機能性素材とは?種類・代表的な機能、活用事例を徹底解説

機能性素材とは、従来の素材にはない特別な機能を付加した素材の総称です。
例えば「高い吸水性」や「強い耐熱性」など、素材に高度な性質を持たせることで、製品の性能や付加価値を向上させます。
粉末、繊維、フィルム、シートといった様々な形態で供給され、自動車や電子部品、医療、建築資材など幅広い分野で活用されています。
本記事では、機能性素材の種類や代表的な機能、実際の活用事例、そして環境対応の最前線までをわかりやすく解説。
自社製品に革新をもたらす新素材との出会いのヒントが、きっと見つかるはずです。
機能性素材の種類
機能性素材には、紙・プラスチック・金属など多様なベース素材が存在し、その形態も様々です。
代表的なものだけでも、紙やフィルム、シート状の素材から、粒子状の粉末、液体樹脂、ゴム材料、金属材料、繊維状のものまで幅広く含まれます。
つまり、あらゆる素材が「機能性素材」になり得ると言えます。
例えば紙に特殊な薬剤を塗布して機能を持たせた「機能紙」、ナノ粒子を配合した高強度プラスチック、導電性を持つ高分子フィルム、温度で形状が変わる合金(金属材料)など、素材の種類ごとに新たな機能を付与した製品が開発されています。
多様な素材の組み合わせや加工技術により、新しい機能性素材が次々と創出されており、自社製品に最適な素材を見つけることが製品開発のカギとなります。
紙に様々な機能を付与した機能紙を新素材としてさまざまな企業が導入を検討しています...機能性素材について解説しています
耐熱・導電などご紹介
機能性素材の代表的な機能
機能性素材には、防水・吸水、耐熱・難燃・断熱、導電・絶縁、光拡散・高反射・UVカット、抗菌・防臭・バリア、耐油・剥離など多岐にわたる特殊な機能があります。
これらの機能により、日常生活をより快適にしたり産業上の課題を解決したりする製品が存在しています。
以下では主要な機能カテゴリーごとに概要を紹介します。
水関連の機能(耐水・吸水など)
水に対する機能性として、代表的なのが耐水性と吸水性です。
耐水性とは素材が水を弾き吸収しない性質で、防水コーティングされた布や耐水紙などに応用されています。
例えば、屋外ポスターや浴室のラベルに使われる耐水紙は、水に濡れても破れにくく強度を保つ紙です。
一方、吸水性とは水分をたくさん吸収する性質で、高吸水性ポリマー(SAP)は紙おむつなど衛生用品に不可欠です。
高吸水性ポリマーは自重の100倍~1000倍の水を吸収できる高分子素材で、紙おむつや生理用品、土木用の止水材など様々な用途に使われています。
また、吸湿した水分で発熱する繊維も存在し、ユニクロの「ヒートテック」のように吸湿発熱素材が衣類に使われる例もあります。
ヒートテックは、身体から出る水蒸気をレーヨン繊維が吸着し、その運動エネルギーを熱に変換して発熱する素材を採用しており、「着るだけで暖かい」を実現しました。
このように、水を「通さない」「たくさん吸う」機能は食品包装から衣料まで幅広い分野で活用されています。
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熱関連の機能(耐熱・難燃・断熱など)
熱に対する機能性には、耐熱性や難燃性(不燃性)、断熱性といったものがあります。
耐熱性とは高温下でも性能を維持する性質で、例えば耐熱紙は高温でも燃えたり劣化しにくい紙を指し、オーブン用のクッキングシートや工業用の断熱材として利用されています。
紙にガラス繊維やセラミック繊維を配合することで200℃以上の高温に耐える製品もあり、電子レンジ調理シートや耐火建材にも活用されています。
また難燃性素材は自己消火性を持ち火が付きにくく、家具や内装材、電気ケーブル被覆などの安全性向上に貢献します(難燃紙では無機繊維の配合や難燃剤の塗布で燃えにくく加工し、防火壁紙の裏打ち紙などに利用されています)。
断熱性(熱を通しにくい性質)を持つ素材も重要で、建築用の断熱材や魔法瓶の中材、配管用保温シートなどに使われます。
近年ではシリカエアロゲルを繊維に加え、90%以上が空気でできた断熱紙なども登場しており、非常に低い熱伝導率で熱を閉じ込めることが可能です。
熱関連機能を備えた素材は、暮らしの安全・省エネから産業設備の効率化まで広く役立っています。
電気関連の機能(導電・帯電防止など)
電気に関する機能性としては、導電性や絶縁性、帯電防止機能が挙げられます。
導電性を付与した素材は電気を通すプラスチックや紙などで、電子部品やセンサー、静電気対策包装に活用されています。
例えば、紙に金属箔や導電性インクをコーティングした導電紙は、電子タグや簡易な回路基板として研究されています。
また高導電率を持つフィルムはフレキシブル電子デバイスに組み込まれています。
対照的に、絶縁性(電気を通さない性質)を持つ素材も電子部品の基板やコーティング材で重要です。
さらに、帯電防止は静電気の発生を抑える機能で、電子機器の包装材(ESD対策袋)やクリーンルーム用繊維に利用されています。
帯電防止袋には素材に界面活性剤系の帯電防止剤を練り込んだものや、樹脂自体を導電性にして半永久的に帯電しないようにしたものがあり、内部の電子部品を静電気から守ります。
このように電気特性を制御する素材によって、安全な電子製品や精密機器の使用が支えられています。
光関連の機能(光拡散・高反射など)
光に関する機能性には、光を制御する様々な特性があります。
代表的なものに、光拡散性・反射性・遮光性・UVカット性などが挙げられます。
光拡散性とは光を均一に広げる性質で、LED照明やディスプレイ用の拡散シートに使われます。
拡散フィルムはバックライトのムラをなくし、眩しさを抑える効果を発揮します。
高反射性とは光を効率よく反射する機能で、反射シートやミラーコートフィルムとして照明器具の裏地や太陽光パネルの集光部に利用されます。
高輝度反射シートは通常のシートの3~4倍の反射輝度を持ち、道路標識や車両マーキングなどに使われるほか、光を反射させ植物工場で植物に均一に光を当てる用途にも展開されています。
また、UVカット素材は紫外線を遮断する機能を持ち、衣料やウインドウフィルム、ガラスコーティングに応用され人や製品を紫外線から守ります。
さらに蓄光性(光を蓄えて暗所で発光)や調光性(光によって色や透過率が変わる)といった機能を備える素材もあります。
光関連機能は快適な照明環境やエネルギー効率、安全・美容用途まで幅広く貢献しています。
衛生・バリア関連の機能(抗菌・防臭など)
衛生面やバリア性に関する機能性も、現代の製品には欠かせません。
抗菌・防臭機能を持つ素材は、表面に付着した細菌の増殖を抑制したり、臭いの原因物質を化学的に中和したりします。
銀系の抗菌剤を練り込んだプラスチック容器や消臭繊維を使った衣類などがその例で、医療用品から日用品まで清潔さを保つ用途で活躍しています。
バリア性とは、水分・酸素・油分など特定の物質を通さない性質で、食品包装用のバリア素材が代表例です。
例えば酸素を通さないバリアフィルムは食品の酸化による劣化を防ぎ、湿気を遮断する包装はサプリメントや電子部品の品質保持に役立ちます。
紙素材では酸素を通さない「バリア紙」も存在し、食品包装や医療用品、建材に幅広く活用されています。
東洋製罐グループが開発した超水分バリアフィルム「MiraNeo®」はガラス並みの水分遮断性を持ち、しかもフィルム自体が柔軟で耐久性も高いため、従来はガラス基板が必要だった太陽電池を薄く曲げられるパネルにすることを可能にしました。
このように衛生・バリア機能に優れた素材は、安全で長持ちする製品づくりに不可欠であり、クリーンエネルギー分野の革新も後押ししています。
産業用途の機能(耐油・剥離など)
産業分野で求められる特殊機能として、耐油性や剥離性などがあります。
耐油性とは油分による劣化や浸透を防ぐ性質で、耐油紙のように食品包装で油を通さない紙が典型例です。
ハンバーガーの包み紙やドーナツの敷紙に使われる耐油紙は、揚げ物の油を吸わずに食材を清潔に保ちます。
近年ではPFAS(有機フッ素化合物)を使わない環境対応型の耐油紙も開発されており、従来のフッ素系製品と同等の耐油性能を保ちながら安心・安全と環境配慮を両立しています。
実際、米国の規制を受けて大手飲食チェーンが包装紙をフッ素不使用の機能紙へ切り替える事例も出ており、表面に特殊な耐油層を形成した非フッ素耐油紙が提案・導入されています。
剥離性とは物が付着しにくく容易に剥がせる性質で、シールやテープの台紙(剥離紙)や樹脂成形品の離型剤として利用されます。
例えばシール台紙に使われる剥離紙は、表面に剥がれやすい特殊コーティングを施した紙で、粘着ラベルをスムーズに剥がせます。
さらに、工業用品向けには摩耗や薬品への耐性、防錆性、防滑性など現場のニーズに応じた機能素材も数多く存在します。
例えば金属製品を錆から守る防錆紙は気化性防錆剤を染み込ませた包装材で、金属表面に薄膜を形成して水や酸素を遮断します。
産業用途向け機能を備えた素材は、生産効率の向上や製品寿命の延長、安全管理などに大きく寄与しています。
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さまざまな業界における機能性素材の事例
機能性素材は多種多様な業界で活用され、製品イノベーションを支えています。
ここではアパレル、電子部品、医療という異なる業界から、機能性素材の活用事例を紹介します。
それぞれの事例から、新素材がどのように製品価値を高め、課題解決につながっているかが分かります。
アパレル業界の事例:ユニクロ「ヒートテック」
ヒートテックは、機能性素材を用いたユニクロの大ヒット商品です。
2003年に登場した極薄インナーで、「着るだけで暖かい」を実現する吸湿発熱素材を使用した商品です。
開発には東レとの共同研究があり、糸(レーヨン繊維)から素材設計、縫製、パッケージ、PRに至るまで一貫してコントロールすることで、大量生産と機能性の両立に成功しました。
発売当初からその薄さ・軽さ・暖かさに対する評価は高く、しかも価格は1,000円程度に抑えたことで毎冬数千万枚規模の大ヒット商品となっています。
ヒートテック素材は保温・吸湿・伸縮・速乾・防臭など複数の機能を兼ね備え、薄手で快適さと機能性を両立しました。
その発熱の仕組みは、人体から発散される水分(水蒸気)をレーヨン繊維が吸着し、水分子の運動エネルギーを熱に変換して発熱するというものです。
このように、アパレル業界では機能性素材が衣服の付加価値を飛躍的に高め、市場の潜在ニーズを捉えた成功例となっています。
電子部品業界の事例:太陽電池用高機能フィルム
電子・エネルギー分野でも、機能性素材が次世代製品を支えています。
東洋製罐グループが展開する電子デバイス向け機能性材料ブランド「MiraNeo®」では、フレキシブル太陽光発電パネル向けの高性能フィルム「超水分バリアフィルム」を開発しました。
ガラスと同等の水分遮断性を誇る一方でフィルム自体は柔軟で高い耐久性・生産性を持ち、まずフレキシブル太陽光パネル用途から様々な製品への適用を進めています。
ベルギーのフレキシブル太陽電池メーカーEnfoil社と提携し、このフィルムを採用した薄型で曲げられる太陽電池パネルの量産と世界展開を加速中です。
MiraNeo®フィルムの高い防湿性と柔軟性により、Enfoil社のCIGS系フレキシブル太陽電池パネルが持つ「薄い・軽い・フレキシブル・高耐久」という特長をさらに向上させることができました。
日本国内でも物流トラックの屋根にフレキシブルパネルを設置し走行・発電する実証実験が開始され、新たな応用が期待されています。
高いバリア性能と柔軟性という機能性素材の力で、太陽電池パネルはガラス不要の「薄くて軽く曲がるうえ高耐久」という次世代の形態を実現し、クリーンエネルギー分野のイノベーションを後押ししている好例と言えるでしょう。
医療業界の事例:医療機器向けエンプラ素材
医療分野でも機能性素材は重要な役割を果たしています。
三菱ケミカルグループでは、人工関節などの医療機器や手術器具に適したエンジニアリングプラスチック(高機能樹脂)素材を提供しています。
例えば、インプラント(体内埋め込み)向けの高機能樹脂として超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)やPEEK樹脂を扱っており、前者は滑りと耐摩耗性に優れるため人工関節の軟骨ライナー部分に使われ、関節のスムーズな動きを支えるとともに摩耗粉の発生を抑えて再手術リスクを減らします。
後者のPEEKは骨に近い弾性率と強度を持つ硬質プラスチックで、脊椎固定用のケージや骨に靭帯を留めるアンカーねじとして利用され、金属に代わる軽量なインプラント材料として機能します。
これら医療用プラスチックは生体適合性が評価されており、長期体内留置の安全基準(ISOやUSPクラス分類)の事前試験もクリアしているため、医療機器メーカーは材料評価の一部を省略でき開発期間短縮につながっています。
また、人工関節用ポリエチレンにはビタミンEを添加してγ線などで架橋処理を施すことで酸化劣化を防ぎ、耐久性を向上させる工夫も行われています。
さらに長時間の放射線滅菌に耐える樹脂や、体液や薬剤による劣化が少ないコーティング材、カテーテル向けに高剛性と柔軟性を両立したポリマーなども開発されており、医療・ヘルスケア業界のニーズに応じたポリマーソリューションが展開されています。
機能性素材はこのように医療分野で人体適合性と性能を両立するため不可欠であり、患者の安全とQOL向上に寄与しています。
KPPが取り扱う機能性素材と環境対応への取り組み
機能性素材の選定や調達において、紙・パルプ専門商社である国際紙パルプ商事は心強いパートナーです。
環境配慮型素材や機能性材料の開発支援にも力を入れており、紙ベースの素材から環境にやさしいプラスチック素材、それらを用いた製品、リサイクル・アップサイクルの仕組みづくりまで幅広いソリューションを提供しています。
例えば食品包装分野では前述のPFASフリー耐油紙(ノンフッ素耐油紙)を取り扱い、顧客企業がいち早く有害物質を含まない素材へ切り替えられるよう支援しています。
実際に大手飲食チェーンへの非フッ素耐油紙提案・導入など、環境への配慮と将来の規制対応の両面で効果的なソリューションを提供しています。
国際紙パルプ商事はこうした代替素材の提案を通じて顧客の課題解決に貢献するだけでなく、グローバルネットワークを活かして海外の最新素材トレンドやサプライヤー情報も提供し、メーカーの開発担当者に最適な素材を結びつけます。
またプラスチック代替となる機能紙や次世代電池向け機能紙、生分解性樹脂などもラインアップに揃え、脱プラや脱炭素に貢献できる素材を世界各国から調達しています。
実際、生分解性コーティング紙やリサイクル性に優れた機能紙の開発にも挑戦しており、環境対応と機能性を両立した新素材の普及に積極的に取り組んでいます。
機能性素材まとめ
機能性素材は、製品開発に新たな可能性をもたらす重要な鍵です。
その種類は紙からプラスチック、金属まで多岐にわたり、付与できる機能も防水・耐熱・抗菌・導電など実にさまざまです。
本記事で見てきたように、アパレルの吸湿発熱インナーからエレクトロニクスの高耐久フィルム、医療のインプラント材まで、あらゆる業界で機能性素材が活躍し、製品価値を高めています。
また、環境対応型の機能素材も台頭しつつあり、持続可能な社会への移行と新たなビジネスチャンスの創出を両立できる点でも注目されています。
メーカーの製品開発担当者にとって、最適な新素材との出会いは競争力強化に直結します。
紙・素材の総合商社である国際紙パルプ商事は、そうした素材探しを専門知識とネットワークでサポートし、必要に応じて資料ダウンロードや個別相談の機会も提供しています。
ぜひ機能性素材の基礎知識を踏まえて、自社製品に活かせる素材を検討してみてください。
従来にない機能を持つ素材との出会いが、製品の差別化や新たな価値創造につながるでしょう。