お菓子の箱を捨てるとき、「この『紙』って書いてあるマークは何だろう?」「普通の紙ごみと一緒でいいのかな?」と迷った経験はありませんか。
実は多くの方が、「紙製容器包装(かみせいようきほうそう)」のルールについて、少し複雑に感じています。

この言葉は、私たちの身の回りにあふれているにもかかわらず、その正確な意味や、よく似た段ボールや牛乳パックとの違い、そして正しい捨て方については、意外と知られていません。

この記事では、そんな「紙製容器包装」に関するあらゆる疑問に、分かりやすくお答えします。
法律に基づいた定義といった基本から、具体的な品目の見分け方、リサイクルの現状まで、この記事を読めば、あなたはもう紙製容器包装の分別で迷うことはありません。
自信を持ってリサイクルに取り組めるよう、その全貌を徹底的に解説していきます。

基礎から学ぶ!紙製容器包装のすべて

紙製容器包装とは?法律に基づいた正確な定義

紙製容器包装とは、その読み方を「かみせいようきほうそう」といい、「容器包装リサイクル法」という法律で定められています。
この法律によれば、紙製容器包装は以下の2つの条件を両方満たすものと定義されています。

  1. 商品を入れる「容器」や商品を包む「包装」であること。
  2. その商品を使ったり、商品と分離したりした後に、不要になるものであること。

つまり、お店で売られている商品を守ったり、包んだりするために使われている紙製のものが対象です。
この定義が、多くの人が混乱する根本的な原因となっています。
私たちは普段、「これは紙でできているか」という物質的な視点で考えがちですが、法律は「これは商品を入れたり包んだりする商業的な目的で使われたか」という機能的な視点で判断しているのです。

この法律は、私たち消費者、お住まいの市町村、そして商品を作る事業者の三者が、それぞれ役割を分担してリサイクルを進めるための仕組みを定めています。

  • 消費者: ルールに従って正しく分別して排出する役割。
  • 市町村: 分別されたものを収集する役割。
  • 事業者: リサイクルの費用を負担し、再商品化(リサイクル)を行う役割。

このように、「紙製容器包装」という言葉は、単なるモノの名前ではなく、社会全体で資源を循環させるための大切なルールの一部なのです。

 

具体的にはどんなもの?紙製容器包装の例

では、具体的にどのようなものが紙製容器包装に当てはまるのでしょうか。
日常でよく目にするものから、少し意外なものまで、具体的な例を見ていきましょう。

一般的な紙製容器包装の例

  • お菓子やレトルト食品、薬などが入っていた紙箱
  • ティッシュペーパーの外箱(中のティッシュや取り出し口のフィルムは除く)
  • デパートや書店でもらう紙袋、商品を包んでくれる包装紙
  • アイスクリームやヨーグルトの紙カップ、紙製のフタ
  • 贈答品の中に入っている仕切りや台紙
  • ワイシャツの襟を固定している内側の紙

また、内側がプラスチックでコーティングされていたり、アルミ箔が貼り付けられていたりする複合素材のものでも、重さの比率で紙が最も大きい場合は「紙製容器包装」に分類されます。

一方で、紙でできていても対象外となるものも多くあります。
この区別がリサイクルの重要なポイントです。
以下のチェックリストで、対象になるものとならないものを確認してみましょう。

【早わかり】これは紙製容器包装?チェックリスト

対象となるもの(紙製容器包装) 対象とならないもの(他の分別へ)
✅ お菓子や食品、薬の紙箱 ❌ 段ボール箱(「段ボール」として回収)
✅ ティッシュの箱 ❌ 牛乳パックなどアルミ不使用の飲料用紙パック(「紙パック」として回収)
✅ 買い物した時の紙袋や包装紙 ❌ 新聞紙、雑誌、ノート(「雑がみ」として回収)
✅ アイスやヨーグルトの紙カップ ❌ レシートなどの感熱紙(燃えるゴミへ)
✅ 箱の中の仕切りや台紙 ❌ 汚れがひどく、落とせないもの(燃えるゴミへ)
✅ アルミが貼られた飲料やお酒の紙容器 ❌ 紙おむつ、写真(燃えるゴミへ)

もし迷ったときは、「①商品を入れる・包む目的で使われていたか」「②使い終わったら不要になるか」という2つの基準で考えると、分かりやすくなります。

マークの意味から捨て方まで!紙製容器包装との付き合い方 

このマークが目印!紙製容器包装の識別マークの意味と役割

スーパーやコンビニで商品を手にしたとき、パッケージに印刷されたこのマークを見たことはありませんか?

紙製容器包装識別マーク(紙マーク)

これは「紙マーク」と呼ばれる、紙製容器包装であることを示すための目印です。
このマークは「資源有効利用促進法」という法律に基づいており、私たち消費者がリサイクルの対象品を簡単に見分けられるようにすることを目的としています。

商品を製造したり輸入したりする事業者は、家庭で使われる対象商品にこのマークを表示することが法律で義務付けられています。
マークのサイズも、印刷の場合は高さ6mm以上、刻印の場合は8mm以上と定められており、消費者がはっきりと認識できるよう配慮されています。

ここで一つ、非常に重要なポイントがあります。
それは、「紙マークは、その素材が紙製容器包装であることを示すものであり、必ずしもお住まいの地域でリサイクル回収されることを保証するものではない」ということです。
リサイクルのルールは市町村によって異なるため、最終的な捨て方は地域の指示に従う必要があります。
このマークはあくまで、分別を始めるための「第一歩」と覚えておきましょう。

 

なぜ分けるの?ダンボール・紙パック・雑がみとの違いを徹底解説

「全部紙なのに、なぜこんなに細かく分ける必要があるの?
」と感じる方も多いでしょう。
その理由は、それぞれの紙が持つ特性と、リサイクルの歴史に深く関係しています。

ダンボールとの違い

  • 材質と構造: ダンボールは、波状に加工した「中芯」を平らな紙で挟んだ三層構造が特徴で、非常に高い強度を持っています。
    一方、紙製容器包装の多くは、印刷適性を高めた「コートボール」などの厚紙でできています。
  • リサイクルの流れ: ダンボールは、容器包装リサイクル法が制定されるずっと以前から、価値の高い古紙として確立されたリサイクルルートを持っていました。
    法律は、この効率的な既存システムを妨げないよう、ダンボールをあえて別のカテゴリーとして扱っているのです。
  • マーク: ダンボールには、事業者団体が自主的に表示を推奨している「ダンボールマーク」があります。
    danbo-ru-logoimg.png

紙パックとの違い

  • 材質: 牛乳パックなどの飲料用紙パックは、液漏れを防ぎ、衛生を保つために、高品質なバージンパルプから作られ、両面がポリエチレンでコーティングされています。
  • リサイクルの流れ: このポリエチレンを分離して高品質なパルプだけを取り出すには、特別なリサイクル工程が必要です。
    このリサイクルシステムは、市民運動をきっかけに全国に広まったという歴史があり、非常に効率的に機能しています。
    そのため、ダンボール同様、法律上の再商品化義務の対象外とされています。
  • 重要な例外: ただし、日本酒やジュースのパックなどで、内側に光や酸素を遮断するためのアルミ箔が貼られているものは、この「紙パック」のルートではリサイクルできません。
    これらは「紙製容器包装」に分類され、「紙マーク」が表示されます。

雑がみとの違い

  • 定義: 「雑がみ」とは、新聞、雑誌、段ボール、紙パック以外のリサイクルできる紙類全般を指す言葉です。
    チラシやノート、封筒、コピー用紙など、主に「包装」ではない紙製品がこれにあたります。
  • 重なり合う関係: 実は、多くの市町村では、住民の分かりやすさを優先して、「紙製容器包装」をこの「雑がみ」と一緒に回収しています。
    お菓子の箱もチラシも、まとめて「雑がみ」として出して良い、というルールになっている地域が多いのです。

これらの違いを理解すると、なぜ分別が必要なのかが見えてきます。
「紙製容器包装」というカテゴリーは、いわば「確立されたリサイクルルートを持たなかった、その他の紙製パッケージ」を救うために作られた法的な枠組みなのです。
事業者が費用を負担するこの仕組みによって、これまでリサイクルが難しかった多様な紙製パッケージが、新たな資源として活用される道が開かれました。

 

どうやって捨てる?紙製容器包装の正しい捨て方と注意点

分別する品目がわかったら、次は正しい捨て方です。
以下の4つの基本ステップを守ることで、リサイクルの品質が大きく向上します。

  1. 中身を空にして、きれいにする
    商品の中身は必ず使い切りましょう。
    ヨーグルトのカップやスープの箱など、食品の汚れが付いているものは、水で軽くすすいで乾かしてください。
    洗剤でゴシゴシ洗う必要はなく、食べ残しや油汚れをさっと落とす程度で十分です。
  2. 紙以外の異物を取り除く
    紙袋のプラスチック製の持ち手や、ティッシュ箱の取り出し口についているビニールフィルムなど、紙以外の部分は取り除いてください。
    取り除いた異物は、それぞれの素材のルールに従って分別します。
  3. 箱はたたんで、かさを減らす
    お菓子の箱などは、平らにつぶして出すのが基本です。
    これにより、収集車が一度にたくさんの量を運べるようになり、収集効率が上がります。
  4. お住まいの市町村のルールを確認する
    これまで説明したように、紙製容器包装の具体的な収集方法は、全国の自治体で大きく異なります。
    「紙製容器包装」として単独で回収する地域もあれば、「雑がみ」と一緒に回収する地域、あるいは「燃えるゴミ」として扱う地域もあります。
    必ず、お住まいの市町村のウェブサイトやごみ分別アプリなどで、正しい出し方を確認してください。

検索エンジンで「(お住まいの市町村名) 紙製容器包装 捨て方」と検索すると、簡単に地域のルールを見つけることができます。

 

これは燃えるゴミ?リサイクル?迷ったときの判断基準

分別に迷ったときは、以下の基準を参考にしてください。
これらは「禁忌品(きんきひん)」と呼ばれ、リサイクル工程でトラブルの原因となるため、多くの地域で燃えるゴミとして出すよう定められています。

  • ひどい汚れや油が付着しているもの
    ピザの箱の底や、油が染み込んだ紙などは、リサイクルが困難です。
    きれいにできない場合は、燃えるゴミに出しましょう。
  • 強いにおいがついているもの
    洗剤や石鹸、線香の箱など、紙に強い香りが移ってしまったものは、再生紙の品質を損なう原因となります。
    これも燃えるゴミとして扱う地域が多いです。
  • 特殊な加工がされている紙
    以下のものは、見た目は紙でもリサイクルできません。
    • 感熱紙: レシートやファックス用紙
    • 防水加工された紙: 紙コップやヨーグルトの容器(※自治体によっては資源となる場合もあります)
    • カーボン紙、ノーカーボン紙: 宅配便の伝票など
    • 写真、アルバム
    • 金色・銀色の紙、アイロンプリント紙
 

日本のリサイクル事情:紙製容器包装リサイクルの現状と課題

日本のリサイクル技術は世界トップクラスです。
古紙全体の回収率は、2024年時点で81.7%という非常に高い水準を誇ります。
しかし、驚くべきことに、「紙製容器包装」に限ると、その回収率はわずか22.4%(2023年度)にまで落ち込んでしまうのです。

この大きなギャップはなぜ生まれるのでしょうか。
原因はリサイクル技術の不足ではなく、「収集」の段階に大きな壁があるからです。

経済産業省のデータによると、全国の市町村のうち、紙製容器包装の分別収集を制度として実施しているのは、全体の約34%に過ぎません。
つまり、約3分の2の市町村では、そもそも紙製容器包装をリサイクル資源として回収する仕組みが整っていないのです。

多くの自治体が導入に踏み切れない背景には、いくつかの理由があります。

  • 既存の回収ルート: すでに「雑がみ」として古紙を回収する効率的なルートが確立しており、新たに「紙製容器包装」という分別区分を追加する必要性を感じていない。
  • 住民の負担と混乱: 分別の種類が増えることで、住民の負担が増え、混乱を招くことを懸念している。
  • 経済的な課題: 段ボールなどと比べて価値が低く、多様な素材が混ざる紙製容器包装は、分別収集にコストがかかるため、自治体にとって経済的なメリットが少ない。

このように、国の法律(紙マークの表示義務)と、現場である市町村の運用との間に大きな隔たりがあるのが現状です。
この課題は、私たち個人の努力だけでは解決が難しく、社会全体の仕組みの見直しが求められています。

紙化できる製品を詳しく解説した記事はこちら

 

リサイクルのその先は?再生された紙のゆくえ

では、無事に回収された紙製容器包装は、その後どうなるのでしょうか。
行き先は大きく分けて2つあります。

  1. マテリアルリサイクル(材料リサイクル)
    これが、私たちが一般的にイメージするリサイクルです。
    回収された紙は、製紙工場で水と混ぜてドロドロに溶かされ、インクや異物が取り除かれます。
    こうして再生されたパルプは、新しい製品の原料として生まれ変わります。
    主な用途は、段ボールの芯や、お菓子の箱などに使われる板紙、建材などです。
  2. サーマルリサイクル(熱回収)
    プラスチックとの複合素材など、再び紙に戻すのが難しいものは、熱エネルギーとしてリサイクルされます。
    細かく砕かれ、乾燥・圧縮されて「RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)」と呼ばれる高カロリーの固形燃料が作られます。
    このRPFは、製紙工場やセメント工場などで石炭の代替燃料として使用され、化石燃料の使用削減とCO2排出量の抑制に貢献しています。

「リサイクル」と一言で言っても、このように複数の方法で、私たちの出したものが無駄なく資源として活用されているのです。

 

3Rを推進する「紙製容器包装リサイクル推進協議会」とは?

日本のリサイクルシステムを支える重要な組織の一つに、「紙製容器包装リサイクル推進協議会」があります。
これは、紙製容器包装を製造するメーカーや、それを利用して商品を販売する企業などが集まって作られた業界団体です。

この協議会の主な目的と活動は以下の通りです。

  • 企業のサポート: 会員企業が容器包装リサイクル法を正しく遵守できるよう支援する。
  • システムの調査・研究: より効率的でコストの低いリサイクルシステムを構築するための調査や研究を行う。
  • 普及啓発: 消費者や自治体に向けて、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の重要性を伝えるキャンペーンや情報提供を行う。
  • 政府への提言: 業界の意見をまとめ、より良いリサイクル制度の実現に向けて国に提言を行う。

この協議会の活動は、事業者側もリサイクル制度の重要な担い手として、積極的にその改善と推進に取り組んでいることを示しています。

 

紙製容器包装のまとめ

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • Point: 「紙製容器包装」は、単なる「紙ごみ」ではなく、法律で定められた特別なカテゴリーです。
  • Reason: 商品に使われ、使い終わると不要になるものを対象に、消費者・自治体・事業者が協力してリサイクルを進めるための仕組みに基づいています。
  • Example: お菓子の箱や包装紙が典型例ですが、独自の高いリサイクルルートを持つ段ボールや牛乳パック(アルミ不使用)は含まれません
  • Point: 正しい分別は、「紙マーク」を確認し、きれいにした後、お住まいの自治体のルールに従うことが最も重要です。

また、当サイトを運営する国際紙パルプ商事では、今ある容器包装を紙化するご提案も行っております。

紙化を行うことでプラスチック使用量削減につながることはもちろん、印刷が容易なこと、変形が簡単なこと、軽さがあることが特徴です。
食品に直接触れる容器・包装や資材の分野では、以下での紙化対応が可能です。

  • 弁当などの容器
  • ストローなどカトラリー
  • 飲料コップ

特殊な加工を施すことで、耐水・耐油性を有し、食品に包装紙の臭い移りがないことから、直接食品に触れる容器一次包装にも使用されています。


使い捨てのイメージがあった紙コップは、資源として回収することで再利用が可能となります。
弊社では2022年8月から9月にかけてサッカーJ2リーグ所属のザスパクサツと連帯し、正田醬油スタジアムにおいて使用済み紙コップを回収し、これらを原料としたトイレットペーパーを製造・再利用するという取り組みを実施いたしました。

詳細はこちらをご覧ください。



また、紙化について詳しく解説した資料もございます。詳細はこちらよりご確認ください。

メリット・デメリット紙化事例をご紹介
素材・製品の紙化が叶える持続可能な社会

  • 環境対応による波及効果
  • 容器・包装素材の紙化
  • 具体的事例のご紹介
 

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