アップサイクルとは?リサイクル・ダウンサイクルとの違いと市場動向
最終更新日:2025/12/23

廃棄物削減やサステナビリティへの対応が、企業経営において「取り組むべき姿勢」から「具体的な事業判断」へと変わりつつあります。
その中で近年注目を集めているのが、アップサイクルという考え方です。
アップサイクルとは、不要になった製品や廃棄予定の素材に新たな価値を与え、元の用途以上の価値を持つ製品へと生まれ変わらせる取り組みを指します。
従来のリサイクルやダウンサイクルとは異なり、環境負荷の低減と付加価値創出を同時に実現できる手法として、国内外で事業化が進んでいます。
本記事では、アップサイクルの基本的な考え方から、リサイクル・ダウンサイクルとの違い、事業としての市場動向、メリット・課題を整理したうえで、実際の素材例や製品事例を交えながら解説します。
さらに、廃棄物を資源として活かす具体的な手法として、SHIFT ONが取り組むアップサイクル事例も紹介し、企業が実践に踏み出すためのヒントをお伝えします。
アップサイクルの定義とリサイクル・ダウンサイクルとの違い

アップサイクル(upcycle)とは、本来は廃棄される予定の製品や素材に創意工夫を加え、元の製品よりも高い価値の新しい製品によみがえらせることです。
例えば、使用済みのペットボトルに装飾を施して花瓶にする、古いデニムからおしゃれなバッグを作るといった再利用がアップサイクルに該当します。
一方、リサイクルは廃棄物をいったん素材レベル(原料)まで分解してから新たな製品の材料として再利用する方法です。
ペットボトルを溶かして再びペットボトルや繊維の原料にする、古紙をパルプに戻してトイレットペーパーにする等はリサイクルの典型例です。
また、ダウンサイクル(downcycle)という対義語もあります。
これは廃棄物を再利用する際に、元の製品よりも低い価値の製品に変える手法を指します。
たとえば古い衣類を工業用ウエス(雑巾)や断熱材に再利用するケースなど、再利用によって品質や用途が下がってしまうのがダウンサイクルの特徴です。
リサイクルの多くは素材の劣化や品質低下を伴うため結果的にダウンサイクルになる場合もありますが、アップサイクルは素材を元の原料まで戻さず製品の形や特徴を活かして価値を高める点で異なります。
その分、アップサイクルは余計なエネルギーや水資源を使わず環境負荷が小さいメリットも指摘されています。
世界・国内におけるアップサイクル事業の市場動向

廃棄物削減や持続可能な循環型社会への関心が高まる中、アップサイクル事業は世界的に成長トレンドにあります。
例えば、食品のアップサイクル(食品廃棄物の再生利用)市場規模は2024年時点で約389億5,000万米ドルに達し、2025年から2032年に年平均7.36%成長して2032年には約6,856億米ドル(約75兆円)規模に拡大すると予測されています。
また、家具業界でも不要家具の再生利用ニーズが伸びており、世界の家具アップサイクル市場は2022年時点で約60億ドルから年12~15%のペースで成長し、2030年には150億ドル規模に達する見込みです。
日本国内でもアップサイクルはまだ新興分野ながら、家具アップサイクル市場は2025年には約1,000億円規模に拡大すると予測されています。
こうした市場拡大の背景には、各国政府や企業がサーキュラーエコノミー(循環経済)を経営戦略に据え始めたことがあります。
国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」採択や廃プラスチック規制などを受けて、「使い捨て」から「繰り返し使う」経済へのシフトが加速しています。
日本でも循環型ビジネスへの注目が高まり、大企業からスタートアップまでアップサイクル事業に参入する動きが相次いでいます。
例えばアパレル業界では販売後に廃棄される衣類を別製品に生まれ変わらせるブランドが登場し、食品業界では規格外野菜や副産物を原料にしたアップサイクルが進んでいます。
アップサイクルは単なる環境対策に留まらず新たなビジネスチャンスとして認識されつつあり、今後10年以上にわたり市場拡大が続くとの展望も示されています。
サーキュラーエコノミー(循環型経済)についてより深く理解したい方は、こちらのページもぜひご覧ください。
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アップサイクルのメリット(効果・利点)

アップサイクルに取り組むことで、企業や社会にもたらされる主なメリットは次の3点です。
- 廃棄物削減につながる
本来は廃棄予定だった製品や資材を有効活用できるため、廃棄物の量を減らせます。
埋立処分や焼却に回っていた廃棄物を原料として再活用することで、最終処分場の逼迫やCO₂排出削減にも貢献します。 - 企業イメージの向上
単に廃棄物を減らすだけでなく、不要物を有用な資源に変えるアップサイクル活動そのものが持続可能な資源利用のアピールとなります。
環境配慮型のブランドとして差別化でき、CSR評価や顧客からの共感を得やすくなるでしょう。 - 新規事業・異業種参入のきっかけ
アップサイクルでは元の素材とは異なるジャンルの製品製造に取り組むため、それが別業界へ事業展開を広げる契機になり得ます。
実際に廃タイヤのアップサイクルから家具業界に参入した例や、繊維くず再生からアパレル以外のインテリア市場に進出した例もあります。
自社の強みを活かしつつ新分野への挑戦につながる点は大きなメリットです。
アップサイクルのデメリット・課題

一方で、アップサイクルには以下のようなデメリットや課題も指摘されています。
- 原材料の安定供給が難しい
アップサイクルの材料として使う廃棄資源は、その発生量やタイミングが不安定です。
本来は不要物なので大量かつ継続的に確保するのが難しく、製品の安定生産計画が立てにくい場合があります。
需要に応じて意図的に廃棄物を増やすわけにもいかないため、この不安定さと向き合う必要があります。 - コストや手間がかかる
廃材を選別・加工して再商品化するには追加の手作業や加工プロセスが必要で、製造コストが割高になるケースがあります。
大量生産の新品素材と比べ、スケールメリットが働きにくいためです。
また品質管理にも工夫が要り、一般の生産ラインに乗せるまでの労力が課題となり得ます。 - 最終的に廃棄が必要になる場合がある
アップサイクル製品もいずれ寿命が来れば廃棄物になりますが、原料を複合・加工しすぎると再リサイクルが困難になる場合があります。
複数素材を混ぜ込んだ結果、分離回収ができず最終的に焼却処分せざるを得ないケースです。
このようにアップサイクルにも限界があるため、「アップサイクルした製品のその後」まで見据えた設計や仕組みづくりが課題となります。
とはいえ、これら課題に対応するための技術開発や仕組み構築も進んでいます。
例えばアップサイクル材料を提供するプラットフォームの整備や、廃材発生元との提携による安定調達スキームの構築などが各所で模索されています。
またリサイクルやアップサイクルの仕組みを社内に取り入れたい企業向けに、専門事業者と連携して循環システムを構築するソリューションも登場しています。
アップサイクルの持続可能な運用には、こうしたサーキュラーエコノミーの仕組み作りを視野に入れることが重要です。
アップサイクルに活用される主な素材・原料例

アップサイクルに利用される廃棄素材は多岐にわたります。
代表的な原料例とその活用方法をいくつか紹介します。
廃プラスチック類
使用済みのプラスチック製品(包装フィルム、ペットボトル、プラスチック容器など)は、粉砕して再成形することで別のプラスチック製品にアップサイクル可能です。
例えば物流用の梱包フィルムを回収し、再資源化してビニール袋に加工する取り組みがあります。
このように社内で出たプラ廃棄物を再び自社製品として使うことはクローズドリサイクル(閉鎖型リサイクル)の好例で、日本航空(JAL)グループでも包装フィルムの回収再生を通じてCO₂削減に取り組んでいます。
クローズドリサイクル事例紹介

株式会社JALメンテナンスサービスでのクローズドリサイクル事例
日本航空株式会社ではサステナビリティとして、事業活動を通じて持続可能な社会の実現を目指しています。...
古着・繊維くず
不要になった衣類や布製品の端切れもアップサイクルの重要な資源です。
使用済み衣類をバッグや小物に仕立て直すことは個人レベルでも行われていますが、近年では繊維を粉砕して樹脂に混ぜ、新たなプラスチック素材(繊維強化プラスチック)として再生する技術も注目されています。
日本では毎年約48万トン(家庭から手放される衣類の約62%)が再利用されず焼却・埋立て処分されている現実があります。
こうした大量廃棄を少しでも資源循環に取り込むため、企業による衣類アップサイクルへの関心も高まっています。
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食品廃棄物(コーヒーかす・野菜くず等)
食品加工の副産物や売れ残り食品から新たな食品や素材を生み出す試みも盛んです。
例えば、抽出後のコーヒー豆かすを発酵させてパンの材料にする、野菜の皮や搾りかすからスムージーや調味料を開発するといった事例があります。
食品以外では卵の殻やビール粕などをバイオプラスチックのフィラー(充填材)として活用する技術も登場しています。
こうしたアップサイクル食品・素材の開発は食品ロス削減と新商品の創出を両立できるため、国内外で市場が拡大しています。
建築廃材(木材・金属など)
建設現場や工場から出る端材、使われなくなった家具や建具などもアップサイクル素材になります。
例えば建築現場で発生した木材の端切れから家具やインテリアボードを製造するといった取り組みです。
日本では年間およそ450万トンもの家具が廃棄され環境負荷になっているとの推計もあり、これらを素材として再利用する動きが重要です。
実際に、廃木材チップを固めて合板パネルにしたり、古い足場板をリメイクして高級家具として販売するケースも登場しています。
金属スクラップをアート作品や新しい建材にアップサイクルする例もあり、廃材の芸術的・工芸的リユースという観点でも注目されています。
以上のように、アップサイクルの素材はプラスチック・繊維・食品・木材など幅広く、各分野でユニークな製品が生まれています。
素材特性に応じた加工法の開発が進み、「ごみを宝に変える」先進事例が国内外で増えてきました。
SHIFT ONにおけるアップサイクル事例紹介

紙製品や環境ソリューションを手掛ける当社 SHIFT ON でも、様々な廃棄物を原料にアップサイクルする取り組みを行っています。
特に特徴的なのが、廃棄物を細かく粉砕し樹脂と混合してペレット状(粒状)の材料を作る技術です。
こうして生まれた再生樹脂ペレットは、通常のプラスチックと同様に成形加工の原料として利用できるため、石油由来プラスチックの代替素材になります。
廃棄物の有効活用とプラスチック削減の両立を目指したソリューションです。
さらに、このアップサイクル樹脂は元の廃棄素材が持つ特性を活かせる点もメリットです。
混ぜ込む素材によって、成形品に付加機能を持たせられる可能性があります。
以下に当社が取り扱うアップサイクル素材の一例をご紹介します。
ウール(羊毛繊維)を配合した樹脂
羊毛由来の繊維をプラスチックに混ぜることで、軽量化と耐衝撃性の向上が期待できます。
実際に、ニュージーランド産の羊毛を混合したプラスチックでは衝撃強さと引張強度が向上し、より軽く丈夫になるとの結果も報告されています。
当社のウール混合樹脂でも、繊維補強により割れにくく弾性に富む成形品が実現しています。
牡蠣殻(カルシウム)を配合した樹脂
廃棄される牡蠣の殻を微粉砕し、樹脂に練り込んだバイオプラスチックも開発されています。
牡蠣殻の主成分である炭酸カルシウムはプラスチックの耐熱性を向上させ、さらに抗菌効果も期待できるフィラーです。
当社の牡蠣殻配合ペレットでも、熱に強く衛生面で優れた成形品(例えば食品用容器やまな板等)への応用が検討されています。
古紙(紙繊維)を配合した樹脂
使用済みの紙や段ボールを粉砕し、セルロース繊維としてプラスチックに混ぜ込む取り組みです。
紙繊維を加えることでプラスチックの剛性(硬さ)や曲げ強度が高まり、さらに熱変形温度(耐熱性)も向上することが確認されています。
当社の古紙配合樹脂では、通常のポリプロピレン樹脂より高い耐熱性を示す成形品の製造に成功しています。
紙由来のマットな風合いも加わり、デザイン性と機能性を兼ね備えた素材として活用されています。
この他にも、コーヒーかすを混ぜた樹脂や、米のもみ殻を配合したバイオマスプラスチックなど、SHIFT ONでは様々な廃棄資源を素材にアップサイクル製品の研究・開発を進めています。
これらアップサイクル素材は廃棄物の削減だけでなく、素材由来の新たな付加価値によって製品機能を高められる点が特徴です。
現在お使いのプラスチック部品を環境配慮型の再生材料に置き換えたい、工場から出る廃材を有効利用したいといったご要望に対し、当社はパートナー企業としてソリューションを提供しております。
アップサイクルまとめ

アップサイクルは、不要になった製品・資材に新たな価値を持たせることで「廃棄物」を「資源」へと転換する取り組みです。
従来はゴミとして処分していたものが原料として再び活躍することで、廃棄量の削減や資源循環に寄与し、焼却処理の削減によるCO₂排出抑制など環境負荷低減にもつながります。
企業にとっても、アップサイクルは単なる環境対策に留まらず新規事業創出やブランド価値向上のチャンスとなり得ます。
もっとも、安定的な素材調達やコスト面など課題も存在するため、アップサイクルを継続的に推進するには社内外の協力体制や循環の仕組み作りが重要です。
SHIFT ONでは、本記事で紹介したような自社での取り組み事例や各種アップサイクル素材の開発知見があります。
廃棄物を原料として活用するリサイクル・アップサイクルの仕組み構築について関心のある企業ご担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
なお、サステナブル時代における最新の衣類リサイクル・アップサイクル動向については、当社提供の資料「サステナブル時代の新しい衣類リサイクルとは?」も無料でダウンロードいただけます。
ぜひ活用してみてください。











