事業を最適化する紙総合商社SHIFTON
生活に欠かすことができないプラスチックですが、その多くは自然環境で自力に分解されることはありません。
正しい廃棄と分別を経て、再利用や処分が行われるのです。
プラスチックは耐久性があり便利です。しかし正しく処分しなければ、分解されることなく河川を通り海まで流れ出てしまいます。
今回は主に海洋ごみの原因となっているマイクロプラスチックについて説明していきます。
そもそもプラスチックとは何でしょうか。
石油を原料とし人口的に合成した樹脂と定義されています。
熱や力などの圧を加えた際に変形した形が、その圧がなくなった際にも変形が崩れないという性質を持っています。
そのためプラスチックは自由に成形し、製品を作ることが容易という特長があります。
プラスチックの種類は、加熱した際に硬くなりそのときの形を保つ熱硬化性と、加熱すると柔らかくなり冷却すると固まる熱可塑に分けられていますが、分子構造によっても種類はさまざまあり、性質がそれぞれ異なります。
なかでも強化プラスチックと汎用プラスチックの大きく2つに分けられます。
ガラス繊維など補強材を加え成形。衝撃耐性・強度・耐熱性が従来のプラスチックより上がる。自動車、漁船などに使用。
日常的に使用されるレベルでの丈夫さ、軽さを持つ。レジ袋、ペットボトルなどに使用。
他にもエンジニアリングプラスチック(エンプラ)、スーパーエンプラがあります。
強化・汎用プラスチックよりも耐熱性、強度性などに優れた高機能なプラスチックです。
プラスチックは安価で大量に生産できること、異素材を加えるとさらに高性能なものが成形できることから、様々な用途で生活に身近な日用品から産業材・工業材まで幅広く使われています。
しかし、廃棄段階で正しく処理が行われないと自然環境の中に残り続けてしまいます。その場が海であると、海洋ごみとなるのです。
日本国内において海岸への漂着ごみの内訳を見ると、容積・個数ベースでは、プラスチック製品が最も高い割合を占めています。
海洋プラスチックごみの多くを占めるのは、安価で大量に作ることのできるペットボトルや食料品容器、レジ袋、カトラリーなど汎用プラスチックで作られるものです。
廃棄処理のサイクルから外れてしまったプラスチックが、自然環境に流出し、長い年月をかけ劣化することでマイクロプラスチックとなってしまうのです。
マイクロプラスチックは5mm以下の微細なプラスチックのことを指します。自然環境の中、自力で分解することはないプラスチックですが、なぜ5mm以下になるのでしょうか。
それはマイクロプラスチックが一次と二次に分類されているからです。
製品や製品原料として作られた、もともと微細なプラスチック。マイクロビーズとも呼ばれ、化粧品(洗顔料・歯磨き粉)などにスクラブ材として含まれている。
成分はポリプロピレンやポリエチレンで、大きさは1mm以下。各家庭の排水溝などから下水処理を通るが、微粒なため、すり抜けて海に流れ込んでしまう。
プラスチック製品が廃棄物となり、正しい分別や処理がなされずに屋外に放置され、太陽の熱や紫外線、物理的な摩耗で5mm以下の破片となったもの。自然環境内で分解されることはないため、少しずつ劣化され細かくなっていく。
ビニール袋やペットボトル、たばこの吸い殻などがもともとの製品としてある。
マイクロプラスチックになる過程には、もともと5mm以下で作られているプラスチックが下水で処理できずに流れ出てしまう場合と、放置されたプラスチックが長い年月をかけて微細化する場合があります。
2種類とも分解→消滅の途中で海へと放出され、半永久的に海を漂うこととなります。
では、流れて海に集まったプラスチックはどうなるのでしょうか。
水中のなかでは回収が難しく、軽いため風や波で他の地域へ移動してしまうことも多く、例えば日本の海域で発生したプラスチックごみが、諸外国の海へ流出することもあるのです。その中でマイクロプラスチック化されてしまえば、人間の目では確認できず、蓄積されていってしまいます。
マイクロプラスチックは表面に凹凸が多く、PCBなど有害な化学物質を吸収しやすい性質があります。そのため、魚や動物が体内に取り込むと、有害なプラスチックの摂取に繋がり、体内へ悪影響を及ぼすことが懸念されています。
また、プラスチックは自然環境には存在しない有機物なため、環境ホルモンなどの有害物質を行き渡らせてしまうこととなり、生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。
マイクロプラスチックを体内に取り込んだ魚を動物や人間が食べることで、人体へのプラスチック蓄積量が増えてしまいます。
プラスチックとマイクロプラスチックに吸着した環境ホルモンによる人体への影響は明らかになっていませんが、有害物質による悪影響があるのではと懸念されています。本来、口にすることを想定していない物質が、知らないうちに体内に入る危険性があります
海や海岸に流れ着き、放置されているプラスチックごみを見て、その土地が綺麗だとは思えません。
水中でもサンゴがマイクロプラスチックを取り込むことで、本来の栄養源である植物プランクトンとの共生関係が出来なくなってしまう恐れがあります。
プラスチックは加工しやすく安価に大量生産が可能なため、身の回りのへ多くの場所で使用されています。
実際、人口密度が高いほど、近隣の河川にマイクロプラスチックの放出が多いという調査結果があります。
人間のプラスチック製品の使用量に比例し、マイクロプラスチックは増大していると関連付けられます。
出典:東京理科大学 愛媛大学
「全国の河川における深刻なマイクロプラスチック汚染の実態を解明」
https://www.tus.ac.jp/today/201810310005.pdf
参照 22/05/11
では、人間が暮らしていく中で、生活と切り離すことができないプラスチックやマイクロプラスチックとどう向き合えばよいでしょうか?
それはプラスチックの使用量や排出量を削減すること、万が一自然環境に流出しても完全に分解することが大切です。それぞれ見ていきましょう。
プラスチック製品の使用を減らすことです。スクラブ材としてマイクロプラスチックが含まれている化粧品の使用を避け、代用している製品を選ぶことで、微細なプラスチックの海への流出を防ぎます。
海外では規制が設けられ、プラスチック製のスクラブ材の使用を禁止する国も増えてきました。
国内でもプラスチック製スクラブ剤を代替素材へ切り替えることを発表した企業は多々あり、プラスチックに頼らない製品の開発が進められています。
ペットボトルを再びペットボトルに製品化するボトル to ボトルの取り組みや、ペットボトルから再生ポリエステル糸を生産するなど、企業のリサイクルへの取り組みはめざましいものがあります。
リサイクルを推し進めるためには、消費者側も正しい分別と廃棄を行う必要があります。一度使用した製品を再びリサイクルの循環の中に戻すことも、大きな環境配慮の取り組みのひとつです。
海に流出したプラスチックごみの発生量を国別に推計すると、日本は世界では30位と、そう高い位置付けではありません。
それは基本的にすべてのプラスチックが回収されるというリサイクルの仕組みが社会的に成立しているからといえるでしょう。
しかし世界経済フォーラムの報告書(2016年)によると、2050年までに海洋中のプラスチックごみの量が、魚の量を超えると予測されています。
出典:世界経済フォーラム
「The Global Enabling Trade Report 2016」
https://jp.weforum.org/reports?year=2016#filter
参照 2022/05/11
日本国内の規模を超え、世界基準では従来のリサイクルからさらに進んだ取り組みが求められています。
例えば、海に漂流・漂着することを前提として、海水で分解することができる海洋生分解性プラスチックが挙げられます。
従来の自然環境で分解されないプラスチックではなく、海水中で微生物により水とCO2へと分解される海洋生分解性プラスチックの開発が進んでいます。
プラスチックの特長は耐久性があり、物性的に安定していることです。生分解できるということは物性の安定いということになります。用途に応じて使い分けが必要ですが、釣り糸や漁網など、海で使用するものは海洋生分解性プラスチックへと置き換えていくのが望ましいと言えます。
・プラスチックは自然環境で自力に分解されない
・マイクロプラスチックはもともと製品に含まれる微細なもの、劣化を経て微細化するものの2種類ある
・海に流出するのを防ぐために、消費者としてリデュースやリサイクルを心掛ける
・置き換えができる製品は海洋生分解性プラスチックへの移行を考える