが、天然素材の個性やリサイクル素材の証として捉えられることもあります。
リサイクルコットンの種類:多様な原料から生まれる個性
リサイクルコットンは、回収源により2種類に分けられ、それぞれ特性や用途が異なります。
種類 |
主な原料 |
特徴 |
用途例 |
プレコンシューマー |
紡績・縫製工場で発生する裁断くず、残糸、落ち綿など |
製造工程由来で、品質が均一、色管理がしやすく、リサイクルが容易 |
デニム、インナー、タオル、雑貨など、幅広い製品 |
ポストコンシューマー |
使用済み衣料品、タオル、シーツなど |
消費者から回収され、色や素材が豊富。選別・分解に手間がかかる |
作業服、断熱材、吸音材、再生紙の原料など、産業資材としても利用 |
近年、混紡繊維からの綿分離技術やケミカルリサイクルの進化により、多様なリサイクルコットンが生まれる可能性を秘めています。
リサイクルコットンのメリット:地球にも人にも優しい選択
リサイクルコットンの導入は、環境面だけでなく、社会的な側面でも多くのメリットをもたらします。
- 環境負荷の低減:
- 水消費量: 新しい綿花栽培が不要なため、バージンコットンに比べ最大98%の水消費量を削減できる研究結果もあります。
- CO2排出量: 綿製品生産におけるCO2排出量を抑制します。例えば、リサイクルコットン繊維1キログラムあたりの二酸化炭素換算排出量を82%削減できると報告されています。
- 農薬・化学肥料の使用削減: 栽培工程不要のため、土壌・水質汚染源となる農薬や化学肥料の使用をゼロにできます。
- 廃棄物削減と資源の有効活用: 大量廃棄される衣料品などを新製品として再生し、埋め立て地の負担や焼却による有害物質発生を抑制。「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」実現に不可欠です。
- サプライチェーンの透明性: リサイクル素材の利用は企業の環境責任を示し、消費者の意識的な選択を促します。
リサイクルコットンのデメリット:普及への課題と今後の展望
多くのメリットがある一方で、リサイクルコットンの普及には課題も存在します。
- 生産コスト: 回収・選別・再加工には専門技術や設備が必要で、バージンコットンよりコストが高くなる傾向があります。
- 繊維長の短縮と強度低下: リサイクル過程で繊維が短くなり、糸の強度が低下することがあります。そのため、他繊維との混紡で強度を補うのが一般的です。
- 品質の均一性: 回収源やリサイクル方法により品質にばらつきが生じます。
- 染色の課題: 回収綿の色を完全に除去し再染色するのは難しく、デザイン選択が限られます。
- 消費者の認知度: まだ多くの消費者がリサイクルコットンのメリットを十分に認識しておらず、さらなる情報発信や啓発活動が必要です。
これらの課題克服には、技術革新、サプライチェーンの最適化、消費者理解の促進が不可欠です。
リサイクルコットン製品が描く新しいライフスタイル
日常生活にリサイクルコットンを取り入れることは、環境に優しいライフスタイル実現の第一歩です。多様な製品として生まれ変わったリサイクルコットンは、ファッションから日用品まで、生活を豊かにしてくれます。
リサイクルコットン 生地:用途に合わせた多彩な表情
リサイクルコットンは、用途に応じ様々な「生地」となります。
リサイクル過程で繊維長が短くなる傾向があるため、他繊維と混紡され、多様な機能性や風合いを持たせています。
- 織物と編物: デニムのような織物からTシャツの編物まで加工され、混紡素材や割合で厚み、伸縮性、肌触りが異なります。
- 多様な風合い: バージンコットン同様、柔らかく通気性が良い特性を保ちます。わずかなネップや色ムラが、天然素材らしい風合いや個性を生み出すこともあります。
- 他素材との混紡例:
- ポリエステル混: 強度・耐久性・速乾性・形状安定性を高めます(スポーツウェア、アウターなど)。
- 麻混: さらっとした肌触り・通気性を高めます(夏物衣料、雑貨など)。
- 再生セルロース繊維混: ドレープ性・光沢感を加え、より高級感のある衣料品に用いられます。
これらの生地は、ファッションだけでなく、インテリア、雑貨、産業資材など幅広い分野で活用されています。
リサイクルコットン 服:サステナブルファッションの主役
- アパレルブランドの取り組み: 環境意識の高いブランドから大手ファストファッションまで、リサイクルコットンコレクションを展開。消費者のサステナビリティ関心に応え、企業の社会的責任を果たしています。
- 具体的なアイテム: Tシャツ、スウェット(肌触り・吸湿性)、ジーンズ、チノパン(丈夫さ)、アウターウェア(機能性も兼ね備える)など。
- 購入時のポイント: 製品表示や認証マークで素材の由来やリサイクル率の信頼性を確認しましょう。
リサイクルコットンを支える認証と技術革新
- GRS (Global Recycled Standard) などの認証マーク: 再生材使用を促進し、環境・社会・化学物質に責任ある生産を保証する国際基準です。サプライチェーン全体で再生材含有率が検証され、環境負荷低減や労働条件改善などの厳格な基準を満たしていることを示します。
- 繊維選別技術の進化: 混紡繊維からの綿選別技術が進展。AI画像認識や近赤外線分光法を用いた自動選別機などが開発され、リサイクルプロセスの効率化・品質向上に貢献します。
- ケミカルリサイクルの可能性: 綿の主成分であるセルロースを化学的に分解・再生する技術も進み、繊維長の短縮や品質低下といった物理リサイクルの課題を克服し、高品質なリサイクルコットン生産の可能性を広げています。
- 今後の技術動向: 繊維から繊維へのリサイクル実現を目指し、世界中で研究開発が進められ、衣料品のライフサイクル全体を循環させる「クローズドループ」システムの構築が期待されています。
リサイクルコットンの未来:循環型社会への貢献
- ファッション業界以外への広がり: アパレル分野に加え、自動車内装材、建材、家具張地など、多様な産業資材としての応用が期待されます。
- 産業資材への応用: 吸音材、断熱材、ワイピングクロスなど機能重視の分野での利用が進むことで、より多くの廃棄綿が有効活用されます。
- 消費者意識の変化: SDGsへの関心高まりとともに、消費者は環境・社会配慮製品を選ぶ傾向が強まり、リサイクルコットン市場の成長を後押ししています。
- サプライヤーとの連携強化: 繊維メーカー、ブランド、リサイクル企業、消費者が連携し、効率的な回収システムや技術開発、情報共有を進めることで、リサイクルコットンの価値を最大化し、持続可能な社会の実現に貢献します。
まとめ:リサイクルコットンが拓く持続可能な社会への道
リサイクルコットンは、繊維廃棄物問題解決、資源活用、環境負荷低減を通じ、持続可能な循環型社会に不可欠な素材です。水や農薬使用、CO2排出、廃棄物といった環境課題への有効な解決策であり、バージンコットンに比べ大幅な環境負荷削減が最大のメリットです。生産コストや繊維長の課題はあるものの、認証や技術革新で品質・用途は拡大し、ファッションだけでなく広範な産業でサステナブルな選択肢を増やしています。リサイクルコットンは資源を循環させ、地球の未来を守る重要な一歩。私たち一人ひとりの製品選択が持続可能な社会に貢献します。
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