再資源化事業等高度化法とは?概要と施行時期、企業の対応策まとめ

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2024年5月に成立した「再資源化事業等高度化法」は、日本の資源循環政策における大きな転換点となる法律です。
国内外で循環経済への移行が加速する中、再生資源の質と量を安定的に確保し、産業競争力の強化や温室効果ガス削減につなげることを目的としています。
本法律は令和7年(2025年)秋に本格施行を迎える予定であり、一般の事業者にとっても廃棄物管理や資源循環への取り組みが一層求められる局面を迎えています。

本記事では、再資源化事業等高度化法の概要や制定の背景、具体的な施策内容、そして事業者が取るべき対応策についてわかりやすく整理します。
さらに、KPPが提供する「クローズドリサイクル」の仕組みや事例を紹介し、企業が循環型社会への移行を実現するための具体的な解決策を提示します。
法対応に加え、持続可能なビジネスモデルの確立を目指す企業にとって、本記事が次の一手を考える参考になれば幸いです。

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目次

再資源化事業等高度化法とは


「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(通称:再資源化事業等高度化法)は、日本の資源循環産業の発展を目的に2024年5月に成立した新しい法律です。
高度なリサイクル技術・事業の促進によって、製造業者等が必要とする質・量の再生資源を確保し、関連する温室効果ガス排出削減を図る狙いがあります。
本法律は令和7年(2025年)秋に本格施行予定で、公布から約1年半後の2025年11月までに全面施行される見込みです。
まずは法律の概要と制定の背景、そして施行スケジュールを押さえましょう。

概要

再資源化事業等高度化法は、国内の資源循環を質・量の両面で高度化し、産業競争力の強化と温室効果ガス削減につなげることを目的としています。
従来の廃棄物処理法の特例措置などを含み、再資源化事業の効率的な実施や生産性向上によって循環型社会を推進する法律です。
2024年5月29日に公布され、全53条から成るこの法律により、廃棄物処理業者や製造事業者等に新たな役割と機会が生まれました。

制定の背景

本法が制定された背景には、国内外の循環経済推進の動きがあります。
欧州では新車製造に一定割合の再生プラスチック利用を義務付ける規制案が2023年に発表されるなど、再生材活用の流れが加速しています。
日本もこの流れに遅れないよう、2024年8月に第5次循環型社会形成推進基本計画を策定し、循環経済への移行を国家戦略として明確化しました。
また太陽光発電パネルの大量廃棄が今後見込まれるなど、新たな廃棄物課題への対策も求められており、こうした状況を踏まえて高度な再資源化を促進する本法律が策定されたのです。

施行時期・スケジュール

再資源化事業等高度化法は段階的に施行されます。
まず一部の規定が令和7年2月1日付で施行されました。
具体的には、第2章の基本方針策定や第3章第1節の廃棄物処分業者による促進策の条項などが先行施行されています。
残りの規定については「公布の日から起算して1年6か月以内の政令で定める日」(=2025年11月まで)に施行すると定められており、2025年秋頃に本格施行となる予定です。
したがって、一般事業者にとっては2025年秋までに対応を整えることが求められます。

再資源化事業等高度化法の主な措置


本法律の施行によって導入・強化される主な施策は3つあります。
1つ目が環境大臣による基本方針の策定、2つ目が業界全体の底上げを狙った再資源化の促進策、そして3つ目が先進的取り組みを奨励する認定制度(高度化事業の認定)です。
それぞれの施策内容を順に見ていきましょう。

基本方針の策定

再資源化事業等高度化法では、環境大臣が本法律の施行にあたり基本的な方針を定めることとされています。
この基本方針には、再資源化事業を効率的に実施する方法や、生産性向上のための施策、さらに温室効果ガス排出削減の具体策などが盛り込まれます。
また、廃棄物処分量に占める再資源化すべき割合の目標値も示されており、資源循環産業全体の指針となるものです。
基本方針は既に2025年2月1日付で策定・施行されており(令和7年環境省告示第2号)、今後この方針に沿って各主体の取り組みが進められます。

再資源化の促進(業界の底上げ)

廃棄物処理・リサイクル業界全体の底上げ(底上げ策)として、いくつかの措置が講じられます。
環境省は廃棄物処分業者に対し再資源化の取組指針となる判断基準を策定し、高度化に向けた努力目標を示しました。
さらに、前年度の処分量が多い一部の大規模処分業者(※年間処理量1万トン以上等)は「特定産業廃棄物処分業者」に指定され、毎年の処理量および再資源化量を国へ報告することが義務付けられました(令和7年11月までに施行予定の規定)。

国はこれらの情報を集約して公表し、資源循環に関する情報基盤を整備することで、製造業者と廃棄物処理業者のマッチング促進など業界全体の活性化を図ります。
また、報告結果を分析し、再資源化の実施状況が著しく不十分な業者には環境大臣が勧告を行い、改善命令を発することも可能となりました(努力不足の事業者への是正措置)。
これらの措置により、リサイクル業界の平均的な水準引き上げ(底上げ)が期待されています。

認定制度による再資源化の促進(先進事業の引き上げ)

高度なリサイクル事業を後押しするための認定制度も創設されました。
環境大臣の認定を受けた高度化事業計画に基づく範囲内であれば、従来必要だった廃棄物処理法上の許可を受けずに、廃棄物の収集運搬や処分、処理施設の設置等を行うことが可能になります。
これは国による一括認定により地方自治体ごとの許認可を代替する仕組みで、先進的なリサイクル事業の迅速な展開を狙ったものです。
認定の対象となる事業は大きく3類型あり、例えば以下のようなケースが想定されています。

高度再資源化事業(第11条)

複数地域にまたがって特定の廃棄物を広域回収し、高品質な再生資源を製造業者に供給する事業(例:使用済みPETボトルを回収して再びボトルを製造する水平リサイクル事業など)。
認定を受ければ必要に応じ全国から廃棄物を集めて質の高いリサイクルを実施できます。

高度分離・回収事業(第16条)

最先端の技術を用いて廃棄物から有用物を分離・資源化する事業(例:使用済み太陽光パネルを100%リサイクルする事業、風力発電ブレードの分解リサイクルなど)。
高度なリサイクル技術は国内で事例が少なく許可審査に時間を要しがちですが、認定により迅速な事業化が可能になります。

再資源化工程の高度化(第20条)

既存の廃棄物処理施設において、省エネ・高効率な設備や温室効果ガス排出削減に資する設備を導入する事業。
認定を受けた計画に従って設備導入を行う場合、当該設備について廃棄物処理法上の許可を受けたものとみなされ、先進的設備への更新が促進されます。

認定制度により、これら先進的リサイクル事業への参入ハードルが下がり、廃棄物処理業以外の企業も新たなリサイクルビジネスに乗り出すことが期待されています。
さらに現在、認定事業者が行う設備投資の一定割合を法人税控除する税制優遇措置も検討されており、認定取得によるメリットは大きいと言えます。

再資源化製品に認定されたRPF

本法律に関連して、「再資源化製品」として新たに注目されているものにRPF燃料があります。
RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)とは、廃プラスチック類や古紙などマテリアルリサイクルが困難な産業廃棄物を原料とした高品位の固形燃料です。
分別され出所が明確な廃棄物を原料に使うため品質が安定しており、石炭・コークス等の化石燃料代替として製紙会社・鉄鋼会社・石灰メーカーなど様々な産業で利用されています。

環境省が2025年1月に発出した通知の中で、化石燃料代替となる燃料化は「再資源化」に該当すると明示され、直接燃やして熱回収する廃棄物発電は「製品」に当たらないものの、RPFのように燃料という形で製品化する行為は再資源化に含むと位置付けられました。
つまりRPF製造は本法において正式にリサイクルの一種と認められたことになります。
このような廃棄物由来燃料の活用(サーマルリサイクル)により、廃棄物削減とエネルギー有効利用の両立が期待できます。

また、例えば木材廃棄物を燃料として発電や熱供給に充てる木質バイオマス発電は、廃棄物の有効活用とカーボンニュートラルなエネルギー創出を実現する手法です。
木質バイオマス発電の詳しくは別記事「サーマルリサイクルとバイオマス発電とは?」もご参照ください。

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廃棄物排出事業者に求められる対応


再資源化事業等高度化法の施行により、一般企業(廃棄物排出事業者)にも今後対応が求められます。
本章では、廃棄物を出す事業者が取り組むべき具体策として、
(1)廃棄物の分別徹底と再資源化推進、(2)製品設計の見直し(設計段階でのリサイクル考慮)、(3)再生資材・部品の積極活用、(4)高度なリサイクル事業への協力の4点を解説します。
単なる法遵守にとどまらず、自社の環境戦略強化につなげる視点で取り組みましょう。

分別と再資源化の促進

まず基本となるのが、自社から排出される廃棄物の分別徹底と再資源化の促進です。
事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を適切に分別して排出し、再資源化を実施するよう努めなければならないと法律上も定められています。
この原則を踏まえ、企業は社内の廃棄物管理体制を見直し、紙・プラスチック・金属などリサイクル可能な資源はできる限り他の廃棄物と分けて回収する仕組みを強化しましょう。

廃棄物の分別回収率を高めることで、埋立処分量の削減や処理コストの低減にもつながり、結果的に環境負荷と経費の両面でメリットがあります。
各自治体の分別ルールに従いつつ、自社の廃棄物が適切にリサイクル工程へ回るよう社内啓発を徹底することが重要です。

製品設計の見直し

次に、製品や包装の設計段階から再資源化しやすい工夫をすることも企業に求められています。
いわゆる環境配慮設計(エコデザイン)を取り入れることで、使用後の廃棄物そのものを減量化・資源化しやすくする効果があります。
具体的には、製品を可能な限り単一素材で作る、分解しやすい構造にする、耐久性を高めて長寿命化する、リサイクル材を部品に用いる、といった手法が考えられます。

政府も今後、企業が努めるべきエコデザインに関する指針を策定し、基準に適合した製品を認定する仕組みを設ける方向です。
例えば認定製品は国が率先調達する(グリーン購入法の拡充)といった施策も検討されています。
将来的に製品設計への環境要件が強まる可能性も高いため、今のうちから製品設計段階での見直しを進めておくことで、法規制への先行対応と環境イメージ向上の双方に寄与するでしょう。

再生材・再生部品の利用促進

再生資源や再生部品の積極的な利用も重要な対応策です。
自社製品の原材料に再生プラスチックや再生紙、リサイクル金属などを採用することは、循環型社会の形成に直接貢献します。
実際、本法律の背景には製造業者等が必要とする再生材を確実に供給するという目的があり、企業側も再生材の需要を創出する役割を期待されています。
欧州では先述のように新車への再生プラ義務化案が出されるなど、製品へのリサイクル材組み込みが世界的潮流です。

日本国内でも、例えばプラスチック資源循環促進法の下で再生プラ利用拡大が図られており、環境省も再生部品・再生資源の利用拡大と安定供給、品質に関する共通認識の醸成を今後の施策に掲げています。
自社で率先して再生材を採用することは、調達リスク低減やブランド価値向上にもつながります。
仕入先や業界団体と連携し、使えるリサイクル素材を積極的に製品・包装に取り入れていきましょう。

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高度な再資源化事業への協力

最後に、高度なリサイクル事業への協力・参画も視野に入れるべき対応です。
自社では処理できない廃棄物であっても、先進的なリサイクル技術や事業とマッチングすることで、資源循環に貢献できる場合があります。
環境省も「動脈」(製造業等)と「静脈」(廃棄物処理業)の連携強化を重要視しており、データ連携によるトレーサビリティ確保や再生材利用目標の共有など、主体間の協働を促しています。
具体的には、自社が排出する使用済み製品や副産物を、先進リサイクル事業者に提供して原材料として再利用してもらう取り組みが考えられます。

高度化法の認定制度を活用したプロジェクトや、業界横断のリサイクルプラットフォームに参画することで、自社の廃棄物を資源循環ビジネスに乗せることも可能です。
例えばKPPが提案するクローズドリサイクルのように、使用後の自社製品を回収して再び自社製品に戻すスキームに協力することも一つの方法です。
こうした協働によって、自社では難しい高度な再資源化を間接的に実現し、企業全体として脱炭素・循環型社会への貢献度を高めることができます。

KPPが提供する再資源化ソリューション「クローズドリサイクル」のご紹介


自社の廃棄物リサイクルを推進する具体策として、KPPが展開しているクローズドリサイクルソリューションがあります。
クローズドリサイクルとは、事業者が排出した使用済み資源を回収・再原料化し、再び同じ事業者が製品として利用する循環スキームのことです。
廃棄物を廃棄物のまま捨てず資源として回収・再利用することで、廃棄物量や温室効果ガス排出量の削減が可能になり、さらにリサイクルの流れが可視化されるため企業にとって「つくる責任・つかう責任」を果たすことにもつながります。

クローズドリサイクルについての詳細はこちら
クローズドリサイクルとはなにか | 環境対応をお客様に合わせてご提案

お客様から排出された廃棄物を、再度お客様が使用する製品に戻し再納入する、クローズドリサイクルとしておこなっています。...

KPPではこのクローズドリサイクルの仕組みを様々な企業向けに構築してきた実績があり、複数の素材で導入事例があります。
例えばプラスチックフィルム製品を対象としたクローズドリサイクル事例や、製品出荷時の段ボールを回収して再び段ボール箱に生まれ変わらせた事例など、業種規模を問わず成功例が蓄積されています。
ある食品メーカーではグループ全国5工場でクローズドリサイクルを実施し、年間約2,000トンもの資材を再生利用する仕組みを構築しました。

この取り組みでは、既存の廃品回収ルートを活用しつつ安定的に古紙を循環利用できる点が評価され、市況に左右されずリサイクルシステムを維持できる仕組みが実現しています。
クローズドリサイクルは追加設備投資なしで開始できる場合もあるため、自社の廃棄物削減と循環利用に取り組みたい企業にとって有効なソリューションと言えるでしょう。

実際の導入事例や効果について詳しく知りたい方は、KPPが提供する「クローズドリサイクル事例集」(※様々な事例をまとめた資料)を参考にしてください。
資料は無料でダウンロード可能ですので、自社での循環型リサイクル構築のヒントとしてぜひご覧ください。

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再資源化事業等高度化法まとめ

再資源化事業等高度化法の概要とポイント、そして企業側で取り組むべき対応策について解説しました。
令和7年秋の本格施行が迫る中、企業には廃棄物の分別徹底やリサイクル推進、製品設計の改善、再生材の活用、先進リサイクル事業への協力など包括的な対応が求められます。
これらの施策は単に規制対応というだけでなく、2050年カーボンニュートラルに向けたビジネスモデル転換の機会とも捉えられます。

本法律の施行をきっかけに、自社の廃棄物管理や資源循環戦略を見直し、循環型社会への移行を加速させましょう。
KPPのクローズドリサイクルなど信頼できるパートナーの協力も得ながら、法対応と企業価値向上を両立する持続可能な取り組みを進めていくことが重要です。

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