食品用耐油紙の選び方ガイド PFAS規制と安全な代替品、環境対応まで解説


最終更新日:2025/05/15
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食品用耐油紙の選び方ガイド PFAS規制と安全な代替品、環境対応まで解説

食品用耐油紙とは?私たちの食生活に欠かせない理由

私たちの食卓やテイクアウトシーンで、揚げ物やパン、お菓子などを美味しく、そして清潔に楽しむために欠かせないアイテム、それが「耐油紙」です。ハンバーガーの包み紙、ドーナツの下に敷かれる紙、ケーキを彩るグラシンカップなど、意識してみると多くの食品包装に耐油紙が使われていることに気づくでしょう。

この記事では、そんな身近な存在である食品用耐油紙について、その基本的な役割や種類から、近年大きな関心を集めているPFAS(有機フッ素化合物)規制の動向、そして私たちが安心して使用できる安全な耐油紙の選び方、さらには環境に配慮した企業の取り組み事例まで、専門的な視点も交えながら解説します。

「最近よく聞くPFASって何?」「クッキングシートと耐油紙ってどう違うの?」「安全な耐油紙を選びたいけど、どうすればいいの?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。

PFAS耐油紙のご紹介

飲食業の方必見
PFASフリー耐油紙のご紹介

  • PFASについて各国の事例を紹介
  • 弊社でのPFASフリー耐油紙の対応事例
  • PFASフリー耐油紙のラインアップ例
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食品用耐油紙の基本をチェック 役割と主な用途

まずは、食品用耐油紙がどのようなもので、なぜ私たちの食生活に必要とされているのか、基本的な情報から見ていきましょう。

食品用耐油紙の主な役割と特性

耐油紙の最大の役割は、その名の通り「油を通しにくい」ことです。食品に含まれる油分が紙に染み出して手が汚れたり、他のものに油が付着したりするのを防ぎます。これにより、食品の見た目の美しさを保ち、衛生的に持ち運んだり食べたりすることができます。

主な特性としては、

  • 優れた耐油性: 油脂分の浸透を効果的にブロックします。
  • 適度な強度: 食品を包んだり敷いたりするのに十分な強度を持っています。
  • 印刷適性: 多くの場合、商品ロゴや情報を印刷することが可能です。

製品によっては、これに加えて耐水性や耐熱性を備えているものもあります。

こんなところで活躍 食品用耐油紙の具体的な用途

耐油紙は、その優れた特性を活かして、私たちの食生活の様々なシーンで活躍しています。

  • 揚げ物の包装・敷き紙: フライドチキン、フライドポテト、コロッケ、ドーナツなど、油分の多い食品を直接包んだり、容器の底に敷いたりするのに使われます。
  • パンや洋菓子の包装・ベーキングカップ: パンやケーキ、クッキーなどの包装や、マフィンカップのような焼き型としても利用されます。
  • ファストフード・コンビニエンスストアの包装材: ハンバーガーの包み紙、ホットスナックの袋、サンドイッチの包装など、テイクアウトや個食化が進む現代の食シーンに不可欠です。
  • お弁当の仕切りやおかずカップ: お弁当箱の中で、おかずの味や油が他に移るのを防ぐためにも使われます。
  • 冷凍食品の包装: 一部の冷凍食品では、解凍時や調理時に油分が問題とならないよう、耐油紙が包装材の一部として採用されています。

耐油紙にも色々ある?薄手から厚紙タイプまで

一般的に耐油紙と聞くと薄いシート状のものを想像するかもしれませんが、実は用途に応じて様々な厚さや形状のものが存在します。

  • 薄手の耐油紙: 主に個々の食品を直接包んだり、敷き紙として使われたりします。柔軟性があり、様々な形状の食品に対応しやすいのが特徴です。
  • 厚紙タイプの耐油紙(耐油板紙): ケーキの箱、ピザの箱、テイクアウト用の食品トレーなど、ある程度の強度や形状保持が求められる容器に使用されます。これらの製品は、紙の表面だけでなく、紙の層全体に耐油加工や耐水加工を施すことで、より高いバリア性能を実現しているものもあります。環境負荷低減の観点から、プラスチック製容器の代替としても注目されています。

違いはなに?耐油紙と関連製品を徹底比較

食品用耐油紙とよく似た製品や、特殊な加工が施されたものについて、その違いや特徴を詳しく見ていきましょう。

「耐油紙」と「クッキングシート」は何が違う?

キッチンでよく使われるクッキングシート(オーブンシート、ベーキングシートとも呼ばれます)も油を通しにくい性質を持っていますが、一般的な食品包装用の耐油紙とは主な用途や機能が異なります。

食品用耐油紙
  • 主な用途: 食品の包装、敷き紙など(常温~やや高温での使用が中心)。
  • 主な機能: 油分の浸透防止。
クッキングシート
  • 主な用途: オーブンや電子レンジでの調理(高温での使用が前提)。
  • 主な機能: 耐油性、耐熱性に加え、食品がくっつきにくい高い剥離性(非粘着性)。
  • 基材: 多くは「パーチメント紙」という高密度な紙にシリコーン樹脂をコーティングしたもの。


つまり、クッキングシートは「調理」に特化した高機能な耐油紙の一種と言えます。すべての耐油紙がオーブン調理に対応しているわけではないので、用途に合わせて正しく使い分けることが大切です。

注目の「シリコン加工耐油紙」とは?

シリコン加工耐油紙は、耐油性のある紙の表面にシリコーン樹脂を薄くコーティングしたものです。この加工により、以下のような優れた機能が加わります。

  • 抜群の剥離性: 食品が紙にくっつきにくいため、ケーキやパンを焼く際や、キャラメルのような粘着性のある食品を扱うのに非常に便利です。
  • 向上した耐熱性・耐水性: オーブンでの使用や蒸し料理にも適しています。

製品によっては、基材となる紙自体を高密度化することで耐油性を持たせ、別途「耐油剤」を使用していないノンシリコンタイプを謳うものもあります。

どうやって作られる?耐油紙の製造方法の概要

耐油紙の耐油性は、主に以下のようないずれか、または複数の技術を組み合わせて実現されています。

  • 薬品処理(コーティング・内添): 紙の表面に耐油性のある薬剤(シリコーン樹脂など、かつてはPFASも使用)を塗布したり、製紙原料であるパルプに薬剤を混ぜ込んだりする方法。
  • 高密度化処理: パルプ繊維を機械的に細かくすり潰し、高圧でプレスすることで紙の繊維間の隙間を極限まで減らし、油が物理的に浸透しにくくする方法(グラシン紙など)。
  • ラミネート加工: 紙の表面にポリエチレンフィルムやアルミ箔などを貼り合わせる方法。非常に高いバリア性を持ちますが、リサイクル性が課題となることもあります。

近年では、環境負荷や安全性への配慮から、PFASを使用しない非フッ素系の薬剤や、新たなコーティング技術の開発が進んでいます。

食品用耐油紙とPFAS(有機フッ素化合物)問題 – 安全な製品を選ぶために

ここ数年、環境汚染や健康への影響が世界的に懸念されている化学物質群「PFAS」。食品包装材にも使用されていることもあり、水などに含まれているなど大きな社会問題となっています。ここでは、PFASとは何か、なぜ問題視されているのか、そして現在の規制状況について詳しく解説します。

PFAS(有機フッ素化合物)とは?

PFASは「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物」の総称で、自然界で分解されにくく、環境中に長く残留しやすい性質から「フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)」とも呼ばれています。PFASには数千種類以上の物質が存在すると言われています。

その撥水性・撥油性、熱や化学薬品に対する安定性といった優れた特性から、過去数十年にわたり、調理器具のコーティング、衣類の防水加工、泡消火剤、そして食品包装材の耐油加工など、非常に幅広い用途で利用されてきました。

なぜPFASは問題視されるのか?

PFASの広範な使用が問題視される主な理由は以下の通りです。

  • 環境への残留性と生物蓄積性: 自然界で極めて分解されにくいため、土壌や水質を長期間汚染し続けます。また、食物連鎖を通じて動植物の体内に取り込まれ、蓄積していく性質(生物濃縮性)があります。
  • 広範囲な汚染(長距離移動性): 水や大気を介して地球規模で広がり、発生源から遠く離れた地域でも検出されています。
  • 人の健康への潜在的な悪影響: PFASへの曝露と、健康問題との関連が指摘されています。

特に、PFASの中でもPFOA(ペルフルオロオクタン酸)とPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、その有害性が早くから認識されています。

食品包装におけるPFASの現状と規制動向

かつては、耐油紙の耐油性を高めるためにPFAS(特にPFOAなど)が使用されていましたが、そのリスクが明らかになるにつれて、世界的に規制が強化されています。

    • 国際的な動き: PFOS、PFOA、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)などは、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で使用の廃絶や制限が定められています。
    • 米国の動向: FDA(米国食品医薬品局)は、食品包装へのPFAS使用を段階的に制限しており、2024年2月には、特定のPFASを使用した耐油紙などの米国内での販売が(メーカーの自主的撤退により)終了したと発表しました。また、カリフォルニア州など一部の州では、より厳しい独自の規制が導入されています。
    • 欧州連合(EU)の動向: REACH規則などに基づき、PFASの使用制限が進められており、将来的にはより包括的な規制が導入される見込みです。
日本の対応
    • 化審法による規制: PFOS、PFOA、PFHxSなどは「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づき、第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が原則禁止されています。
    • 水質目標値の設定: 厚生労働省は水道水中のPFOSとPFOAの合計値として50 ng/L以下という暫定目標値を設定しています。環境省も河川水や地下水について同様の目標値を定めています。
    • 食品からの摂取に関する調査: 農林水産省が食品中のPFAS含有実態調査などを継続的に実施しています。
    • 業界の自主的な取り組み: 多くの食品包装材メーカーや食品関連企業が、PFASを使用しない「PFASフリー」や「ノンフッ素」の耐油紙への切り替えを自主的に進めています。

弊社事例で見る PFASフリー耐油紙への移行と今後の展望

PFAS規制が国内外で強化されるなか、食品包装業界においてもフッ素樹脂を使用しない製品への関心が高まっています。実際に、多くの企業が環境負荷削減と消費者の安全志向に応えるため、PFASフリーの包装資材への切り替えを検討・実施しています。

大手飲食店における非フッ素耐油紙導入事例

グローバルな大手コーヒーチェーンでは、米国のPFAS規制強化を受け、日本でも包装紙をフッ素不使用の機能紙へ変更することを検討しました。同社はテイクアウト用の袋に耐油紙を使用しており、食品に直接触れるためフッ素不使用素材への転換が課題でした。

そこで弊社にて提案したのが、表面に特殊な耐油層を形成する非フッ素耐油紙です。この紙は以下の特性を示しました。

  • 高い耐油性: 従来のフッ素系製品と同等のキット値(耐油性指標)を維持し、紙の通気性を活かした透気度も改良されています。
  • 優れた製袋適性: 製袋適性が高く、折り目からの油漏れや耐油剤の剥離といった懸念を解消しました。
  • 環境負荷低減: プラスチック不使用で、脱プラや使用量削減に貢献します。

導入後、店舗では従来品同様に使用でき、顧客からのクレームもなく満足いただけているようです。

ノンフッ素耐油紙の多様な用途と将来性

ノンフッ素耐油紙は、油分を多く含む揚げ物や洋菓子などの包装を中心に、敷き紙、製袋、内側へのコーティングなど、最終製品の形状に合わせて自在に成形できるため、幅広いシーンでの活用が期待されます。ポリラミネート紙からの置き換えは、プラスチック削減にも大きく貢献します。

PFASの全てが直ちに危険というわけではありませんが、特定のPFAS(PFOS、PFOA、PFHxSなど)は分解されにくく、環境や人体に蓄積しやすい性質を持つため、海外では規制が進んでいます。日本でもこの動きは今後さらに加速すると考えられます。

企業がいち早くPFASフリーの素材に対応することは、環境配慮の取り組みとして社会的な評価を高めるとともに、規制強化への先手を打つことにも繋がります。

既存製品の機能を損なわずに環境対応素材へ置き換えることは、大規模な設備投資を伴う対策と比較して、比較的取り組みやすい環境対応と言えるでしょう。

今後は、テイクアウト用途に加え、スーパーやコンビニエンスストアで陳列される惣菜の包装や、食品製造工場で使用される包装資材などへの展開も期待されています。

このような具体的な事例は、PFAS規制という課題に対し、代替素材がいかに有効な解決策となり得るかを示しています。

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