植物性プラスチックとは?特徴や活用事例をメリット・デメリット交えて解説


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植物性プラスチックとは?特徴や活用事例をメリット・デメリット交えて解説

近年、プラスチックを取り巻く環境は大きく変化しています。
地球温暖化や海洋汚染、資源枯渇といった課題への対応が企業に求められる中、持続可能な素材開発は製品開発担当者にとって避けて通れないテーマとなっています。

とりわけ注目を集めているのが、トウモロコシやサトウキビといった再生可能資源を原料とする「植物性プラスチック」です。
従来の石油由来プラスチックに比べ、カーボンニュートラルの実現や廃棄時の環境負荷低減に寄与できる点が評価され、食品容器や日用品、さらには医療分野まで用途が広がっています。

本記事では、植物性プラスチックの定義や特徴、メリット・デメリットを整理するとともに、実際の活用事例やKPPが提供する各種素材をご紹介します。
植物性プラスチックを正しく理解し、自社の製品開発にどのように取り入れるべきか検討する一助となれば幸いです。

minimapla

PLAの弱点を克服した素材
耐熱・加工性が向上したminimaPLA

  • 熱変形・引っ張り伸度などスペック
  • PLA袋 製品イメージ
  • PLAコップ 製品イメージ
  • ホットコップふた 製品イメージ
minimapla

植物性プラスチックとは?その定義と注目される理由


植物性プラスチック(植物由来プラスチック)とは、トウモロコシやサトウキビなど植物由来の再生可能資源を原料として作られるプラスチックの総称です。
これは「バイオマスプラスチック」の一種であり、石油由来プラスチックに代わる素材として近年注目を集めています。

地球環境問題への対策として、資源枯渇やCO₂排出削減、海洋プラスチック汚染の解決に寄与する素材として期待されています。
また2022年には日本でプラスチック資源循環促進法が施行され、企業によるプラスチック削減や環境配慮素材の活用が進められており、植物性プラスチックへの関心を後押ししています。

バイオプラスチック全般の詳しい解説については以下の記事もご覧ください。

植物性プラスチックのメリット


植物性プラスチックには、原料が植物由来であることから環境面や安全面で様々なメリット(利点)があります。
ここでは代表的なメリットを解説します。

再生可能資源を活用でき、資源枯渇リスクが低い

植物性プラスチックは石油などの化石資源ではなく植物資源から製造されます。
植物は繰り返し栽培・収穫できる再生可能資源のため、有限な石油資源に依存せずにプラスチック原料を確保できる点が利点です。
化石資源の可採年数が限られる中(※石油の可採年数は約53年とも言われています)、植物由来原料への転換は長期的な資源枯渇リスクの低減につながります。

また、生産時に石油の精製工程を減らせるため、プラスチック製造過程でのエネルギー消費やCO₂排出の削減効果も期待できます。

カーボンニュートラル(CO₂排出削減)など環境負荷の低減

植物性プラスチックを利用することで、温室効果ガス(CO₂)の排出抑制にも貢献できます。
植物は成長過程で光合成によりCO₂を吸収するため、植物由来原料から作られたプラスチックを焼却しても大気中のCO₂総量を実質的に増やさない「カーボンニュートラル」な性質があります。
例えばバイオマスプラスチックを焼却処分して排出されるCO₂は、原料植物が成長時に吸収したCO₂と相殺されるため、従来プラスチックより地球温暖化への影響が小さいとされています。

さらに、植物性プラスチックの中には使用後に生分解性を持つものもあり、適切な条件下で微生物により水とCO₂まで分解されます。
このような生分解性プラスチックであれば廃棄物処理や海洋プラスチックごみ問題の軽減にも寄与でき、環境への負荷低減につながります(※ただし生分解性の効果を発揮するには、最適な廃棄システムや所定の環境条件が必要です)。

人体への安全性が高く、食品や医療用途でも安心

植物由来の樹脂はその安全性の高さもメリットの一つです。
ポリ乳酸(PLA)など代表的な植物性プラスチックは成分的に比較的安全で、有害物質を含まないため食品包装などにも利用が進んでいます。
実際にPLA樹脂は食品に直接触れる容器やカトラリーにも採用されており、人体への影響が少ない素材として安心して使用できます。

さらに生体適合性・生分解性を活かして医療用素材にも活用されており、体内で自然に分解する吸収糸やインプラント(人工骨固定具など)にPLA系素材が使われる例もあります。
このように植物性プラスチックは食品業界や医療分野でも需要が高まっており、安全面で信頼できるサステナブル素材といえます。

植物性プラスチックのデメリット・課題


一方で、植物性プラスチックにも普及拡大の上で無視できないデメリット(欠点)や課題が存在します。
ここでは代表的な懸念点を整理します。

すべてが生分解性ではなく環境改善効果にも限界がある

「植物由来=環境に優しい=自然に還る」というイメージがありますが、植物性だからといって必ずしも生分解性を持つわけではありません。
例えばサトウキビ由来のバイオポリエチレン(バイオPE)やバイオPETは植物原料ですが、自然環境下では容易に分解されず従来プラスチック同様に残留します。

このように非生分解性の植物性プラスチックも多く存在し、適切に回収・処理しなければ環境汚染を引き起こすリスクは石油由来品と変わりません。
消費者が誤解して不適切に廃棄すれば、かえって環境負荷を高める恐れもあり注意が必要です。
植物性プラスチック導入による環境改善効果を十分得るには、生分解性の有無を正しく理解し、適切なリサイクル・処理体制を整えることが求められます。

従来プラスチックより製造コストが高い

植物性プラスチックの製造コストの高さも大きな課題です。
現状では、バイオマス由来樹脂の生産量が少なく量産効果が限定的であることや、原料調達・加工プロセスなどにコストがかかることから、同量のプラスチックを作るのに要する費用は石油由来品より割高になる傾向があります。

実際、バイオプラスチックの価格は従来品の1.5~5倍とも言われており、高コストが普及の大きなネックとなっています。
このコスト面のハードルにより、大量生産設備への投資に慎重な企業も多く、結果として市場価格も高止まりしやすい状況です。
しかし近年は技術開発や生産規模拡大によるコスト低減策が進められており、将来的な価格改善が期待されています。

耐久性・耐熱性や加工性に課題がある場合がある

植物性プラスチックの中には、従来のプラスチックに比べ物性面で劣るものがあり、用途によって制約となるケースがあります。
例えばPLA樹脂は透明性や硬度は高い一方で耐熱温度が約60℃と低く、高温環境下では変形しやすいという弱点があります。
また硬く脆いため衝撃に弱く、強度面で課題を抱えます。
このように耐熱性・耐久性が十分でない素材は、自動車部品や熱い飲料用の容器には不向きであり、添加剤の使用や他素材とのブレンドによる耐性強化が必要です。

さらに加工のしやすさにも差があり、植物性樹脂によっては吸湿性が高く成形前の乾燥管理が欠かせないものや、従来設備では成形しにくいものも存在します。
特に生分解性プラスチックでは加工適性が低い場合もあり、工業用途で使いにくいという指摘があります。
こうした課題解決に向けて、各メーカーで改良開発が進められているのが現状です。

KPPが取り扱う植物性プラスチック素材のご紹介


当社では、環境対応素材ソリューション「SHIFT ON green」を通じて様々な種類の植物性プラスチック素材を提供しています。
以下では、KPPが取り扱う代表的な植物性プラスチック樹脂5種について特徴をご紹介します。

minimaPLA(ポリ乳酸樹脂)

minimaPLAは、植物由来のポリ乳酸(PLA)を主成分とする生分解性プラスチックです。
適切な条件下ではコンポスト(堆肥化)処理が可能で、使用後はCO₂と水に分解されるため環境負荷軽減に貢献します。
ただし、「植物性=自然に分解される」と誤解されることがありますが、PLAの生分解性は使用環境に依存します。
例えば家庭の自然環境では分解が進みにくく、実際に分解を実現するには高温・高湿度を維持できる工業的な堆肥化施設が必要です。
この点を理解した上で適切な利用環境を整えることが重要です。

また、耐熱性や耐衝撃性に課題があるため、高温用途や高強度が求められる製品では添加剤の使用や他素材との複合による補強が推奨されます。
minimaPLAは品質が高く一般のプラスチックに近い使い勝手を備えながら、価格面も比較的抑えられているため、海外展開を目指す日用品メーカーで採用されるなど実績があります。

PLA樹脂について詳しく知りたい方は、以下の解説記事もご参照ください。

バイオPP(バイオマスPP樹脂)

バイオPPは植物由来原料を一部に用いたバイオマスPP(ポリプロピレン)樹脂で、当社取扱品はキャッサバ由来デンプンを添加することでバイオマス度を高めた製品です。
通常のPPと比較して柔軟性と高い靭性を備えており、繰り返し曲げる蝶番(ヒンジ)部分を持つプラスチック製品などにも適しています。
射出成形時に高温(約230℃)で加工しても樹脂の焦げ付きが少なく、成形性・量産適性が良好です。
そのため食品容器や包装材など幅広い用途で使用でき、石油系PPからの置き換えが容易な汎用性の高い植物性プラスチックと言えます。

さらに原料の安定供給性にも優れており、大量生産にも対応可能な点が評価されています。
通常のPPと同等の使いやすさを維持しつつ一部バイオマス化することで、化石資源使用量削減と製品ライフサイクル全体のCO₂排出削減に寄与する素材です。

TERRAMAC(高バイオマス度PLA系樹脂)

TERRAMAC(テラマック)はポリ乳酸(PLA)を基盤としたバイオプラスチックで、バイオマス度(再生可能資源由来の割合)が非常に高いことが特徴の一つです。
優れた生分解性と機械的強度をあわせ持ち、射出成形や押出成形など既存のプラスチック加工技術をそのまま応用できるため、食品容器・農業用フィルム・日用品など幅広い分野での利用が期待されています。
従来のPLAよりも耐熱性・耐久性が向上したグレードもあり、用途拡大が進んでいます。

また原料由来の炭素を可能な限りバイオマスで賄うことで製品ライフサイクル全体で環境への影響を抑える設計がなされており、持続可能な素材として高い評価を受けています。
使用後は工業コンポストなど適切な環境下で分解処理が可能ですが、十分な性能を発揮させるにはインフラ整備が重要です。
高い生分解性と加工適性を両立した先進的なPLA系樹脂として注目されています。

リソイルグリーン(土壌生分解性樹脂)

リソイルグリーンは植物由来の原料から作られ、土壌中で優れた生分解性を発揮する特性を持つバイオプラスチックです。
使用後は土中の微生物の働きによって分子レベルまで分解され、水とCO₂にまで還元されるため、土壌中にプラスチック残留物をほとんど残しません。
この性質から農業用マルチフィルムや園芸用資材、植木鉢など土に直接触れる用途に最適な素材です。
従来、農業用フィルムは使用後の回収が難しく土壌汚染の原因となっていましたが、リソイルグリーンを用いることで土中で自然分解させ処理負担を大幅に軽減できます。

さらに従来のプラスチックフィルムと同等の強度・柔軟性を持ち合わせており、現在使われている資材からスムーズに置き換え可能です。
土壌環境への負荷低減に貢献する画期的な植物性プラスチックとして評価されています。

パルプラス(パルプ系高耐久バイオプラスチック)

パルプラスは木材パルプ(木の繊維)を主原料とするセルロース系バイオプラスチックで、自然な風合いと高い剛性(剛さ)が特徴です。
紙のような質感を持ちながらプラスチック並みの成形性・耐水性を実現しており、耐久性が求められる製品に適した植物性素材です。
具体的には家具の部品や建築資材、ステーショナリー・日用品など強度と長期使用性が必要な分野で活用されています。
木材由来資源を有効活用しているため、製造時における石油資源の節約と製品の炭素貯蔵(カーボンストック)的な効果も期待できます。

実際、パルプラスは木材資源の有効利用と環境負荷低減を両立する素材として評価が高く、自動車内装部品や家電製品への応用など高度な用途展開も検討されています。
強度・耐熱性も優れることから、紙やプラスチックの代替素材として幅広い分野で注目されているバイオマスプラスチックです。

植物性プラスチックまとめ

植物性プラスチックは、再生可能な植物由来原料から作られることで資源枯渇やCO₂排出削減に寄与し、場合によっては生分解性による廃棄物問題の解決にもつながる次世代プラスチックです。
この記事ではその定義やメリット・デメリットから具体的な素材例まで紹介しました。
メリットと課題の両面を正しく理解し活用することで、循環型社会への移行に貢献できるでしょう。

当社では、上述したminimaPLAやバイオPPをはじめ多様な植物性プラスチック製品を取り揃え、お客様の環境配慮型製品づくりをサポートしております。
各素材の特性に応じて試作から量産までご提案可能ですので、興味をお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。

環境対応素材の導入によって貴社製品の価値向上と持続可能な社会への一歩を、ともに実現していきましょう。

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