シートだけじゃない!立体物としての紙化 | 紙由来の立体成型品の事例をご紹介
紙素材はパッケージや包装の置き換えをおこなう際、軟包装やシートだけでなく立体成形品にも対応が可能です。
成型機を使用することでより複雑な形に作ることができます。パルプを原料として作られた立体形状の成型品はパルプ成形品と呼ばれ、金型を使用してつくられます。
今回は紙化の定義、立体成形品の特徴や具体例を紹介していきます。
なぜ脱プラスチックなのか?
プラスチックは性質の幅が広く大量生産がしやすいため、さまざまな箇所に使われています。
長期間、繰り返し使う製品にプラスチックは最適です。しかし短期間で一度しか使わない、廃棄前提のプラスチック製品は、シングルユースプラスチック・使い捨てプラスチックと呼ばれます。化石資源の消費量が多い一方、使用期間が短いため、プラスチックの利点である長期の利用が活かされません。
また、素材としてPE・PP・PSといった密度の低い製品が使われているため、正しく廃棄されなかった場合に河川や海洋に浮遊・漂着しやすくなります。その後は年月をかけてマイクロプラスチックへと変化していきます。
脱プラスチックには、これらの一度きりの使用にとどまるプラスチック使用量・廃棄量を減らすことが重要となります。素材におけるプラスチックの使用量を用途に見合った形で減らすことで化石資源の消費を抑え、再生資源もしくは再生可能資源由来の原材料使用を増やすことでCO2の排出量を減少します。
シングルユースからプラスチックを減らす
日本では2030年までに使い捨てプラスチックを累積で25%排出抑制することを目指しています。
フォークやスプーン、ヘアブラシや衣服用ハンガーは特定プラスチック使用製品とされ、使用の合理化が図られています。
紙を使用する意義
紙化という言葉には、紙素材が混合された素材を使用することも含まれます。
木材を原料にパルプを製造し、そのなかのセルロースの繊維を絡み合わせ、薄い層にしたものを紙と呼びます。
紙の原料であるパルプを使用した成形品は、植物繊維を主原料にした製品であるため、基本的には生分解性の特徴があります。生育過程で大気中のCO2を取り込んでいるため、廃棄時に焼却処理をおこなっても大気中のCO2濃度を上昇させないというカーボンニュートラルの考えに適応します。
また、古紙としてリサイクルも可能であるため、使用後には資源として利用できます。
紙の配合率を50%以上有する樹脂を使用した場合も紙化と謳えますが、リサイクルという点では注意が必要となります。もちろん植物繊維を主原料にし、セルロースの持つ性質で結合まで可能になる、紙100%の製品も存在します。
紙の多様性を知る
紙は立体成形も可能です。
1枚のシートや箱のような組み立て製品だけでなく、成型機を使用し立体形状の製品もつくることができます。
また、表面加工を施すことで撥水、耐油などの機能性が付与されます。
ほかにもラミネートやコーティングによって手触りや色も変えることが可能です。
紙のもととなるパルプを使用した成形加工
代表的なパルプ成形製品にパルプモールドが挙げられます。
パルプモールド
水の中に古紙またはバージンパルプを入れてかき混ぜ、どろどろの原料になるまで溶解します。
その後、金型に流し込み成型し、水分を蒸発させ形を固定します。これがパルプモールドの加工製法です。
乾式パルプモールド
金型で形を整えたのち乾燥機にて乾燥をおこなうと、表面がざらざらした表面をもち緩衝性がある製品が完成します。
湿式パルプモールド
金型の中で形を固めながらそのまま乾燥させた場合、表面が滑らかな製品が完成します。
パルプ射出成形
パルプとでんぷんを混ぜてペレット状にしたものを金型に射出する加工製法も存在します。
射出成型によってより複雑な形状加工が可能となり、より強度の強い製品が完成します。
パルプ発泡成形
発泡材を配合したパルプ原料を金型内に充填し加熱することで、気泡が充満した成形品が完成します。
他のパルプ成形品に比べ軽量になること、緩衝性が高まることが特徴です。
紙積層成形
シート状の紙素材を複数層に積み重ね、加熱や圧着をおこない硬化させます。
積層された紙から余分な個所を切断することで、立体成型成形品が完成します。
紙ファインプレス
1枚の紙素材を金型で挟み、プレス機械で加熱・加圧する成形品です。
素材となる紙には罫線を施しているため、折りたたみながら立体成形品が完成します。
パルプが使用されている製品
三次元形状が可能であり、プラスチックに代替ができる製品として幅広く活用できます。
例としてたまごのパックや果物のケース、製品の固定をおこなう緩衝材などとして使用されています。成形法によっては、よりこまかな形状に対応できます。
まとめ
紙化への変更はシートだけでなく、立体成型や他素材との混合をおこなうことで射出成形を可能にした厚みのある製品も可能となります。紙配合率の変化により強度の追加も可能です。
紙化として置き換えられた製品としては、馴染みのあるストローや紙袋以外にも食品や一用品・医薬品といった生活者の手に渡る商品・製品のパッケージや緩衝材、打ち上げ花火の花火玉を包む容器など、一度きりの使用または回収が難しいものなどに適しています。
参考文献
参照:環境省
プラスチック資源循環「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」(参照:2023/11/09)
参照:府川伊三郎. (2020). 海洋マイクロプラスチック問題とプラスチック循環経済.
日本エネルギー学会機関誌えねるみくす, 99(1), 2-9.
参照:浅山良行.見門秀幸.田平久美(2002)「深絞り成型用原紙『ファインプレス』の開発」
『紙パ技協誌』56巻,1号,P105-111
参照:松坂圭祐(2019)「パルプ射出成形における成形プロセスの解明と最適化」
『Doctoral dissertation, 東京大学』
参照:横井秀俊.松坂圭祐.丸野満義(2010)「パルプ射出成形の研究 第1報-バーフロー金型による流動特性の計測と成形品特性の評価-」
『成形加工』22巻11号P 645-651
参照:大宝工業株式会社
PIM技術:パルプ射出成形「パルプ射出成型説明資料」(参照:2023/11/09)
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