PFAS規制強化を受けて—当社での素材対応事例—


最終更新日:2024/10/08
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PFAS規制強化を受けて—当社での素材対応事例—

PFAS規制が強化されるなか、実際にお客様からもフッ素樹脂不使用の製品を使用したいとのご相談をいただきます。今回は当社が対応した実例を紹介しながら、環境負荷削減のために食品包装資材ができることを考えていきます。

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PFAS規制強化によるお客様からのご相談

包装は食品、工業、物流、一般流通小売など様々な業界で使用されます。なかでも食品包装に使用されている場合は体内へ取り込む可能性が高いことから、PFAS規制強化を受けて、フッ素樹脂を使わない取り組みがはじまっています。


今回は当社での包装資材担当部署へインタビューをおこないました。

―PFAS規制対応製品を取り扱いはじめたきっかけを教えてください。

有機フッ素化合物のなかでも、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称してPFASといいます。1万種類以上の物質があるとされている中で、特にPFOS・PFOA、PFHxSには分解しにくく蓄積性が高いという性質があるため、自然環境への排出があった場合長い期間の残留が起こりえます。また体内へ取り込んだ場合には蓄積され、人体への悪影響が考えられます。こうした理由から日本をはじめEUなどの多くの国・地域でPFASのいくつかは製造、使用、輸入が禁止されています。

すべてのPFASが悪影響を引き起こす訳ではありませんが、特にアメリカでは2021年より規制強化の方針を発表しており、現状日本よりも厳しい規制がおこなわれています。
例として本社が日本国外に置かれている企業では、その国の規制基準の高さを求められることがあります。今回非フッ素使用製品を取り扱うきっかけとなったのも、とあるグローバル企業からの相談があってのことでした。
今回のお客様であるコーヒーを主力とする大手飲食店は、本社のあるアメリカでのPFAS規制の拡大を受け、日本でも包装紙の変更を検討していました。そこで当社ではフッ素系の耐油材を使用しない機能紙を提案いたしました。

―非フッ素材耐油紙とはどんなものですか。

一般的な耐油紙にはフィルムをラミネートしたもの、紙にフッ素樹脂を染み込ませたものなどが挙げられます。
非フッ素耐油紙は紙の表面に耐油層をつくり、油の染み込みを防いでいます。

PFASイメージ

―お客さまはどういった使用を想定していましたか。

洋菓子や軽食をテイクアウトする際に商品を入れる袋としての使用です。
直接食品にパッケージが触れることから、フッ素不使用の素材に置き換えたいとの要望でした。

―非フッ素耐油紙の特徴を教えてください。

特徴は大きく3つあります。

  • 高い耐油性

耐油性能を表す指標をキット値と言います。1~12の評価で数字が大きいほど耐油性が高いです。
当社がお客様へ提案した代替耐油紙は、従来の製品と遜色ないキット値を保持しています。
また、紙ならではの通気性を活かすことで水蒸気を外へ逃がすことも可能です。この紙から空気が抜ける度合いを透気度といい、さらなる改良でより通気性の良い素材に高めています。

  • 製袋適正

耐油紙は一般的に袋用途が多くなっています。今回ご提案した素材も、袋製品として使用されるものでした。
懸念点として折り目から油が漏れることや、折り目付近の耐油剤が粉状に剥離することがありました。しかし提案した製品では製袋適性が高く、これらの心配事は起こりませんでした。

  • 環境負荷低減

プラスチック素材を使用していないことから、資材において脱プラスチックやプラスチックの使用量を減少したい際に最適な製品となります。

―置き換えをおこなった際のお客様の反応を教えてください。

まずは従来製品と変わりなく使用できるか、お客様から変更後にクレームがないかが課題でしたが、毎週数千枚の店舗での使用があるなかで、置き換え後も従来品と変わらずに使用ができています。

―どんな用途がありますか。

食品の中でも油分を多く含む揚げ物、洋菓子などを包むことを想定しています。
敷き紙、製袋、内側へのコーティングなど最終製品の形を自在に成形できるため、幅広いシーンでの使用が可能です。
また、ポリラミ紙からの置き換えとして使用していただければ減プラにも貢献が可能です。

―今後の展望をお聞かせください。

PFASはすべてが危険なものではなく、特定の3種類が水に溶けやすく、体内や自然環境下では分解されにくく、蓄積しやすいという性質を持っています。日本では化審法に基づき規制がおこなわれていますが、少しずつ浸透している状況です。
このためいち早く対応していくことでイニシアチブを握れますし、プラスチック素材の使用量を減少するという点でも環境負荷対応に貢献できます。既存製品の機能をそのまま保てる資材に置き換えることで、脱炭素や脱プラスチックが可能となります。このことは、大きなシステム導入などに比べて、比較的取り組みやすい環境対応だと考えています。

ラインナップは未晒(茶色)、晒(白)ともにご提案が可能です。もちろん紙であることから印刷適正も兼ね備えています。
現状はテイクアウト時の包装資材として使用していただいています。このことから今後はスーパーやコンビニで陳列しているお惣菜にも使用できるのではないかと考えています。密閉した袋でありながら、窓枠を作ることで中身を見せることも可能です。さらに食品製造時に工場などで使用される包装資材にも置き換えが可能であると考えています。

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参考文献

・環境省 
PFOS、PFOAに関するQ&A集

・環境省
PFASに対する総合戦略検討専門家会議(第2回)議事次第・配付資料 資料3-3 PFOS、PFOA 以外のPFAS の国内の製造状況等

・朝日新聞 
PFASの一種「PFHxS」を製造使用禁止へ 6月から輸入できず(2024年4月2日閲覧)

・日本貿易振興機構
米環境保護庁、有機フッ素化合物PFASに関するガイドライン発表、今秋に新規制公表へ(2024年4月3日閲覧)

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