リサイクル可能な樹脂とは | 樹脂を用いた製品例とリサイクル方法をご紹介
最終更新日:2024/10/08
環境問題が深刻化する昨今、リサイクルできる樹脂を素材に取り入れたいと考える企業様も多いのではないでしょうか。
リサイクルできる樹脂として、ポリエチレンテレフタレート・ポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンなどが代表的に挙げられます。
いずれも石油を原料とする樹脂で、身近な日用品から企業が扱う専門機器の部品などに幅広く用いられます。
この記事では、日本におけるプラスチックのリサイクル率、リサイクルの種類、リサイクルできる樹脂と製品例、企業におけるリサイクル樹脂の活用事例などをご紹介します。
海洋汚染問題から考えるリサイクルの必要性
近年、法投棄された廃棄物が海岸へ流れ出ることでマイクロプラスチックとなり、海洋汚染が引き起こされることが問題視されています。
1950年以降に世界で生産されたプラスチックは83億トンを超え、そのうち廃棄されたものは63億トンです。
各国で様々な廃棄処理方法がありますが、回収されたプラスチックごみの79%は埋め立て、または海へ投棄されます。
現代も毎年約800万トン以上もの廃プラスチックが海に流出しており、このまま海洋汚染を放置すると2050年には海中における廃プラスチックの重量が魚の重量を超えてしまう恐れがあります。
また、廃プラスチックは海で暮らす生物の命を脅かすだけではなく、漁業や養殖業、観光業などにも大きな打撃を与えています。
海洋汚染が世界にもたらす経済的損失額は年間で130億ドル(1兆4,300億円)といわれています。
一刻も早く、廃プラスチックの処理方法や、プラスチックに代わる素材の利用について考えなければなりません。
参照:環境省
令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書
参照:日本財団ジャーナル
日本人のプラごみ廃棄量は世界2位。国内外で加速する「脱プラスチック」の動き
プラスチックにおけるリサイクル率の現状
2021年における廃プラスチックのリサイクル率では一般系廃棄物が2%増加しているのに対し、産業系廃棄物は2%減少しています。
廃プラスチック総排出量824万トンのうち717万トンがリサイクルされ、有効利用率87%という結果が出ていることから、企業や消費者における環境保全意識が高まっていることが見受けられます。
参照:環境省
プラスチック資源循環戦略(案)
参照:一般社団法人 プラスチック循環利用協会
プラスチックリサイクルの基礎知識2023
世界におけるプラスチックのリサイクル率
世界全体のプラスチック容器包装のリサイクル率、熱回収を含めた焼却率はともに14%とされており、廃プラスチックが有効利用される割合は 14~28%となります。
しかし2020年における世界30か国におけるプラスチックリサイクル率ランキングでは、日本は圏外となっています。
その理由として、日本が主におこなうリサイクル方法がサーマルリサイクルであることが挙げられます。
サーマルリサイクルとは廃棄物を燃やした際に出る熱エネルギーを回収、利用する手法ですが、海外ではリサイクルとして認知されていません。
これにより日本において62%と高いリサイクル率であっても、世界の中ではカウントされない結果となっているのです。
参照:環境省
プラスチック資源循環戦略(案)
プラスチックにおける3つのリサイクル法
この項目では、プラスチックにおける3つのリサイクル方法をご紹介します。
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルとは、モノからモノへ再利用をすることを指します。
例えば使用済みのPETボトルを再度PETボトルへ、元の製品へと利用することは水平リサイクルといいます。
一方でPETボトルからシートや繊維など、元の製品からは落とした段階に利用されることをカスケードリサイクルといいます。
どちらも資源の持続的な循環を可能としているため、新たに使用する資源量効率的に減らすことができます。
当社ではお客様が使用した製品を回収・再原料化を経て、生産者が再度同じ製品として使用する仕組みを、クローズドリサイクルとして提供しています。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルとは廃プラスチックを化学的分解してから別の素材に変えるリサイクル方法です。
プラスチックの場合、リサイクルを繰り返すことによる品質劣化を防ぎ、廃プラスチックを違う物性に変えた資源に生まれ変わらせることも可能です。
ケミカルリサイクルの例として以下が挙げられます。
- 資源のガス化(化学原料・化学製品)
廃プラスチックをガスにして化学工業で原料として再利用 - コークス炉原材料化(化学製品・鉄鋼・燃料)
廃プラスチックを製鉄所のコークス炉などで再利用 - 高炉還元剤化(鉄鋼・燃料)
廃プラスチックを高炉で還元剤として再利用 - 油化(石油精製原料)
廃プラスチックを油に戻して再利用 - 原料・モノマー化
廃プラスチックを原料やモノマーに戻して再利用
廃プラスチックはコークス炉で炭化水素油・コークス・コークス炉ガスに変化させることが可能です。
これらから化学原料・製鉄原料・発電(発電効率40%)・水素ガスなどへ有効利用でき、天然資源の保全やCO2排出の抑制にもつながります。
サーマルリサイクル
サーマルリサイクルとは廃プラスチックを焼却炉で燃やす際に発生した熱エネルギーを回収し、火力発電や温水プールの稼働になどに使用します。
マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに向かないプラスチックを燃料とし、熱エネルギーとして再生利用します。
サーマルリサイクルの例として以下が挙げられます。
・廃棄物発電(燃焼時の熱を電力として利用)
・焼却(燃焼時の熱を利用)
ごみを用いた火力発電は、廃棄物発電とも呼ばれており、本来火力発電に必要な石油や石炭の代わりに廃プラスチックを使用しています。
プラスチックは石油を原料としており、よく燃えて高温を発することから、焼却発電に適しています。再資源化が困難であるもの、廃棄に大きなコストがかかるものを有効活用できるため、現在の日本で多く用いられるリサイクル方法のひとつです。
出典:一般社団法人日本RPF工業
RPFとは
リサイクルできる樹脂と製品例
この項目では、リサイクルができる主な4つのプラスチック樹脂とそれぞれの製品例をご紹介します。
ポリエチレンテレフタラート(PET)
ポリエチレンテレフタラート(以下PET)は、石油から作られるテレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、高温・高真空下で化学反応させて作られる樹脂です。
主に炭素・酸素・水素から構成されており、樹脂の約1/3を酸素が占めているため、プラスチックでは比較的石油依存度の低い樹脂といえます。
発熱量が低いため、ごみの助燃剤としてエネルギー回収するよりも素材としてのリサイクルに適しています。
PETを用いた製品の例として以下が挙げられます。
- 合成繊維
- 磁気テープ
- 電子機器部品
- 電化製品ハウジング
- ペットボトル、食品容器
出典:PETボトルリサイクル推進協議会
PET樹脂の特性
ポリスチレン(PS)
ポリスチレン(以下PS)は原油やナフサを原料としたスチレンモノマーを重合させて作る樹脂で、性能が変化しづらいことからマテリアルリサイクルに適した素材です。
熱による解重合のしやすさやモノマー収率の高さから、ケミカルリサイクルへの実用化も期待されています。
各国で安全性が認められている無味無臭の樹脂であることから、食品の包装材に適しています。
また、電気を通さないことから電気製品の外装材・絶縁部品としての使用も可能です。
また電気を通さないことから、電気製品の外装材・絶縁部品としての使用も可能です。
PSを用いた製品の例として以下が挙げられます。
- 食品容器包装
- 建材ボード
- 断熱材
- 緩衝材(発泡スチロール)
- 電気製品外装材
出典:日本スチレン工業会
ポリスチレンの特徴と用途
ポリエチレン(PE)
ポリエチレン(以下PE)は世界で最も生産量が多く、原価の安いプラスチック樹脂です。
炭素原子と水素原子だけで構成されたエチレンという無色透明の気体を使用して作られます。
構造が単純なため扱いやすく、さまざまな加工方法に対応できるのが特徴です。
食品の包装材や日用品のボトル容器はもちろん、水道管・ガス管などさまざまな用途があります。
PEを用いた製品の例として以下が挙げられます。
- 日用品のボトル容器
- 灯油タンク
- 水道やガスのパイプ
- 保存容器
- 電線保護材料、通信機器の絶縁材料
出典:プラスチックのはてな
ポリエチレンってどんなプラスチック?やさしく解説!
ポリプロピレン(PP)
ポリプロピレン(以下PP)は、プロピレンと呼ばれる無色透明な気体を利用して作られます。
プラスチックの中でも軽量性に優れた樹脂で、製品の軽量化を目的として利用されることがあります。
折り曲げに強く、耐熱性・耐薬品性があることからさまざまな製法での加工が可能です。
大量生産に適した樹脂であり、多くの製品に利用されています。
PPを用いた製品の例として以下が挙げられます。
- 医療機器部品
- ガソリンタンク
- 精密機器の部品
- ヒンジ付きキャップ(シャンプーや化粧品のフタ)
- 3Dプリンター
出典:プラスチックのはてな
ポリプロピレンってどんなプラスチック?やさしく解説!
資材が循環する、クローズドリサイクルシステムとは
クローズドリサイクルとは、生産・使用・廃棄・回収・再利用といった循環を作り、その循環を生産企業が自社内で完結させるリサイクルのことを指します。
例えば段ボールは集積・圧縮・離解などの工程を経て再原料化された後、再び段ボールを作るための原紙に戻っていきます。
廃棄物を製品原料として再利用するまでの工程を自社で完結させることで、問題視されているリニアエコノミーをサーキュラーエコノミーに変えていくことができるのです。
また自社で排出した資源ごみを資材化し再利用することで自社のリサイクルへの取り組みを可視化でき、企業として環境問題に真摯に取り組むアピールにもなります。
クローズドリサイクルの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
クローズドリサイクルについての詳細はこちら
クローズドリサイクルとはなにか | 環境対応をお客様に合わせてご提案
お客様から排出された廃棄物を、再度お客様が使用する製品に戻し再納入する、クローズドリサイクルとしておこなっています。...
クローズドリサイクルシステムの提案
当社ではクローズドリサイクルが可能な製品のご提案が可能です。
例えばバイオマス度が高く生分解性を有したmodo-cell🄬は、竹や非植物繊維を主原料としているため、土中や海中での生分解が可能で使用後は自然に戻せるプラスチック代替素材です。耐熱性やその軽さから食器やカトラリーに使用できます。
詳しい製品説明はこちら
まとめ
リサイクルできる樹脂にはポリエチレンテレフタラート・ポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンなどがありいずれも消費者に直接使用される食品トレイや、カトラリー、家電製品の部品、梱包資材などで幅広く私たちの暮らしを支えています。
環境問題に対し、リサイクルは根本的な解決となります。
マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル・サーマルリサイクルは、それぞれの役割で廃棄物を有効活用できる合理的な手段です。
また、クローズドリサイクルで資材の使用・廃棄から再資源化までを見える化をすることで、環境対応だけでなく資源の利用持続性を保つことが可能になります。
社会的な環境意識は事業にも組み込まれ、経営の柱に置かれていることは当たり前のこととなっています。
今後も住み続けられる持続性を持つ地球環境のためにも、企業でおこなえるさらなる取り組みを素材から見直してみませんか。
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