サステナブル素材とは?素材一覧や企業事例、具体的なソリューションまで徹底解説
最終更新日:2025/11/28

いま、リサイクル品・化学薬品不使用の材料から作られた「サステナブル素材」が注目を集めています。
2015年に採択された「SDGs」により、国や業種を問わず、地球環境へ配慮した取り組みが重視されるようになりました。
日本国内でも、国・自治体・企業を問わず、多様な取り組みが進められていることをご存知の方もいらっしゃるはずです。
しかし「サステナブル」に対して「エコ」というイメージしか浮かばない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、サステナブル素材が注目される背景・サステナブルの概要・事例などについてご紹介します。
ぜひ今後のSDGs対応および環境問題対応にお役立てください。
なぜ「サステナブル」が重要なのか
昨今では、サステナブルを掲げ、環境問題に向き合っていることをアピールする企業も多くなっています。
これは、持続可能な世界を実現するために「SDGs」(Sustainable Development Goals)が制定され、2030年までに達成すべき項目が明らかになったことが関係しています。
SDGsは、多種多様な課題を解決し、持続可能な開発・社会を実現するために制定されたものです。
<SDGs制定の背景にある主な課題>
- 健康に害をおよぼすさまざまな問題が、地球規模で起きている(病気・心の健康・麻薬・保健サービスの不平等など)
- 環境問題が悪化し、天然資源が減少したり生物の多様性が失われたりしている
- 人々の間で不平等や格差が増えており、長期的な事業継続が難しくなっている
上記の問題に対処するため、世界中でサステナブルに関連する取り組みが注目され、改善のための活動が広がっています。
使用している素材をサステナブルなものへ変えることで「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「12.つくる責任 つかう責任」「14.海の豊かさを守ろう」などの目標達成に貢献できるでしょう。
とはいえ、なかには「自社がわざわざ取り組まなくても」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし現在では「サステナブルへの対応をしない企業は、2030年には世界で仕事ができなくなる」とまでいわれています。
これは、新たなビジネスチャンスの創出が遅れる・優秀な人材の確保が難しくなるといった要因により、各国の競合他社と差が開くためでもあります。
よって世界規模の課題解決、および自社・社会の存続に関して、サステナブルを意識することが非常に重要になっているのです。
サステナブル素材とは何か?環境と調和する次世代の選択肢
サステナブル素材とは、直訳すれば「持続可能な材料」を意味し、環境や社会に配慮して生産・利用・廃棄される素材全般を指します。
具体的には、地球環境への負荷が少ない方法で生産されたり、資源の枯渇リスクが低い再生可能資源から作られたりするものをいいます。
この概念が注目される背景には、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)や、世界的な気候変動への危機意識があります。
特に、経済産業省や環境省などの公的機関も、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に向けた素材転換の重要性を強調しており、企業活動の根幹をなす要素としてサステナブル素材とは切り離せない関係になっています。
資源の有限性、廃棄物問題、そして製造過程における二酸化炭素排出量の多さといった従来の素材が抱えていた課題に対し、サステナブル素材は根本的な解決策を提供します。
サステナブル素材の定義と注目される背景
サステナブル素材の定義は広範にわたりますが、主に以下の3つの要素のいずれかを満たすものを指します。
- 再生可能資源の利用: 植物など、自然界で比較的短期間に再生・補充が可能なバイオマス資源を原料としていること。
- 資源の再利用・循環: 廃棄物を原料として利用し、資源の循環を促進するリサイクル素材であること。
- 環境負荷の最小化: 生産、加工、輸送、廃棄の各段階で、従来の素材よりもエネルギー消費や温室効果ガス排出が少ないこと。
これらの条件を満たすサステナブル素材とは、単なる環境対策ではなく、サプライチェーン全体のレジリエンス(強靭性)を高め、企業の持続的な成長を支える戦略的な要素として、国際的に認識されています。
サステナブル素材の具体的な種類:一覧とそれぞれの特徴
サステナブル素材は多岐にわたり、それぞれが異なる特徴と環境メリットを持っています。
ここでは、代表的な素材を一覧形式で紹介し、その後に詳細を解説します。
| サステナブル素材の種類 | 原料・特徴 | 主な活用分野 | 環境面での主なメリット |
|---|---|---|---|
| バイオマスプラスチック | 植物由来のデンプンや糖など。 分解性を持つものもある。 |
食品容器、衣料品、自動車部品 | 化石燃料の使用量削減、CO2排出量削減 |
| リサイクルポリエステル | 使用済みPETボトルなどを再利用。 | ファッション、アウトドア用品、カーペット | 廃棄物削減、新規石油資源の節約 |
| オーガニックコットン | 3年以上農薬や化学肥料を使用していない農地で栽培。 | Tシャツ、タオル、ベビー用品 | 農地・土壌汚染の防止、水の保全 |
| 竹(バンブー) | 成長速度が速く、短期間で収穫可能な天然資源。 | 建築材料、食器、繊維製品 | 森林伐採の抑制、CO2吸収力の高さ |
| 再生セルロース繊維 | 木材パルプなどを原料に、環境負荷の低い製法で生産。 | 高級衣料品(テンセルなど)、寝具 | 資源循環、水の再利用 |

サステナブル素材の普及と未来:サステナブル素材とは持続可能性を追求する道
サステナブル素材の採用は、環境面だけでなく、企業の経済活動にも大きな影響を与えています。
ここでは、企業がサステナブル素材活用のメリットを享受する方法と、普及における具体的なデメリット・課題について解説します。
サステナブル素材活用のメリット:企業と消費者が享受する恩恵
サステナブル素材を活用することは、単なる環境貢献活動に留まりません。
企業価値の向上、新たな市場の創出、そして消費者からの信頼獲得といった、多角的なメリットを生み出します。
環境負荷の低減と資源循環の促進
サステナブル素材活用のメリットの中で、最も直接的な効果は環境負荷の低減です。
例えば、再生ポリエステルを導入することで、新規石油資源の採掘を避け、製造工程でのエネルギー消費を最大で40%以上削減できるという具体的なデータがあります。
また、生分解性素材やリサイクル可能な素材を使用することで、製品のライフサイクル全体での廃棄物を減らし、資源循環の促進に貢献します。
これは、将来的な資源価格の変動リスクを回避し、持続可能なサプライチェーンを構築する上で不可欠な取り組みです。
競争優位性の確保とブランディング効果
現代の消費者は、商品を選ぶ際に環境や社会への配慮を重視する傾向が強まっています。
経済産業省の調査でも、特に若い世代で「エシカル消費」への関心が高まっていることが示されています。
サステナブル素材を活用し、その取り組みを明確に発信することは、競合他社との差別化を図り、企業やブランドのイメージ向上に直結します。
例えば、リサイクル素材を積極的に使用するアパレル企業は、環境意識の高い消費者からの支持を集め、市場での競争優位性を確立しています。
サステナブル素材とは、消費者の共感を呼ぶ強力なマーケティングツールなのです。
サステナブル素材活用のデメリット・課題:導入と普及の障壁
サステナブル素材の導入は理想的ですが、現実的な課題も存在します。
これらのデメリット・課題を理解し、対策を講じることが、素材の本格的な普及には不可欠です。
コストと生産効率の課題
サステナブル素材活用のデメリット・課題の一つとして、多くの場合、従来の素材に比べてコストが高くなる点が挙げられます。
特に、新規技術を用いたバイオマス素材や、高度な選別・加工が必要なリサイクル素材は、初期投資や生産コストが割高になる傾向があります。
これは、生産量がまだ少ないことによるスケールメリットの欠如や、高度な技術開発費が上乗せされるためです。
しかし、各国政府による補助金制度や、大量導入によるコストダウンの取り組みも進んでおり、将来的にはこの価格差は縮小していくと予測されています。
技術開発とサプライチェーンの確立
もう一つの大きなデメリット・課題は、素材の品質を保ちながら、安定した供給を確保するための技術開発とサプライチェーンの確立です。
例えば、耐久性や耐熱性など、特定の機能が従来の素材に劣るサステナブル素材も存在します。
このため、用途に応じた素材の改良や、安定的に高品質な原料を確保するサプライチェーンの構築が急務となっています。
公的機関や大学、企業が連携し、素材開発やリサイクルのインフラ整備を進めることで、これらの課題を克服し、サステナブル素材の普及を加速させることが期待されています。
いま社会で起きている「サステナブル」の動き
SDGsの制定も相まって、いま社会ではサステナブルに関連した動きが見られます。
そこで、日本国内で見られる主要な取り組みを3つご紹介します。
さまざまな企業・機関がすでに動き始めているため、ぜひこれからの対応を考える際の参考としてください。
「サステナブル」関連の事業ノウハウの提供
サステナブルおよびSDGsを促進するため、内閣府により「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」が開設されました。
プラットフォームを利用することで、新事業の創出を目指す分科会の開催・イベントへの参加・課題解決のノウハウを持ったほかの会員とのマッチングなどが可能になります。
サステナブルに関連した、さまざまな疑問・課題の解決に役立つでしょう。
また自社の持っているノウハウを活かしたいと考えたときにも、このプラットフォームは有効です。
どの組織がどのような悩みを持っているのかを検索できるため、連絡をとり、サステナブルに関連する取り組みへ貢献できます。
「サステナブル」の基準を満たした認定制度の確立
サステナブル推進に関するマークとして「レインフォレスト・アライアンス認証」というものがあります。
これは、野生生物の保護・土壌や水資源の保全・農薬規制・廃棄物管理・労働者の適切な給与体系など、サステナブルに関連した数々の基準を満たした農園に与えられる認証です。
日本では、このレインフォレスト・アライアンス認証を受けた商品を取り扱う企業6社が合同で「レインフォレスト・アライアンスコンソーシアム」を設立しました。
キリン株式会社や株式会社ローソンなどが参加するこの組織は、レインフォレスト・アライアンス認証商品を提供し続けること、こうした製品の価値を理解してもらうことを目標としています。
「サステナブル」推進のための助成金制度の確立
「サステナブルに対応したくても、資金繰りが厳しい」とお思いのご担当者さまもいらっしゃるのではないでしょうか。
そうしたときに頼れる制度として「サステナブルファイナンス」が設けられました。
金融庁によって「持続可能な経済社会システムを支えるインフラ」として設けられたこの仕組みは、さまざまな場所で利用できます。
たとえば東京都では、サステナブルファイナンスの一環として、補助金交付事業・金融機関と連携したサステナビリティ促進事業などを手がけています。
都道府県でこうした仕組みが整えられている場合もあり、公的な支援を期待できるでしょう。
詳しくはこちら:金融庁「サステナブルファイナンスの取組み」
企業におけるサステナブル素材の活用事例3つ
サステナブルとはなにか、また国内における取り組みの動向について、大まかに確認ご紹介させていただきました。
ここからは、実際にどの企業がどのような取り組みをしているのか、事例をご紹介します。
自社のアプローチ方法を探るため、参考にしてください。
Nike(ナイキ)|サステナブル素材を使ったスニーカー
シューズやウェア製品で有名な「Nike」(ナイキ)では、以下のような製品を扱っています。
<Nikeで取り扱いのある素材・製品>
- 二酸化炭素排出量を平均75%抑えた新素材「Nike Forward」
- 廃棄物を平均60%削減した「Nike Flyknit」
- 再生レザーを50%以上使用した「Nike Flyleather」
- リサイクル素材と再生可能エネルギーを使用した「Nike Air」
- オーガニックコットン製品
上記のとおり、サステナブル製品のラインナップが非常に豊富なメーカーといえます。
とくに人気のシューズも、サステナブル素材使用アイテムは、2023年5月時点で100種類に上っています。
サステナブルファッションについての詳細な説明はこちら

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ユニクロ|ファッションのリサイクル・リユース
ファッション製品で有名な「ユニクロ」では、生産時における環境への負荷低減にくわえ、以下の取り組みも進めています。
<ユニクロにおける取り組み例>
- 「瀬戸内オリーブ基金」を設置し、募金活動や、従業員によるボランティアを実施
- 全商品をリサイクル・リユースする「RE.UNIQLO」を実施
- 生産に関わる人々の人権を守るため「生産パートナー向けのコードオブコンダクト(遵守すべき基本事項)」を制定
- 難民雇用・安心できる社会の実現のための雇用機会提供
素材に関連する取り組みだけでなく、複数のアプローチを平行して行い、全体的にサステナブルを推進している企業です。
IKEA(イケア)|サステナブル素材を使ったインテリア
家具用品を扱う「IKEA」(イケア)でも、サステナブル素材を用いた商品ラインナップを展開しています。
たとえば、以下の素材を採用し、製品に活用していることが代表的です。
<IKEAで使用しているサステナブル素材>
- 木材……FSC®(森林管理協議会)認証材、またはリサイクル材
- 綿……リサイクルコットン、あるいは水と農薬の量を削減して栽培された綿
- プラスチック……使い捨てプラスチック製品を段階的に廃止し、再生可能素材またはリサイクル素材へシフト
- ウール……動物福祉に配慮した羊の飼育・土地の管理がされている調達先を厳選
「2030年までに、再生可能素材またはリサイクル素材のみを調達する」という目標を掲げ、精力的にサステナブル素材の活用を進めている企業のひとつといえます。
FSC認証®とはなにか、詳細な説明はこちら

FSC認証®とは?環境に配慮した製品例をご紹介
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当社での取り組み
SHIFT ONでは、お客様の製品特性やサプライチェーンに合わせて、多様なサステナブル素材の導入と活用をトータルでサポートするソリューションを提供しています。
これらのソリューションは、環境負荷の低減と同時に、生産性の向上やコスト効率の改善も実現します。
サステナブル素材の活用:バイオプラスチック
SHIFT ONでは、海洋生分解性や土壌生分解性など、使用環境に合わせて分解性をコントロールできる素材や、紙との複合素材といった多様なバイオプラスチックを提案しています。
このバイオプラスチックは、サステナブル素材の定義における「再生可能資源の利用」と「環境負荷の最小化」という二つの側面から非常に重要です。
サステナブルな環境対応樹脂素材と選び方を解説

脱プラ実現にバイオプラスチック
バイオプラスチックの種類や選び方、そしてKPPが提供するバイオプラスチック製品を紹介します...
サステナブル素材の活用:生地
OJO⁺は、紙を原料とした革新的なサステナブル素材であり、「再生可能資源の利用」と「環境負荷の最小化」を両立しています。
古くから日本で親しまれてきた紙を細く裁断し、撚りをかけて糸にすることで、繊維としての新たな価値を生み出しました。
OJO⁺は天然繊維ならではの軽量性、吸水性、調湿性といった機能性を持ち、ファッションや生活用品分野での石油由来素材の代替品として期待されています。
原料調達から製品化までの全プロセスにおいて環境負荷を低減し、持続可能な社会に貢献するソリューションです。
機能性と環境対応を両立したOJO⁺の製品紹介はこちら

OJO⁺とは?紙から生まれた、機能性に優れ・環境にやさしい素材をご紹介
マニラ麻を原料にした紙を細長くスリットし、撚りをかけて糸にしたサステナブルな素材です。...
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機能紙
紙は再生可能でリサイクル性に優れたサステナブル素材ですが、従来の紙では難しかった耐油性や防水性、バリア性といった機能を付与することで、プラスチックの代替品としての役割を担います。
これにより、パッケージ分野における環境負荷の低減と、製品の品質保持の両立が可能となります。
機能性素材について解説しています

耐熱・導電などご紹介
紙に様々な機能を付与した機能紙を新素材としてさまざまな企業が導入を検討しています...
紙緩衝材
100%再生紙を使用しているため、サステナブル素材の基本である「資源の再利用・循環」に貢献します。
さらに、プラスチック製の緩衝材に代わることで、消費者が廃棄する際の手間を軽減し、全体的なリサイクル率の向上に寄与します。
自動製造システムとの組み合わせは、環境への配慮だけでなく、物流における効率化という点で、持続可能なビジネスモデル構築を支援します。
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まとめ
サステナブルとは、持続可能な取り組みをいう言葉です。
現在では国境関係なく、再生可能素材を用いた製品開発や、サステナブルへ対応できる仕組み作りが広く進められています。
この記事でご紹介した内容を参考にして、ぜひ自社ならではの取り組み方法を見つけてください。









