PFAS規制とは何か 高まりつつあるフッ素化合物規制を考える
最終更新日:2024/04/11
食品包装紙において耐油・耐水性は最も重視される機能のひとつです。一般的な紙では水や油、熱への耐久性が低いため有機フッ素化合物(PFAS)と呼ばれる物質を塗布し機能性を高めて使用しています。
しかし現在、これらのコーティング剤に含まれるPFASに有害性や蓄積性があることが明らかとなりました。それにより現在は人体や自然環境への影響を考え、PFASの使用が規制され始めてきています。
今回はPFAS規制についての説明、食用包装資材においてどのような影響があるのかを解説していきます。
PFAS規制とは
有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称しPFASと呼びます。1万種類以上の物質があり、水や油をはじきながら熱に対しても安定的した性質をもっています。
PFASのうちPFOS、PFOAはそれぞれ有機フッ素化合物のペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロオクタン酸を指します。PFOSは主に半導体工業・泡消火剤、PFOAは主に食品包装紙・防護服などに使用されていました。
しかし一方で残留性と蓄積性が高く、水に溶けやすいが分解されにくい性質を持っている問題点があります。
科学的に安定性が高い、つまり外部からの作用に影響されにくいという点から人体への有害性が指摘されています。PFASの溶けだした地下水や水道水が自然環境へ流れ出ることを防ぐためにも、日本国内では現在、化審法において第一種特定化学物質として規制 、製造と使用を原製則禁止しています。さらに2023年12月には新たにPFHxSと呼ばれる物質を規制対象に追加する政令が公布されました。アメリカ・EUでは規制がされています。
人体に悪影響があることのほかにも分解されるまでに長い時間を要し、自然界に残り続けることで環境にも負荷がかかるとされています。
包装資材とPFAS規制
食品包装紙には耐油・耐水性が求められます。そのためPFASが添加された紙皿や紙パックが存在します。
アメリカの大手ファーストフード店では2025年までにすべての包装・容器からPFASを全廃すると発表しています。こういった大手飲食店での対応により、PFAS添加包装紙からPFASを使用しないものに置き換える考えが広まってきました。
現状、日本国内では欧米のように行政や政治の具体的取り決めがおこなわれてはいません。しかし今後規制が緩まることは考えにくく、何らかの対応が迫られることは必須と考えられます。
今後の動き
PFASが使用されている製品は包装資材にとどまらず、特性である電気絶縁性や誘電性を生かした製品などにも幅広く使用されています。例えば半導体やリチウムイオン電池などが挙げられますが、消費者向け・直接体内に入る可能性が高い食品包装材はとくに対応が急がれるのではないでしょうか。
まとめ
機能性に優れ、暮らしや産業の中で多く活用されていた物質のため、代替の模索が困難となる可能性があります。
当社では主に有機フッ素化合物を含まずに、耐油・耐水性を発揮できる包装紙のご提案をいたします。
併せて読みたい
PFAS規制強化を受けて
PFAS規制が強化されるなか、実際にお客様からもフッ素樹脂不使用の製品を使用したいとのご相談をいただきます...
参考文献
・環境省
PFOS、PFOAに関するQ&A集
・環境省
PFASの概状と今後の対応
・東京都保健医療局
PFASに関する情報
・NHK
有害性指摘のPFAS 規制対象の物質 新たに1つ追加を閣議決定
2024年3月18日 閲覧
・JETRO
米環境保護庁、ノースカロライナ州へのPFAS含有廃棄物の輸入承認を取り消し
バイデン米政権、有機フッ素化合物PFASの規制を強化へ
2024年3月18日 閲覧
・一般財団法人カケンテストセンター
【日本】PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)規制情報