サーマルリサイクルとバイオマス発電とは?木材廃材を活かすカーボンニュートラルエネルギー

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建築現場の廃木材や物流で使われる木製パレットなど、通常のリユースやマテリアルリサイクルが難しい木製廃材があります。サーマルリサイクルは、そうした廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを回収・利用する方法で、資源の浪費を防ぎエネルギーを再利用する重要な手法です。特に木材のサーマルリサイクルは木質バイオマス発電とも言え、廃木材を燃料に発電や温水供給に役立てることで、廃棄物削減とエネルギー創出を両立します。
本記事では、サーマルリサイクルと木質バイオマス発電の概要や特徴、環境メリット、そしてKPPグループの取り組みについて丁寧に解説します。

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目次

サーマルリサイクルとは何か


サーマルリサイクルとは、廃棄物焼却時に得られる熱エネルギーを回収して発電や熱源に利用するリサイクル手法のことです。リサイクルの方法は大きく3種類(マテリアル・ケミカル・サーマル)に分類され、汚れや異種素材の混入などにより再資源化が困難な廃棄物に対してサーマルリサイクルが採用されます。例えば廃プラスチックや使用済み天ぷら油、木材などは焼却時に高い熱量を発するため、その熱をごみ発電(焼却発電)や地域暖房として活用できます。日本では循環型社会形成推進基本法でリサイクルの一形態として熱回収が位置づけられており、2010年改正の廃棄物処理法でも焼却時の熱利用促進が図られました。実際、2010年の改正では焼却熱の有効利用設備を持つ処理施設に対する認定制度が創設され、自治体も含め焼却エネルギーの回収活用が推進されています。

木質系の廃材についても、腐朽させたり埋め立て処分するのではなく燃料として活用することで資源循環に貢献できます。建設業界でも自社排出の廃材を回収・再製品化する取り組みが進んでいますが、釘や接着剤が付着した木くずなど素材としての再生が難しいものはサーマルリサイクルによって有効利用されているのです。また、日本ではごみ焼却施設の余熱を温水プールに利用した例や、古紙・プラスチック由来の固形燃料(RPF)をボイラー燃料にして工場の熱源とする例もあります。ヨーロッパではサーマルリサイクルはエネルギーリカバリーと呼ばれ、マテリアルリサイクルとは区別した概念になっています。

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バイオマス燃料はなぜカーボンニュートラルと考えられるのか


木材などバイオマス燃料を燃焼して発電する際に排出されるCO₂は、一般にカーボンニュートラルと見なされます。植物(木材)は生長過程で大気中のCO₂を吸収・固定しており、燃焼時に放出されるCO₂はもともと大気に存在していた炭素が元に戻ったものに過ぎないからです。つまり、バイオマスを燃やしても新たなCO₂を増やさないためプラスマイナスゼロと考えられます。木質バイオマスの燃焼によって排出されるCO₂は実質ゼロカウント(差し引きゼロ)とされ、バイオマス発電が地球温暖化を悪化させないエネルギー循環の一部と位置付けられるゆえんです。

ただし、燃焼プロセスでは窒素酸化物(NOx)や微粒子状物質などの大気汚染物質も発生します。しかし近年の高性能焼却炉や高度な排ガス処理装置により、こうした大気汚染物質は大幅に低減されています。また、バイオマス資源の収集・輸送時に出るCO₂はゼロではないものの、燃料を地産地消する取り組みや物流効率化によりトータルの排出削減も図られています。このように、バイオマス燃料はカーボンニュートラルな特性を持ちつつ技術面での環境対策も進められているのです。

木材のサーマルリサイクル=木質バイオマス発電の仕組み


木質廃材を燃料として熱エネルギーを電力に変換するのが木質バイオマス発電です。代表的な方式は直接燃焼方式で、製材所から出る端材や建物解体で出た廃木材、森林整備で生じる未利用材などをチップ燃料化しボイラーで燃焼、その熱で蒸気タービンを回すことで発電します。こうした木材由来のバイオマス燃料からは電気だけでなく温水・温風・蒸気を得ることも可能であり、余った木材をエネルギー源として有効活用する手段として企業や自治体から注目されています。日本各地でも木質バイオマス発電所の建設が進み、比較的小規模でも地域の廃材処理とエネルギー供給を両立するモデルが広がりつつあります。また、木質バイオマス発電は燃料の含水率や性状によって発電効率が左右されるため、最適なプラント設備の選定や燃料の乾燥工程など工夫が重要です。近年では様々な種類の木質燃料に対応できる高性能ボイラーも開発されており、燃料特性による制約が少ない柔軟な運転が可能なプラントも登場しています。

木質バイオマス発電は木材のサーマルリサイクルの具体例であり、熱と電気の両面でエネルギーを活用できる点に特徴があります。例えば発電と同時に排熱で地域暖房や温水供給を行う熱電併給(コージェネレーション)によって、燃料エネルギーの総合利用効率を高めることが可能です。通常、蒸気タービン方式の木質バイオマス発電の発電効率は約20%程度に留まり、石油火力の40%前後と比べれば低い水準にあります。しかし未利用となっていた燃料から電気と熱を生み出す意義は大きく、また熱電併給を組み合わせればエネルギー全体の利用効率は70〜80%に達する事例もあります。このように単独の発電効率だけでなく熱利用まで含めて考えることで、木質バイオマス発電は廃棄物処理とエネルギー創出を両立する有効な手段となっているのです。

バイオマス発電の需要増加と他エネルギーとの比較


近年、再生可能エネルギーの一つであるバイオマス発電への需要が高まっています。日本では2012年7月にFIT(固定価格買取制度)が開始されて以降、再エネ導入量が飛躍的に増加しました。総発電量に占める再生可能エネルギー比率は2011年度の約10.4%から2022年度には21.7%まで拡大しています。中でもバイオマス発電は2011年度時点で全電源の1.5%に過ぎませんでしたが、2022年度には3.7%にまで増加し、2030年度には約5%程度まで引き上げる目標が掲げられています。この数値目標に対して、日本国内では既に設備容量ベースで2030年目標の8.0GW近く(7.4GW)が導入済みであり、認定済み未稼働案件も含めれば十分達成可能な水準に達しています。こうした背景から、バイオマス発電は太陽光・風力など他の再エネ電源と並び重要な成長分野となっています。

他の発電方式と比較すると、バイオマス発電には長所と短所の両面があります。まず発電の安定性という点では、バイオマスは燃料さえ確保できれば天候や時間帯に左右されず安定した出力を得られるのが強みです。太陽光発電や風力発電が天候条件で発電量に変動が生じるのに対し、バイオマス発電は24時間連続稼働も可能なベースロード電源として地域の電力安定化に寄与します。一方、発電効率の面では前述の通り木質バイオマス発電の熱電変換効率はおおよそ20%前後と低く、石油火力(約40%)など化石燃料の火力発電に比べると見劣りします。燃料中の水分が多く燃焼温度が上がりにくいこと等が効率低下の要因ですが、未利用資源を活用する意義を考えれば受容できる範囲とも言えます。

また、バイオマス発電は燃料調達コストや運転維持費が比較的高めで、規模の経済が働きにくい点も課題です。しかしその反面、木質系燃料は国内で比較的調達しやすく林地残材の有効利用にも繋がるため、燃料を輸入に頼らず国内資源で賄える電源としてエネルギー安全保障上のメリットもあります。総合すると、バイオマス発電は安定性や地域資源の活用といった利点と、コストや効率面の課題を併せ持つ発電方式だと言えます。

バイオマス発電の環境・社会的メリット


バイオマス発電には環境面・社会面双方で多くのメリットがあります。まず環境面では、温室効果ガス排出削減への貢献が大きなポイントです。前述の通り木質バイオマスはカーボンニュートラルなエネルギー源であり、発電時に排出されるCO₂は実質的にゼロ計上とみなせます。これにより石炭火力など化石燃料発電に比べ、地球温暖化防止に寄与できる電源となっています。

次に、廃棄物の有効活用という側面も見逃せません。林業副産物や建築廃材、食品残渣など従来は処理に困っていた有機性廃棄物を燃料に転用できるため、ごみの削減と資源循環に繋がります。実際、バイオマス発電の普及によって、それまでは焼却処分や埋立処分されていた廃木材・廃棄物がエネルギー資源に生まれ変わり、地域の廃棄物処理負担軽減に貢献しています。

さらにエネルギーの地産地消による地域活性化もメリットの一つです。バイオマス燃料を地域内の林業・農業から調達し、地域で発電・利用することで燃料輸送に伴うコストやCO₂を抑えつつ、エネルギー関連のお金が地元に循環します。小規模分散型のバイオマス発電所は地方に新たなビジネスと雇用を生み、「地方創生型」のグリーン産業として期待されています。加えて、バイオマス発電は他の再エネ電源を補完する安定電源として、再エネ比率拡大時の電力調整力を担う役割も果たします。夜間や無風時でも出力できるバイオマス発電が電源ミックスに一定量あることで、再エネ由来電力の安定供給に寄与できるのです。このように、バイオマス発電は環境面(CO₂削減・廃棄物削減)と社会面(地域経済活性・エネルギー安定化)の双方でメリットをもたらす持続可能な発電方式だと言えるでしょう。

再生可能エネルギー普及の大きな流れとバイオマス発電


世界的な脱炭素化の潮流の中で、再生可能エネルギーの普及拡大は不可欠な課題です。日本政府も2050年カーボンニュートラル実現に向け、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスといったあらゆる再生可能エネルギーを主力電源として導入拡大する方針を掲げています。2021年に策定された第6次エネルギー基本計画では、2030年度の電源構成に占める再エネ比率を36〜38%(うちバイオマス約5%)に引き上げる目標が示されました。この政策目標の下、FIT制度による買取支援や各種補助金施策を通じて再エネ導入が進み、前述のようにバイオマス発電設備も着実に増加しています。直近ではFITに頼らない非FIT型のビジネスモデルも登場し始めており、固定買取に依存せず企業間契約(PPA)で成立する再エネ電源の開発が注目されています。こうした新しい手法は国民負担(賦課金)を増やさずにグリーン電力を普及させるものとして、政府も支援を検討しています。

また企業においても、自社で使用する電力を再エネ由来に転換するニーズが高まっています。RE100への参加やSDGs経営の一環として再生可能エネルギーを積極利用する動きが広がり、その受け皿となる電源の開発が求められています。太陽光・風力によるオンサイト発電(自家消費)だけでなく、オフサイトPPAによる地域の再エネ電力の調達も一般化しつつあり、この中で安定供給可能なバイオマス発電が果たす役割は大きいと言えます。特に地域密着型のバイオマス発電は、エネルギーの地産地消やレジリエンス強化(非常時の非常電源確保)にも寄与するため、地方自治体と企業が協働して脱炭素電源を創出するケースも増えてきました。再生可能エネルギー普及という大きな流れの中で、バイオマス発電は環境と経済を両立するカギとして、その重要性がますます認識されている状況です。

KPPグループのバイオマス発電への取り組み

最後に、KPPグループのバイオマス発電事業への取り組みをご紹介します。国際紙パルプ商事(KPP)グループホールディングスでは、紙流通やバイオマス関連事業で培ったノウハウを活かし、木質バイオマス発電による脱炭素社会の実現に貢献するプロジェクトに積極的に参画しています。

完全非FIT型木質バイオマス電源開発事業への参画

2023年、KPPグループの連結子会社である株式会社BMエコモは、三重県松阪市で進められている「完全NON-FIT型 木材・製造業生産副産物ハイブリッド燃料による脱炭素電源開発事業」に参画しました。このプロジェクトでは、地元企業ホクト株式会社の工場(多気町)から排出される廃菌床(きのこ栽培後の培地)と、中部圏の木材リサイクルチップやプラスチック由来の固形燃料(RPF)を混合したハイブリッド燃料を活用し、小規模分散型の木質バイオマス発電所(発電出力1,990kW)を建設します。

発電所は2025年1月の商業運転開始を目指して建設が進められており、発電したグリーン電力は燃料提供元であるホクト社に15年間供給される計画です。これにより、多気町の廃棄物処理業務の負担を軽減しつつ、地域内で資源とエネルギーが循環するモデル(インターナル・カーボンサーキュレーション)が実現します。FITによる固定買取に頼らず事業者間契約で成立する完全非FIT型の電源構築は、日本の再エネ推進において先進的な取り組みであり、国民負担を増やさない新しいグリーン電力ビジネスとして注目されています。

バイオマス発電の最適化を支援するBMエコモのソリューション

KPPグループのBMエコモは、バイオマス燃料の供給だけでなく発電所の運用最適化を支援する独自ソリューションも提供しています。その中核となるのがBMエコモが開発したIoTプラットフォーム「BMecomo」です。BMecomoはバイオマス発電所から取得されるあらゆる運転データを収集・解析し、発電プラントが抱える課題解決を支援する総合情報プラットフォームとして機能します。例えば、クラウド上の遠隔監視ダッシュボードによる徹底した見える化、過去データとAI解析を活用した稼働率向上(予兆検知によるトラブル未然防止)、さらに設備データに基づく故障予知や点検計画の最適化など、多角的な機能でプラント運営の効率化・安定化を実現します。

実際にBMエコモは、KPPグループ顧客の工場から排出される木質廃棄物や飲料製造副産物などを燃料として調達しつつ、このBMecomoプラットフォームを活用して発電プラントの長寿命化・ノウハウ継承を支援しています。データに基づく運用最適化により、数十年にわたる安定的なベース電源供給を目指せる点が大きな強みです。燃料調達から設備運用まで一貫してサポートすることで、KPPグループはバイオマス発電所の安定稼働と脱炭素電源の最大活用に貢献しています。バイオマス発電の新規導入や運用改善をご検討中の企業担当者の方は、ぜひBMエコモの紹介ページ(IoTソリューションの詳細)もご覧ください。

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