廃プラスチックのリサイクルはなぜ重要?国内における現状と課題
廃プラスチックのリサイクルは世界的な課題です。
国や行政だけが解決するものではなく、企業や個人で取り組んでいく必要があります。
本記事では、廃プラスチックのリサイクルがなぜ重要なのかを解説します。
廃プラスチックに関する基本的な知識や情報に加え、世界や国内における現状と課題、実際の取り組み事例なども紹介しますのでぜひ参考にしてください。
廃プラスチックとは
廃プラスチックは、基本的に「一般系廃プラスチック」と「産業系廃プラスチック」に分けられます。
ここではそれぞれをわかりやすく解説します。
一般系廃プラスチック
一般系廃プラスチックとは、家庭や商業施設から排出される使用済みプラスチック製品や包装材を指します。
例えば、次のようなプラスチックが当てはまります。
- 食品トレイ
- ペットボトル
- ボールペン
- ラップ
- ボトルキャップなど
一般的に、「プラ」マークや「PET」マークの付いたプラスチックが一般系廃プラスチックとされています。
一般系廃プラスチックは、市町村が収集・処理を行う「一般廃棄物」に分類されます。
産業系廃プラスチック
産業系廃プラスチックとは、製造業や建設業、農業などの産業活動から排出される使用済みプラスチックです。
例えば、次のようなプラスチックが挙げられます。
- 合成ゴム
- 合成繊維のくず
- 発泡スチロール
- PPバンド
- 廃タイヤ
- 事務用品など
産業系廃プラスチックは産業廃棄物に該当するため、一般廃棄物としては処理できず、専門業者に依頼する必要があります。
特に、化学薬品に汚染されたものやPCB(ポリ塩化ビフェニル)を含むものは、特別管理産業廃棄物として厳重に取り扱わなければなりません。
現在では、ほとんどの事業でプラスチック製品が使用されています。
事業で出るごみの多くは、廃プラスチックに分類されると考えてよいでしょう。
廃プラスチックのリサイクル方法
廃プラスチックは、次で紹介する3つの方法でリサイクルされます。
- マテリアルリサイクル
- ケミカルリサイクル
- サーマルリサイクル
それぞれに利点や課題が異なるため、詳しく解説します。
次の記事でもリサイクル方法の特長を紹介していますので、参考にしてください。 循環型社会形成推進基本法において、3Rの考え方が導入されました。...
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マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルとは、廃棄物を物理的に処理し、新しい製品の原材料として再利用するリサイクル方法です。
マテリアルリサイクルには「水平リサイクル」と「カスケードリサイクル」の2種類があります。
水平リサイクル | 廃棄物となった使用済み製品を再原料化し、再び同一の製品を製造する |
カスケードリサイクル | 元の製品と同じ品質を保つのが難しい場合に、品質を下げて新たな製品を作る |
マテリアルリサイクルは資源を再利用するため、環境に優しいリサイクル方法です。
一方、課題もあります。
例えば、洗浄や分別の手間、繰り返しリサイクルすることによる品質の劣化などです。
また、すべてのプラスチックがマテリアルリサイクルに適しているわけではない点も課題の一つとされています。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを化学的に分解し、新しい原料として再利用するリサイクル方法のことです。
具体的には、プラスチックを化学反応によって油やガス、モノマーなどの形に変え、新たな製品を製造します。
ケミカルリサイクルの利点は、リサイクルされたプラスチックが新品同様の品質を持ち、異物や汚れが混入していても処理が可能な点にあります。
また、廃プラスチックから熱分解油を製造する「油化プロセス技術」では、従来のリサイクルでは処理が難しい汚染されたプラスチックや複合材料にも対応可能です。
しかし、ケミカルリサイクルにも課題があります。
設備投資が大規模であるため、コストが高くなりかねません。
さらに、比較的新しい技術であり、技術の成熟度が低いため、安定した運用を実現するには時間がかかります。
サーマルリサイクル
サーマルリサイクルとは、廃プラスチックを焼却した際のエネルギーを電力や暖房に転用するリサイクル方法です。
日本ではメジャーな方法とされており、全リサイクルの63%を占めています。
サーマルリサイクルの利点は、廃プラスチックを効率的に処理できるうえに、石炭や石油と同等のエネルギー量を得られる点です。
また、既存の焼却施設を利用できるため、設備投資額が少なくなります。
環境省によれば、発電設備を有する施設は396施設であり、総発電電力量は10,452GWhと約250万世帯分の年間電力使用量に相当するほどです。
サーマルリサイクルの課題は、環境負荷が高い点です。
燃焼により二酸化炭素の排出を伴うため、温室効果ガスが発生し、地球温暖化に影響を及ぼしかねません。
実際に、ヨーロッパではエネルギーリカバリーと呼ばれ、リサイクルとは区別されています。
参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会|プラスチックリサイクルの基礎知識
参考:環境省|一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和3年度)について
廃プラスチックのリサイクルの現状と課題
廃プラスチックはさまざまなリサイクル方法が研究され、実現化されているものの、まだまだ課題が残ります。
そこで、ここでは「世界」と「国内」に分け、リサイクルの現状と課題を説明します。
プラスチックごみに関する問題は、次の記事でも詳しく解説しています。 リサイクルの道を歩む製品のその後はどうなっているのでしょうか?...
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世界の現状と課題
世界では毎年約4億トン以上(2015年時)のプラスチックが生産されていますが、廃プラスチックのうち、14〜18%がリサイクル、24%が焼却、残りは不法に投棄・焼却されているのが現状です。
不法に投棄された廃プラスチックは海洋生物の健康を害し、食物連鎖を通じて人間にも影響を及ぼしかねません。
また、プラスチックの焼却や埋立は温室効果ガスを放出し、地球温暖化の原因となります。
特にサーマルリサイクルは二酸化炭素の大量排出を伴うため、環境に大きな負荷をかけてしまいます。
リサイクル率が低い原因の一つは、廃プラスチックのリサイクルに必要なインフラが整っていないことです。
特に新興市場国では、廃プラスチックの収集や分別が十分に行われておらず、リサイクル率が低い状況にあります。
さらに、中国やトルコなど多くの国が廃プラスチックの輸入を禁止したため、先進国でもリサイクル処理が困難になっています。
国内の現状と課題
国内においても、さまざまな課題があります。
ここでは現状を分析し、直面している3つの課題を紹介します。
サーマルリサイクルを除いたリサイクル率が低い
日本におけるプラスチックのリサイクル率は、2022年度で86.9%です。ただし、86.9%のうち62%はサーマルリサイクルです 。
マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの合計は25%に過ぎません。
25%という数値は、他国に比べると低水準です。
例えば、EUではプラスチックリサイクルの技術革新と政策の強化により、ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルの合計が35%に達しています。
韓国はマテリアルリサイクルの割合が65%前後を誇ります。
サーマルリサイクルは大量の廃プラスチックを効率的にリサイクルできる一方で、二酸化炭素の大量排出が問題視されています。 脱炭素社会に向けて背景から、企業が求めれている内容などを...
二酸化炭素の大量排出は、脱炭素社会の実現に悪影響を及ぼしかねません。
脱炭素の重要性や企業に求められる取り組みについては、次の記事で詳しく解説しています。
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参考:塩ビ工業・環境協会
さまざまな国が廃プラスチックの輸入を規制している
日本は廃プラスチックの一部を、資源として中国やASEAN諸国などに輸出していました。
しかし、資源として使われている一方で、悪質な企業による不法投棄が国際的な問題になりました。
このような流れを受けて、2018年には中国が廃プラスチックの輸入を禁止しました。
中国の禁止以降、日本は廃プラスチックを東南アジア諸国に輸出していましたが、これらの国々も輸入規制を強化し始めています。
実際に、タイやマレーシアは廃プラスチックの輸入制限を強化したほか、輸入禁止も検討しています 。
さらに、2021年に施行されたバーゼル条約により、廃プラスチックの輸出入はさらに厳しく規制されるようになりました。
このような輸入規制の影響で、日本国内で廃プラスチックをリサイクルすることが課題となっています。
参考:一般社団法人日本経済団体連合会|外国政府による廃プラスチック類輸入禁止と国内資源循環への影響について聞く
参考:環境省|バーゼル条約附属書改正と改正を踏まえた国内運用について
リサイクルのコストが高い
プラスチックのリサイクルは、新品の容器を製造するよりもコストが数倍高くなることが一般的です。
廃プラスチックから製品を作る場合、元の原料に戻してから加工する必要があるためです。
例えば、フード容器として使われた場合、内側についた油汚れや使い残しを洗浄しなければなりません。
さらに、異なる種類のプラスチックが使われている場合は細かく分別し、それぞれで汚れを取り除く必要があります。
このように分別や洗浄、処理の手間がかかるため、コストも高くなってしまいます。
一方で、コストを抑えられる脱プラスチックの素材もあります。
例えば、植物から生まれた脱プラスチック素材「modo-cell®」は、生分解性が高いうえに製造コストを抑えられるバイオマス素材素材です。
どのような素材なのかは、こちらにて詳しく解説しています。
プラスチックのリサイクルに取り組む企業の事例
今まで説明してきたように、プラスチックのリサイクルは世界的な問題です。
特に日本は、他国ではリサイクルとしてみなされないこともあるサーマルリサイクルに依存している、という現状があります。
ただ、上記のような現場を踏まえて、さまざまな企業がプラスチックのリサイクルに対して独自の取り組みを始めているのも事実です。
そこで、ここではキリンホールディングス、花王、株式会社アド・ダイセンという3つの事例を紹介します。
キリンホールディングス
キリンホールディングスはさまざまなリサイクル技術の開発に取り組んでいます。
例えば、キリン中央研究所ではPETを分解する工程を短時間・低エネルギーで実現する「アルカリ分解法」を開発しています。
また、早稲田大学理工学術院との共同研究では、環境負荷軽減とコスト削減を両立した「電気透析」による精製法を開発しました。
加えて、キリンはペットボトルの軽量化にも成功しており、年間で約439トンのペット樹脂使用量と1,515トンの温室効果ガス排出量を削減しています。
具体的にはペットボトル製品のラベルレスやロールラベル化により、パッケージ材料の使用量を減らしています。
花王
花王は2040年までに「ごみゼロ」、2050年までに「ごみネガティブ」の実現を目指しています。
実際に、2023年には使用済みつめかえパックの水平リサイクル技術を導入し、2025年までに日本国内で販売されるPETボトルの100%をリサイクル素材にすることを目指しています。
また、花王とユニリーバジャパンは「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」を実施し、家庭用ケア製品の使用済みボトルをリサイクルして新しいボトルを作る取り組みを行っています。
東京都の「2021年革新的技術・ビジネスモデル推進プロジェクト」として選定されており、ライオンやP&Gジャパンも参加しています。
参考:花王|2040年「ごみゼロ」、2050年「ごみネガティブ」実現への活動を加速
参考:花王|ユニリーバ・ジャパン、花王が協働回収プログラム「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」を開始
株式会社アド・ダイセン
株式会社アド・ダイセンは、当社とパートナーシップのある企業です。
ダイレクトメール(DM)の加工サービスを行っている企業で、封筒のデザイン作成や素材の提案も手掛けています。
株式会社アド・ダイセンは、2020年頃からカタログやDMを郵送する際の封筒をプラスチックから紙素材に切り替えています。紙素材にすることで、環境に配慮できるだけでなく、より訴求力のある紙面構成や質感に合わせたブランディングが可能になりました。 今回は紙封筒製造までの過程や、紙封筒ならではできることを中心にお話を伺いました。...
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廃プラスチックのリサイクルならSHIFT ON
廃プラスチックのリサイクルは、企業においても重要な課題です。
事業用品には基本的にプラスチックが含まれるため、ほとんどの企業が取り組んでいくことを求められています。
解決策の一つが脱プラスチックです。
脱プラスチックを目指し、代替素材を利用すれば、廃プラスチックそのものを減らすことができるでしょう。
さらに、環境に配慮した企業として認識されるとともに、今までに接点がなかった顧客から関心を抱いてもらえる可能性があります。
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