国際プラスチック条約とは?今後企業に求められる脱プラスチック課題を解説
現在、世界はプラスチック汚染という深刻な危機に直面しています。
海洋生物の誤飲、生態系への悪影響、人体への影響など、プラスチックごみの影響は生活のあらゆる場面に及んでいます。
このようなプラスチックごみの課題を解決するため、世界各国が協力し、国際的な枠組み作りを進めているのが「国際プラスチック条約」です。
本記事では国際プラスチック条約の概要、これまでの交渉の経緯、そして今後の課題について詳しく解説します。
国際プラスチック条約とは
国際プラスチック条約という言葉は知っていても、具体的にどのようなものなのか、なぜ制定されたのかを知らない方も多いでしょう。
ここでは国際プラスチック条約の概要と制定の経緯を説明します。
概要
国際プラスチック条約は、プラスチック汚染を解決するための法的拘束力のある国際条約です。
国際的なプラスチック規制の枠組みを作ることを目指し、2022年の国連環境総会(UNEA5.2)で各国が合意しました。
条約の具体案は5回の政府間交渉委員会(INC)で議論されており、約170か国やNGOなどが参加しています。
もちろん日本も参加し、さまざまな問題について主張しています。
開催・制定の経緯
国際プラスチック条約の制定に至るまでには、数々の国際的な取り組みがありました。
まず、2015年6月のG7エルマウ・サミットで、プラスチックごみ問題が世界的な課題として初めて首脳レベルで提起されました。
その後、2019年のG20大阪サミットにおいて、2050年までに海洋プラスチックごみの追加汚染をゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン(OBOV)」が共有され、現在87の国と地域が支持しています。
そして、2022年3月の国連環境総会において、「プラスチック汚染を終わらせる」ための政府間交渉委員会(INC)が設置されました。
このように国際プラスチック条約は、長年の議論と国際的な協力の積み重ねによって生まれたものです。
国際プラスチック条約におけるこれまでの会合
2022年3月の国連環境総会での合意に基づき、2022年から2024年にかけて計5回の会合が開催されました。
会合では、プラスチック汚染問題の解決に向けた国際的な枠組み作りが模索されています。
ここでは各会合の概要を説明します。
参考:環境省|海洋プラスチック汚染を始めとするプラスチック汚染対策に関する条約
第1回会合(INC-1)
2022年11月28日から12月2日までウルグアイで開催されたINC-1には、日本を含む約150か国から約2,300名が参加しました。
条約の目的や内容に関する議論が行われ、人の健康や環境保護、プラスチックのライフサイクル全体を考慮した規制の重要性が多くの国から指摘されました。
また、科学的知見の共有や途上国への支援の必要性も議論されました。
日本からは外務省、経済産業省、環境省が出席し、アジア太平洋地域の議論を促進するなど貢献しました。
参考:環境省 |「プラスチック汚染対策に関する条約策定に向けた政府間交渉委員会第1回会合」の結果について
第2回会合(INC-2)
2023年5月29日から6月2日まで、フランス・パリで開催されたINC-2には、約170か国・関係機関が参加しました。
第2回会合では、条約の目的や義務について議論が行われ、日本は2040年までの汚染ゼロ目標やリサイクルの推進を提案しました。
他国からも目標設定や資金支援の必要性が挙げられ、次回会合(INC-3)までに条文の原案を作成することが決定されました。
また、会合期間中には、日本の取り組みを紹介するサイドイベントも開催されました。
参考:環境省|プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第2回政府間交渉委員会の結果概要
第3回会合(INC-3)
各国からの提案を反映した改訂版条約案が作成され、次回会合(INC-4)での交渉の基盤となりました。
日本は、2040年までの追加的なプラスチック汚染ゼロ目標と循環利用の推進を提案しました。
また、科学的根拠に基づいた対応と、途上国への効果的な支援の必要性を主張しました。
参考:環境省|プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第3回政府間交渉委員会の結果概要
第4回会合(INC-4)
2024年4月23日から29日まで、カナダ・オタワで開催されたINC-4には、約170か国・2,500人が参加しました。
日本は2040年までの汚染ゼロ目標やプラスチック循環メカニズム構築を提案し、リユース・リサイクル推進や廃棄物管理支援の重要性を主張しました。さらに、各国が具体的な行動計画を策定し、実施状況を定期的にレビューすることの必要性を訴えました。
参考:環境省|プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第4回政府間交渉委員会の結果概要
第5回会合(INC-5)
2024年11月25日から12月1日まで、韓国・釜山で開催されたINC-5には、177か国から約3,800人が参加しました。
議長が提示した条文案を基に、条約全体について交渉が行われました。
一部の分野では具体的な文言交渉が進展しましたが、プラスチック製品の規制や資金メカニズムなど、重要な論点では意見の隔たりが大きく、合意には至りませんでした。
議長案をたたき台として、今後の交渉で議論を継続することが決定されました。
日本はプラスチックの循環利用や環境配慮型設計の推進、国別行動計画の重要性を主張しました。
参考:環境省|プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会の結果概要
国際プラスチック条約の今後の予定・課題
INC5ではプラスチック生産量削減の目標設定について各国間で合意に至らず閉幕し、課題が浮き彫りになりました。
EUなどは生産量削減目標の必要性を強く主張しましたが、石油産出国などが強く反発し、根本的な意見の隔たりが解消されないまま議論は決裂しました。
世界のプラスチック生産量は過去50年間で20倍に増加しており、さらに今後10~15年で倍増すると予測されています。
プラスチック生産量の増加は環境汚染の深刻化だけでなく、製造過程における温室効果ガスの排出量増加にも繋がり、地球温暖化を加速させる要因となっています。
このような状況下で、国際的な規制の必要性はますます高まっていますが、各国の利害が複雑に絡み合い、合意形成を阻んでいるのが現状です。
議論は2025年に再開される予定ですが、各国が歩み寄り、実効性のある条約を締結できるかどうかが今後の大きな課題です。
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今まで説明してきたとおり、全世界で脱プラが課題になっているのは間違いありません。また、プラスチックの問題が深刻化するなか、日本はさらに脱プラの流れが加速するでしょう。
そのため、すべての企業が脱プラについてしっかりと向き合うことが大切です。ただ、「どのように取り組めばよいかわからない」という企業も多いでしょう。
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脱プラを目指す主な方法
プラスチックに代わる素材として注目されているのが「紙」と「生分解性プラスチック」です。
ここでは「紙」と「生分解性プラスチック」による脱プラついて詳しく解説します
紙化
紙化とはプラスチック製品を紙製品に置き換えることで、環境負荷を低減する取り組みです。
紙は再生可能な木材を原料としているため、持続可能性が高い素材として期待されています。
また、プラスチックに比べてリサイクルが容易で、生分解性に優れているという利点があります。
実際に、プラスチック製のストローやレジ袋を紙製に置き換えたり、食品パッケージを紙製にしたりするなど、さまざまな取り組みが行われています。 昨今、資源の枯渇や廃棄物の処理問題、地球温暖化や温室効果ガスの増加問題により... 使用する素材をプラスチックから紙に変更する「紙化」の目的とメリットを、紙化対応した製品例、活用事例などからご説明します。...
詳しくは次の記事を参考にしてください。
環境に優しいパッケージについてはこちら
素材やリサイクルの特徴もご紹介
紙で置き換えできるものになにがあるか知りたい
紙化できる製品事例をご紹介 | プラスチック製品から紙製品へ
生分解性プラ
生分解性プラスチックは微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解されるため、環境負荷が低い素材として注目されています。
レジ袋、食品包装、農業用フィルムなど、幅広い用途で利用されており、特に海洋プラスチック汚染の抑制に貢献することが期待されています。
生分解性プラスチックの原料には、トウモロコシなどの植物由来のものと石油由来のものがあります。
詳しい使用用途やメリット・デメリットについては、次の記事を参考にしてください。
従来のプラスチックの機能に加え、土中や海中で分解する特徴をもった生分解性プラスチックが近年多く使用されて...
生分解性プラスチックとは?
使用用途やメリット・デメリットも併せてご紹介
プラスチック問題の解決策としてプラスチック代替え素材と製品例
SHIFT ONの脱プラ事例
SHIFT ONでは、企業の脱プラ活動を積極的に支援しています。
ここでは、同社が支援する春日製紙工業株式会社とグローブライド株式会社の具体的な事例をご紹介します。
パッケージを紙に置き換えた【春日製紙工業様】
春日製紙工業様は「地球とともに。」をキャッチフレーズに、紙類パルプの製造加工、古紙資源の有効活用に取り組んでいます。
同社は環境負荷削減のため、従来プラスチックで包装していたペーパータオルのパッケージを紙化することを検討されていました。
当社はペーパータオル原紙にPEラミネート加工を施し、ペーパータオル自体を包装材として使用することを提案しました。
結果として、プラスチック使用量を削減し、外装・中身ともに紙化を実現できました。
春日製紙工業様は、ペーパータオルの外装の見直しをはかり紙素材への置き換え検討をおこないました。...パッケージを紙に置き換えた【春日製紙工業様】
パッケージを紙へ包装製品 紙化対応の事例
生分解性樹脂の使用を採用した【グローブライド株式会社様】
グローブライド株式会社様は、釣り用品をはじめとするスポーツ用品のリーディングカンパニーです。
スポーツをするフィールドである地球の豊かさ、持続性の保護にも力を入れており、釣り糸スプールに当社の生分解性樹脂「NEQAS OCEAN」を採用いただきました。
グローブライド様が「NEQAS OCEAN」を採用された決め手は、海洋生分解性を有している点とコストメリットがあった点です。
導入後はメディアに掲載されたことで社内外の評価が高まり、SDGsへの取り組みとして発信されています。
今回の採用をきっかけに、グローブライド様は来年度、新たなスプールシリーズへの「NEQAS OCEAN」の採用を検討されています。
当社は生分解性樹脂「NEQAS OCEAN」を提案し、釣り糸スプールへの製造に採用されました。..環境対応素材の加工も可能です
海洋性分解の特性を持つNEQAS OCEANの採用事例
脱プラの対応ならSHIFT ON
プラスチック汚染問題解決のため、法的拘束力のある国際条約「国際プラスチック条約」の制定が進められています。
2022年の国連環境総会で合意され、2024年末までに作業完了を目標に、5回の政府間交渉委員会(INC)で議論が進められました。
しかし、2024年11月のINC5では、プラスチック生産量削減目標の設定について各国間で合意に至らず、課題が残りました。
このように、プラスチックはさまざまな国で喫緊の課題になっており、日本も例外ではありません。
国内における脱プラスチックの取り組みとしては、紙化や生分解性プラスチックの利用などが進められています。
SHIFT ONは春日製紙工業の紙製パッケージへの転換や、グローブライドの生分解性樹脂の利用など、企業の脱プラ活動を支援しています。
「どのように脱プラを進めていけばよいかわからない」「もっと効率的に脱プラを図りたい」という企業様は、まずはお気軽にご相談ください。
本内容を詳しくご説明した資料はこちらからダウンロードいただけます。
脱プラについてのお問い合わせはこちら
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