ポジティブリスト制度(食品用器具・容器包装)とは?わかりやすくご紹介!
食品用器具・容器包装に関連する事業者において、把握しておかなければならないのが食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度です。
なかには「従来のネガティブリストとなにが違うのか」と疑問に感じる人もいるでしょう。
本記事では食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度についてわかりやすく説明し、対象物質やメリットなどをご紹介します。
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度とは
2020年に厚生労働省は食品用器具・容器包装に対して、安全性を評価した物質のみを使用可能とする「ポジティブリスト制度」を導入しました。
食品の製造や販売に関わる事業者は、ポジティブリスト制度について理解を深めておくことが大切です。
ここでは食品用器具・容器包装とはなにかを説明し、ネガティブリストとの違いを解説します。
食品用器具・容器包装とは
食品用器具・容器包装とは、食品や添加物と直接接触する機器や容器、包装材のことを指します。
食品衛生法第4条第4項および第5項では、次のように定義されています。
飲食器、割ぽう具その他食品又は添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列、授受又は摂取の用に供され、かつ、食品又は添加物に直接接触する機械、器具その他の物
出典:e-GOV|食品衛生法
具体的には、飲食器や割り箸、食品の製造・加工装置、保存用の箱やコンテナ、瓶、缶、袋、パック、カップ、トレイ、チューブ、蓋、包装紙などです。
これらの器具や容器包装は食品の安全性や品質に直接影響を与えるため、適切な規格や基準が設けられています。
ネガティブリストとの違い
日本では食品用器具・容器包装の規制に対し、これまでネガティブリスト制度を採用していました。
ネガティブリスト制度とは、使用が禁止されている物質や基準値をリスト化し、それ以外の使用を許可する方式です。
ネガティブリスト制度方式では、リストに掲載されていない物質について適切な対応が難しいという課題がありました。
一方、ポジティブリスト制度は、安全性が評価された物質のみを使用可能とする方式です。
ポジティブリスト制度が導入されていれば、新たに開発された物質や未知の物質についても安全性を確認し、使用の可否を判断できます。
ポジティブリストの対象物質
ポジティブリストの対象となる物質は、改正食品衛生法第18条第3項によって定義されています。
ここではポジティブリストの対象になる物質と対象にならない物質を紹介します。
対象になる物質
ポジティブリスト制度の対象となる材質は「合成樹脂」です。
合成樹脂が対象となる理由は次のとおりです。
- さまざまな器具や容器包装に広く使われており、公共の健康に与える影響を考慮する必要があること
- 欧米などの外国で、ポジティブリスト制度の対象となっていること
- 事業者団体が自ら管理に取り組んできた実績があること
参考:厚生労働省|食品衛生法等の一部を改正する法律の政省令等に関する資料
食品衛生法施行令においても、次のように定められています。
第一条食品衛生法(以下「法」という。)第十八条第三項の政令で定める材質は、合成樹脂とする。
出典:e-GOV|食品衛生法施行令
合成樹脂とは、高分子化合物のうち次の3つを意味します。
- 熱可塑性プラスチック
- 熱硬化性プラスチック
- 熱可塑性エラストマー
ゴムは合成樹脂に含まれません。
画像出典:厚生労働省|食品衛生法等の一部を改正する法律の政省令等に関する資料
対象にならない物質
ポジティブリスト制度の対象外となる物質は次の通りです。
- 合成樹脂以外の素材からできた物質
- 器具や容器から食品に移ることを目的とした物質
- 帯電防止や曇り防止などのために、器具や容器の表面に使われる液体や粉末
- 原材料に含まれる物質が化学的に変化してできた物質
- 最終製品に残ることを意図しない物質
合成樹脂以外の素材からできた物質とは、主に次のものです。
- 熱可塑性を持たない弾性体(ゴムの原材料)
- 無機物質
- 天然物(ロジン、ナフサ等の抽出物、蒸留物等)など
上記の物質はポジティブリストに記載されていないため、使用に際しては従来の食品衛生法に基づく管理を遵守し、安全性の確保を行う必要があります。
ポジティブリストのメリット
ポジティブリストに則った食品用器具・容器包装を用いることは、事業者にとってさまざまなメリットがあります。
ここでは3つのメリットを詳しく解説します。
安全性の確保
ポジティブリスト制度では、消費者に安全な食品用器具・容器包装を提供できます。 安全性が確認された物質のみが使用できるためです。
食品に有害物質が混入するリスクを減らし、食中毒などの健康被害を未然に防ぐことにもつながるでしょう。
また、安全性の高い材料を使用することで、より長く安心して使ってもらえる可能性があります。
消費者の信頼獲得につながり、企業のブランドイメージ向上が期待できるでしょう。
コンプライアンスの強化
ポジティブリスト制度は改正食品衛生法に基づく制度であり、食品業界全体に適用されます。
罰則のリスクを回避できるだけでなく、企業のコンプライアンス意識の高さを示すことにもなるでしょう。
また、国際的な規制や基準に合わせた対応が可能となり、輸出先の要求にも適合しやすくなります。
業務効率の向上
従来のネガティブリスト制度では、使用できない物質を個別に確認する必要がありました。
ポジティブリスト制度は使用可能な物質が明確にリスト化されているため、材料選定の手間を削減できます。
さらに、規制遵守の手続きや確認作業が明確化され、業務の透明性が高まります。
結果として、業務全体の効率向上とコスト削減が期待できるでしょう。
食品容器に求められること
食品衛生法が改正された背景には、食を取り巻く環境の変化や国際化等への対応などが挙げられます。
食品製造業者だけでなく、食品に関わる事業者は「食品容器になにが求められているのか」を改めて考え直す必要があるでしょう。
ここでは食品容器に求められることを詳しく解説します。
ポジティブリストを満たすこと
まず、ポジティブリストの基準を確実に満たすことが重要です。
食品容器は改正食品衛生法に基づき、ポジティブリスト制度に適合している必要があります。
ポジティブリストでは安全性が評価された物質のみ使用でき、リストに載っていない物質の使用は禁止されています。
なお、食品衛生法第53条に基づき、ポジティブリスト制度の対象となる器具や容器包装を製造または販売する事業者は、取引相手に対し、製品が制度に適合していることを説明しなければなりません。
器具や容器包装の原材料を扱う事業者も、製造事業者から適合性の確認を求められた場合、必要な説明を行うよう努めることが求められています。
賞味期限への対応(機能性)
食品容器は食品の品質を保持し、賞味期限を長く保つための機能性が求められます。
具体的には、酸素バリア性や遮光性、防湿性、耐熱性、耐寒性などを重視する必要があります。
それぞれの食品に適した機能を持つ容器を選択することで、食品の劣化を防ぎ、風味や栄養価の維持が可能です。
例えば、酸素に弱い食品には酸素バリア性の高い容器を、光に弱い食品には遮光性の高い容器を使用します。
賞味期限管理が不十分だと、賞味期限切れによる廃棄が発生し、食品ロスが増加しかねません。
万が一、賞味期限切れの食品が誤って出荷・販売されると、クレームや食中毒のリスクが生じる可能性もあります。
このような社会的責任を果たすためにも、食品事業者には適切な賞味期限管理が強く求められています。
環境対応、持続可能性
環境問題への意識の高まりにより、食品容器には環境対応と持続可能性が求められています。
実際に、リサイクル可能な素材やケミカルリサイクル技術の導入が進み、資源循環型の容器開発が活発化しています。
また、プラスチック使用削減の一環として、紙製ボトルの開発など新しい取り組みも行われています。
環境に配慮した容器を使用することで、地球環境への負荷を軽減できるでしょう。
企業にとっても環境への取り組みをアピールすることで、企業イメージの向上が期待できます。
廃プラスチックのリサイクルの重要性は次の記事で解説しています。
廃プラスチックのリサイクルの重要性についてはこちら
廃プラスチックのリサイクルはなぜ重要?国内における現状と課題
廃プラスチックに関する基本的な知識や情報に加え、世界や国内における現状と課題、実際の取り組み事例なども紹介...
KPPが取り扱う環境対応樹脂
KPP(国際紙パルプ商事株式会社)は環境負荷の低減を目指し、多様な環境対応樹脂を取り扱っています。
当社が扱う環境対応樹脂は、主にバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックで構成され、石油由来のプラスチックに代わる持続可能な素材として注目されているものです。
具体的な製品例として、NEQAS OCEANがあります。
NEQAS OCEANを導入した事例は次の記事を参考にしてください。
環境対応素材の加工も可能です
海洋性分解の特性を持つNEQAS OCEANの採用事例
当社は生分解性樹脂「NEQAS OCEAN」を提案し、釣り糸スプールへの製造に採用されました。..
KPPが取り扱うNEQAS OCEANについて
ここではNEQAS OCEANとはなにかを説明し、強みを解説します。
NEQAS OCEANとは
NEQAS® OCEANは、株式会社ネクアスが開発した生分解性バイオマスプラスチック成形材料です。
主成分である酢酸セルロースは、植物由来のセルロースと酢酸から生成され、海洋環境や土壌中で微生物により分解されます。
透明性や耐熱性、抗菌性に優れており、食品容器、包装資材、ストロー、化粧品容器など多様な用途で利用されています。
NEQAS OCEANの強み
NEQAS OCEANの強みを3つ紹介します。
ポジティブリストに対応
NEQAS OCEANは、日本バイオプラスチック協会(JBPA)の「バイオマスプラ」および「グリーンプラ」認定を取得しています。
また、2025年6月から主原料である「酢酸セルロース」がポジティブリストに追加されます。
つまり、NEQAS OCEANの採用はポジティブリストを満たすことにもつながります。
バイオマスについては次の記事を参考にしてください。
バイオマスについて詳細はこちら
バイオマスとはなにか 種類や活用方法をご紹介
化石資源を除く、動植物に由来する有機物の資源で、使用時に大気中のCO2を増加させないカーボンニュートラルの特性を...
高透明性
NEQAS OCEANは、従来の生分解性樹脂で課題とされていた透明度の低さを克服し、一般的なプラスチック(PETやアクリルなど)と同等の高い透明性を実現しています。
製品のデザイン性や視認性を損なうことなく、環境に優しい素材への置き換えが可能です。
また、射出成形やブロー成形などさまざまな成形方法に対応できる柔軟性も備えています。
海洋生分解性(環境対応)
NEQAS OCEANは土壌やコンポスト環境だけでなく、海洋環境でも生分解性を有しています。
万が一、製品が海洋に流出した場合でも、微生物の働きにより分解され、環境への負荷を軽減します。
出典:株式会社ネクアス
実際に日本バイオプラスチック協会の海洋生分解性認証を取得しており、海洋プラスチックごみ問題の解決に寄与するとして注目されています。
ポジティブリストへの対応はSHIFT ON
ポジティブリストに対応することは、食品用器具・容器包装に関連する企業にとって急務であるといえるでしょう。
今までのネガティブリストにはない、さまざまなメリットが期待できるのは上述したとおりです。
「ポジティブリストに対応したいが、よくわからない」
「どのような素材を選べばよいのか教えてほしい」
このような疑問を抱く方は、NEQAS OCEANがおすすめです。
ポジティブリストに対応しているだけでなく、さまざまな製品の代替として提案できます。