パルプモールドとは?環境に優しい紙製梱包材のメリット・デメリットと他素材との比較


最終更新日:2025/11/25
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
パルプモールドとは?環境に優しい紙製梱包材のメリット・デメリットと他素材との比較

企業に脱プラスチックが求められる現在、持続可能な包装資材への転換は「環境配慮の宣言」から「事業の必須要件」へと変わりつつあります。
特に、短期間で一度きりしか使われないシングルユースプラスチックは、化石資源を大量に消費する一方で、廃棄されるまでの利用期間が極めて短く、環境負荷の大きさが課題視されています。
素材として使用されるPE・PP・PSは比重が軽く、河川・海洋に流出すれば長い年月をかけてマイクロプラスチック化し、生態系への影響も深刻です。

こうした背景から、「用途に見合わない過剰なプラスチック」を削減し、再生資源もしくは再生可能資源へ切り替える動きが加速しています。
その中で、古紙を原料としたパルプモールドは、環境負荷低減と機能性の両立を図れる代替素材として再び注目を集めています。
紙でありながら立体形状を実現できるため、食品容器から家電・精密機器の緩衝材、日用品パッケージまで幅広い用途に対応でき、企業が“脱プラ”を実践する際の現実的な選択肢となりつつあります。

本記事では、パルプモールドの特徴、製造背景、メリット・デメリット、他素材との比較までを体系的に解説し、紙化の課題を解決できるパートナーとしてKPPがどのように支援できるのかを詳しく紹介します。

環境に優しいパッケージとは

脱プラスチックパッケージへ
環境に優しいパッケージとは

  • なぜ環境対応が求められているのか?
  • プラスチックごみの現状
  • プラスチックパッケージの例
  • 環境に配慮したパッケージ素材の例
環境に優しいパッケージとは

パルプモールドとは


パルプモールドとは、新聞紙や段ボールなどの古紙を主原料とした紙由来の成形品です。
パルプ(紙のもとになる植物繊維)を水に溶かし、専用の金型で立体的な形状に成形して乾燥させることで製造される紙でできた立体物になります。
素材は紙ですが、複雑な形状に対応でき、乾燥後はしっかりと硬さを保つため、プラスチック製品の代替となりうる梱包材です。

パルプモールドは古くから卵パックや果物トレーなどの食品容器、電化製品の緩衝材として利用されてきました。
近年では脱プラスチックの流れを受け、パルプモールドが再び脚光を浴びています。
特に家電製品や精密機器の梱包材、日用品・化粧品のパッケージ容器など、幅広い分野でプラスチックトレーに代わるサスティナブルな素材として採用が進んでいます。
軽量ながら衝撃を吸収する優れた緩衝性を持ち、製品の形状に合わせて自由な設計が可能な点も評価され、環境に優しいだけでなく実用的な梱包ソリューションとして活用が広がっています。

立体物を紙化する意義


プラスチックは便利な反面、使い捨てにされる包装では廃棄ごみとなり環境汚染や資源浪費を招きます。
このため国内外でシングルユースプラスチックの削減が推進され、日本でも2022年施行のプラスチック資源循環促進法の下でコンビニ各社や食品メーカーが2030年までに使い捨てプラ包装の半減目標を掲げるなど、脱プラスチックの取り組みが本格化しています。
そうした背景から、プラスチック製品を紙素材に置き換える紙化が注目されているのです。

紙を素材に使う意義は環境面で非常に大きいです。
紙の原料である木材は再生可能な資源であり、生育過程で大気中のCO2を吸収しています。
そのため紙製品を廃棄して焼却処分しても、炭素循環の観点で大気中のCO2濃度を増やさない(カーボンニュートラル)とされています。
また紙は自然界の微生物によって生分解されるため、万一廃棄物が土壌や海に流出しても最終的に自然に還ります。
さらに、使用後の紙製容器は古紙としてリサイクルが可能であり、資源を循環利用できる点も大きなメリットです。

加えて、紙素材の多様性にも注目すべきです。
紙というと平面的なシートや板紙を連想しがちですが、専用の成形技術を用いればパルプモールドのように立体形状の製品を作ることもできます。
紙は表面加工によって撥水性や耐油性などの機能を付与したり、ラミネート・コーティングで手触りや色彩を変えることも容易です。
つまり紙素材はプラスチックに比べて環境負荷が低いだけでなく、加工技術の工夫次第で用途の幅が広く、様々な製品への応用が可能なのです。

以上のように、立体物を紙化することは単なる素材置換に留まらず、企業の脱プラ目標の達成や環境配慮型ブランドイメージの向上にもつながる重要な取り組みです。
実際に最近では、多くの企業がプラスチック製の緩衝材や容器をパルプモールドに切り替える動きを見せています。

紙のもととなるパルプを使用した成形加工


パルプモールドの製造工程は紙を原料にした独特の成形技術です。
まず古紙や木材パルプを水でどろどろに溶かしてパルプ液を作り、これを金型に流し込みます。
金型には無数の小さな穴が開けられており、真空吸引によってパルプ繊維を金型表面に引き寄せながら水分を抜くことで、繊維が型の形状通りに絡み合った濡れた成形品が形成されます。

成形後、型から取り出した製品を加熱乾燥させ、水分を飛ばして形状を安定させます。
最後に必要に応じて表面を滑らかに整えたり、切断や印刷・コーティングなどの仕上げ加工を施して完成です。
成形後の乾燥・仕上げには乾式と湿式の2種類があり、乾式は表面がざらつく代わりに効率が良く、湿式は追加の加熱プレスで表面を滑らかに仕上げる手法です(その分コストは上がります)。
用途に応じて表面の質感や精密さを調整する成形方法が選択されています。

さらに近年では、パルプ射出成形(PIM)によって複雑で高強度な形状を作る試みや、パルプ発泡成形によって軽量でクッション性の高い部材を作る技術も登場し、紙素材で対応できるニーズが一段と広がっています。

パルプモールドのメリット


パルプモールドを梱包材として採用することには、以下のような多くのメリットがあります。

環境にやさしく持続可能(脱プラ・カーボンニュートラル)

パルプモールドの最大の利点は環境負荷の低さです。
原料に再生紙を使うため新たな石油資源の消費を削減でき、使用後も古紙として再利用できます。
土に埋めても微生物に分解され最終的に自然に還るうえ、焼却してもカーボンニュートラルでCO2増加に直結しません。
プラスチックに比べ廃棄時の環境リスクが圧倒的に小さい梱包材と言えます。
パルプモールドは基本的に紙と水だけで成形され、接着剤や有害な化学物質を使用しません。
そのため食品容器として使っても安全であり、使用後に焼却しても有毒ガスが発生しません。
最終的には土に還る素材なので、廃棄後の処理や環境汚染リスクの面でも安心して利用できます。

優れた緩衝性能と軽量性

パルプモールドは立体形状と適切な設計により高いクッション性を発揮します。
衝撃を受けても繊維同士がずれて衝撃を吸収し、製品をしっかり保護できます。
比較的軽量で、取り扱いや輸送時の負担も大きくありません。

自由な形状設計・デザイン性

パルプモールドは紙でありながら自在な形状を作り出せるため、製品に合わせた専用トレーや仕切りを成形できます。
複雑な凹凸形状や曲面を実現できるので、製品をぴったり固定する包装が可能です。
さらに金型を工夫すれば表面にロゴマークや模様を入れることもでき、着色やコーティングによってブランドイメージに沿った質感や色合いを表現することもできます。
つまり、梱包材自体をブランディングの一部として演出できる点もメリットです。
環境に配慮しつつ、他社とはひと味違うオリジナリティあふれるパッケージングを実現できます。

パルプモールドのデメリット


一方で、パルプモールドにはいくつか留意すべきデメリットも存在します。

紙粉が出る

パルプモールドは紙繊維を固めたものなので、製品によっては表面から細かな紙粉(紙の繊維粉)が出る場合があります。
梱包材として使用する際に、この紙粉が製品に付着したり周囲を汚したりする懸念があります。
特にクリーンさが求められる電子部品や精密機器では紙粉対策が課題となることがあります。
ただし、成形後に表面処理を施すことで粉っぽさを抑えたり、製品を個別包装して粉が付着しないようにする対策も可能です。

水分に弱い

紙製である以上、パルプモールドは水濡れや高湿度に弱く、湿気を含むと柔らかくなったり形状を維持できなくなったりします。
ただし、防水コーティング等の加工を施すことである程度の耐水性を持たせることは可能です。

金型の初期コストが高い

パルプモールド製品を新たに作る場合、その形状に合わせた専用の金型を製作する必要があります。
この初期費用(設計費・金型加工費)は決して小さくなく、プラスチック真空成形用の金型と比べても数倍に及ぶことがあります。
生産数量が少ないと金型費用を回収しづらく、採算が合わない可能性があります。
そのためパルプモールドは基本的に大量生産向きであり、小ロットでの導入にはハードルがあります。
導入を検討する際は、事前に必要な金型費用と見込まれる生産数量をしっかり試算することが重要です。

以上のように、パルプモールドには素材特有の弱点もあります。
しかし、これらのデメリットは用途や設計の工夫でカバーできる場合も多く、メリットと秤にかけて採用を判断するとよいでしょう。

パルプモールドと他梱包資材の比較(段ボール、発泡スチロール)


現在使われている代表的な梱包資材である段ボールや発泡スチロールと、パルプモールドの特徴を比較してみます。

段ボールとの比較

段ボール箱は安価で強度も高くリサイクルしやすい紙製梱包材ですが、平面的な板紙を折り組み立てる構造上、製品の細かな形状にぴったり合わせて保護することは苦手です。
梱包の際は箱の中に別途緩衝材(紙緩衝材やプチプチ等)を入れて衝撃を和らげる必要がある場合が多いでしょう。

これに対してパルプモールドは型に合わせて立体成形されるため、製品形状にフィットしたトレーやホルダーを作ることができます。
例えば家電製品の箱を開けると中にある成形トレーは、従来は発泡スチロールやプラスチック製だったものが、最近ではパルプモールド製に置き換わってきています。
段ボールと同じ紙素材なので一緒にリサイクルできる点も好都合です。

発泡スチロールとの比較

発泡スチロール(EPS)は発泡ポリスチレン樹脂からなる白い緩衝フォームで、軽量でクッション性に優れ、長らく家電や精密機器の梱包材として定番でした。
利点は非常に軽く厚みの割に高い衝撃吸収力を持ち、低コストで成形できる点です。
一方で欠点として、石油由来プラスチックであり環境負荷が大きいことが挙げられます。
廃棄時には容積が嵩張り処理が厄介な上、リサイクルも難しく、多くは焼却処分されています。

パルプモールドは発泡スチロールに比べて重量は増すものの、適切な設計を施せば遜色ない保護性能を発揮できます。
発泡スチロールからパルプモールドへの置き換えは、廃棄後の環境負荷低減に直結します。
実際、近年は多くのメーカーが製品包装から発泡スチロール製の緩衝材を廃止し、順次パルプモールドへ移行しています。
パルプモールドは使用後の古紙回収も容易で環境負荷が低いため、企業にとって環境責任を果たしつつ消費者へのアピールにもつながる包装材と言えます。

パルプモールドは脱プラスチック時代の有力な解決策となり得る

パルプモールドは紙由来で環境に優しい梱包資材として注目されており、脱プラスチック時代の有力な解決策となり得ます。

もちろん、耐水性やコストなどパルプモールドにも課題はありますが、当社KPPではそうした課題を踏まえた紙化ソリューションのご提案が可能です。
環境対応型パッケージへの切り替えをご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

環境配慮型パッケージについて詳しく知りたい方は、「環境にやさしいパッケージ」資料をご参照ください。
また、紙素材への置き換え事例やポイントをまとめた「紙化」資料もご用意しておりますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

環境に優しいパッケージとは

脱プラスチックパッケージへ
環境に優しいパッケージとは

  • なぜ環境対応が求められているのか?
  • プラスチックごみの現状
  • プラスチックパッケージの例
  • 環境に配慮したパッケージ素材の例
環境に優しいパッケージとは
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
メルマガ登録はこちら

関連資料はこちら

SHIFT ONについて、
もっと詳しく知りたい方へ

SHIFT ONのソリューションに
関するお問い合わせや、
資料のダウンロードはこちらで承ります。

お問い合わせ

ソリューションに関する
ご質問やご相談など、
お気軽にお問い合わせください。

問い合わせる

お役立ち資料

事業の最適化に役立つ
ホワイトペーパーが、
無料でダウンロードいただけます。

資料ダウンロード

持続可能な社会や事業に向けた行動変容に対して意識を「シフト」させるための取り組みを提案します。

SHIFT ONについて

紙製品に関する意外と知らない用語が詰まってます!
ぜひお役立ち用語集、ご活用ください。

用語集