物流の環境対策に貢献!プラスチックパレットのメリットと最新動向とは?

物流現場で荷物を載せる土台として不可欠な「パレット」。中でも軽量で耐久性が高く、衛生的な特性を持つことから、様々な業界で「プラスチックパレット」の利用が拡大しています。
この記事では、プラスチックパレットの基本的な情報から、そのメリット、そして物流における環境問題との関連性、今後の動向までを詳しく解説します。物流業界に携わる方だけでなく、持続可能な社会に関心のある方にも役立つ情報をご提供します。
プラスチックパレットの基本と役割
物流において、パレットは荷役、保管、輸送の効率化に欠かせないツールです。特にプラスチックパレットは、その特性から多くの現場で選ばれています。
ここでは、まず物流パレット全体について触れ、次にプラスチックパレットに焦点を当ててその役割とメリットを深掘りします。
物流パレットとは
物流パレットは、フォークリフトやハンドリフトなどの荷役機械で荷物をまとめて持ち上げ、移動させるための荷台です。これにより、手作業では困難な重量物や大量の荷物を効率的に扱うことが可能になります。
パレットの活用は、物流コストの削減、作業時間の短縮、倉庫スペースの有効活用、そして作業員の負担軽減に大きく貢献しています。
物流パレットの種類
物流パレットには、主に素材による違いがあります。
代表的なものとして、木製パレット、プラスチックパレット、金属製パレット、紙パレットなどがあります。
- 木製パレット: 最も古くから利用されているパレットで、比較的安価で修理が容易という特徴があります。しかし、ささくれや釘の飛び出しによる荷物や作業員へのダメージ、腐食やカビの発生、重量が大きいといったデメリットもあります。また、国際輸送においては、植物検疫の規制(ISPM No.15)により熱処理や燻蒸処理が必要となる場合があります。
- プラスチックパレット: 軽量で耐久性が高く、衛生的であることから近年利用が拡大しています。メリットが多く、様々な用途で使われています。
- 金属製パレット: 非常に強度が高く、重量物や高頻度での使用に適しています。しかし、自重が大きく、コストも比較的高めです。
- 紙パレット: 軽量でリサイクルが容易なエコフレンドリーなパレットです。ただし、耐水性や強度が他の素材に比べて低い場合があります。
これらのパレットは、それぞれ異なる特性を持つため、輸送する荷物の種類、保管環境、輸送方法など、用途に応じて最適なものが選ばれます。
物流パレットのサイズ
物流パレットには様々なサイズがありますが、国際的に標準化されたサイズと、日本国内で広く普及しているサイズがあります。サイズの標準化は、物流機器や倉庫設備の共用、国際間のスムーズな物流を実現するために重要です。
国際標準化機構(ISO)では、いくつかの標準パレットサイズを定めています。代表的なものとしては、以下のサイズがあります。
- 1200mm × 1000mm: 欧州やアジアで広く使用されています。
- 1200mm × 800mm: 欧州で最も一般的なサイズです(ユーロパレット)。
- 1140mm × 1140mm: 北米などで使用されることが多いサイズです。
一方、日本国内で最も普及しているサイズは、1100mm × 1100mmです。これはT11型パレットとも呼ばれ、国内物流の標準として多くの企業で採用されています。このサイズが普及した背景には、国内のトラックの荷台サイズや倉庫の設計などが影響しています。
パレットのサイズは、積載効率や保管効率に直結するため、物流システム全体を設計する上で非常に重要な要素となります。適切なサイズのパレットを選択することで、輸送コストの削減や倉庫スペースの有効活用が可能になります。
プラスチックパレットとは
プラスチックパレットは、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのプラスチック素材を射出成形などで一体成形して作られたパレットです。木製パレットに比べて多くのメリットを持つことから、食品、医薬品、化学品、精密機器など、幅広い分野でその利用が拡大しています。
プラスチックパレットのメリット
プラスチックパレットが普及している主な理由として、以下のメリットが挙げられます。
- 軽量性: 木製パレットに比べて軽量なものが多く、取り扱いが容易です。これにより、作業員の負担軽減や輸送コストの削減に繋がります。例えば、一般的な木製パレットが約20kg~30kgであるのに対し、プラスチックパレットは種類によっては10kg台のものもあります。輸送時の車両積載量を有効に活用でき、燃費向上にも貢献します。
- 高耐久性・長寿命: 繰り返し使用に強く、破損しにくいため、木製パレットに比べて長持ちします。これにより、パレットの購入・修繕コストを削減できます。適切な使用環境下であれば、数年から10年以上にわたって使用されることも珍しくありません。
- 衛生的: 吸水性がなく、カビや腐食の心配がありません。洗浄が容易で、クリーンな状態を保つことができるため、食品や医薬品などの衛生管理が厳しく求められる分野での使用に適しています。異物混入のリスクも低減できます。
- 安全性: ささくれや釘の飛び出しがないため、荷物や作業員を傷つけるリスクが低いです。作業環境の安全向上に貢献します。
- サイズ・形状の均一性: 成形によって作られるため、サイズや形状にばらつきが少なく、自動倉庫システムやコンベヤラインでの使用に適しています。物流システムの自動化・効率化を促進します。
- リサイクル性: 使用済みのプラスチックパレットは、粉砕して新たなプラスチック製品の原料としてリサイクルすることが可能です。環境負荷低減に貢献する側面も持ち合わせています。
これらのメリットから、プラスチックパレットは現代の物流において不可欠な存在となっています。初期投資は木製パレットより高くなる傾向がありますが、長期的な視点で見ると、その耐久性やメンテナンス性の高さからトータルコストで優位に立つケースも多くあります。
プラスチックパレットと物流業界における環境問題
近年、地球規模での環境問題への意識が高まる中、物流業界においても環境負荷の低減が重要な課題となっています。
輸送に伴うCO2排出量、梱包材の使用量、廃棄物の発生など、様々な側面での対策が求められています。プラスチックパレットは、その特性からこれらの環境問題に対して貢献できる可能性を秘めています。
物流における環境問題の現状
物流は、経済活動を支える上で不可欠ですが、同時に環境に大きな負荷を与えています。国土交通省のデータによると、日本の運輸部門からのCO2排出量は、国内の総CO2排出量の約18%(2022年度速報値)を占めており、そのうち営業用貨物車からの排出量が約40%を占めています。これは、物流における環境対策が喫緊の課題であることを示しています。
主な物流 環境問題としては以下の点が挙げられます。
- CO2排出量の削減: トラックや船舶、航空機など、輸送手段からのCO2排出は地球温暖化の主要因の一つです。燃費の良い車両の導入、エコドライブの推進、モーダルシフト(トラック輸送から鉄道や船舶輸送への転換)などが求められています。
- 廃棄物の削減: 梱包材やパレットなどの物流資材の廃棄は、環境負荷となります。リデュース(発生抑制)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)といった3Rの推進が重要です。
- 大気汚染・騒音: 輸送車両からの排出ガスや騒音は、沿線住民の健康や生活環境に影響を与えます。環境基準を満たす車両の導入や、深夜・早朝の運行抑制などが対策として行われています。
- 積載効率の向上: 非効率な輸送は、無駄なCO2排出やコスト増に繋がります。積載率の向上や共同配送の推進により、輸送回数を減らすことが求められています。
これらの問題に対し、物流業界全体で様々な取り組みが進められています。プラスチックパレットも、その特性を活かしてこれらの環境問題対策に貢献できる可能性があります。
プラスチックパレットの環境負荷と対策
プラスチックパレットは、製造時に石油資源を消費するという側面がある一方で、その長寿命性やリサイクル性から環境負荷低減に貢献できるポテンシャルを持っています。
リサイクルと再利用の推進
使用済みのプラスチックパレットは、回収・粉砕され、新たなプラスチック製品(再びパレットになることもあります)の原料としてリサイクルされる仕組みが構築されています。これにより、廃棄物の削減と資源の有効活用が促進されます。
また、破損したパレットを修理して再利用することも行われています。これにより、パレット自体の寿命を延ばし、新規製造に伴う環境負荷を低減することができます。パレットレンタルシステムも普及しており、これによりパレットが共有され、稼働率が向上することで、必要なパレット総数を減らす効果も期待できます。
軽量化・長寿命化の取り組み
プラスチックパレットの軽量化は、輸送時の燃費向上に直結し、CO2排出量の削減に貢献します。技術開発により、強度を維持しつつ軽量化を実現したパレットが開発されています。例えば、従来品と比較して10%以上の軽量化を実現した製品も市場に登場しており、これにより輸送効率が向上し、環境負荷低減に貢献しています。
また、耐久性の向上による長寿命化も重要な環境対策です。パレットの交換頻度が減ることで、製造・廃棄に伴う環境負荷を抑制できます。設計の見直しや高強度な素材の採用により、より長く使用できるパレットの開発が進められています。
プラスチックパレットの今後の動向
プラスチックパレットは、今後も物流業界において重要な役割を担っていくと考えられます。その動向には、環境対応、技術革新、そしてグローバル化が大きく影響するでしょう。
環境問題への意識の高まりから、リサイクル材の使用率を高めたパレットや、バイオプラスチックなどの環境負荷の低い素材を使用したパレットの開発が進むと予想されます。また、パレットのレンタル・シェアリングサービスの拡大により、パレットの稼働率を上げ、全体の使用量を抑制する動きも加速するでしょう。
環境配慮と企業価値向上を実現する「OBPパレット」
ここでは、SHIFT ONが取り扱う環境問題への具体的なソリューション「OBPパレット」をご紹介します。このパレットは、海洋プラスチックごみ問題の解決に貢献すると同時に、企業の環境配慮への取り組みを明確に示すことができる製品です。
OBP(Ocean Bound Plastic)とは?
OBP(Ocean Bound Plastic)とは、海岸から50km以内の内陸部で適切に管理されずに放置され、海に流出する可能性のあるプラスチックごみを指します。世界の海洋プラスチックごみの約80%は陸上から発生していると言われており、OBPの回収は海洋汚染防止のための喫緊の課題です。
OBPパレットは、このOBPを原料の一部として使用することで、海洋へのプラスチック流出を未然に防ぐことに貢献しています。特に、海洋プラスチックごみの主要発生源とされるアジア圏(タイなど)で回収されたOBPを積極的に活用しています。
OBPパレットが物流環境問題に貢献する仕組み
OBPパレットの導入は、直接的に海洋プラスチックごみの削減に繋がります。海に流出する前に回収されたプラスチックを有効活用することで、新たなプラスチックの製造量を抑制し、資源の循環を促進します。また、リサイクル材(OBP含む)を使用することで、バージン材のみを使用した場合と比較して製造時のCO2排出量を削減する効果も期待できます。例えば、あるシミュレーションでは、リスパレットJL-D4・1111Lを1,000枚製造する際に、OBPを含むリサイクル材を使用することで、約11,322kg CO2の排出量削減が見込まれるという結果が出ています。
OBPパレットの主な仕様と特徴
OBPパレットは、従来のプラスチックパレットが持つ軽量性、高耐久性、衛生性といったメリットを維持しつつ、環境配慮の要素を加えています。主な仕様としては、国内物流で広く使用されている1100mm×1100mmサイズをはじめ、様々なサイズや形状(片面四方差し、両面二方差しなど)のラインナップがあります。
素材にはPEやPPのリサイクル材が使用され、その一部にOBP(5%配合)が含まれています。多くの製品で動荷重1,000kg、静荷重4,000kgといった十分な強度を確保しており、様々な物流現場での使用に対応します。
また、調達されるOBPはUL規格認定を受けており、信頼性の高い原料を使用しています。環境省が推進する「Plastics Smart」のロゴが印字されていることも特徴の一つです。
OBPパレット導入による企業メリット
OBPパレットの導入は、単なる物流資材の変更に留まらず、企業の価値向上に大きく貢献します。
第一に、海洋プラスチックごみ問題という世界的な課題解決に向けた具体的な行動を示すことで、企業のブランドイメージや企業価値の向上に繋がります。環境問題への積極的な取り組みは、消費者や取引先からの信頼獲得にも寄与します。
第二に、企業の環境レポートやCSR活動において、具体的な導入事例として紹介することができます。これにより、企業のサステナビリティへの取り組みを社内外に効果的にアピールできます。
第三に、環境配慮型のパレットを日常的に使用することで、従業員の環境意識の醸成にも役立ちます。綺麗な海を次世代に残すという共通認識を持つことは、組織全体のエンゲージメント向上にも繋がるでしょう。
プラスチックパレットまとめ
プラスチックパレットは、軽量性、高耐久性、衛生性など多くのメリットを持ち、物流効率化に不可欠なツールです。リサイクルや長寿命化により環境問題にも貢献し、特にOBPパレットは海洋プラスチックごみ削減に寄与します。OBPパレットの導入は、企業の環境イメージ向上やCSR推進にも繋がります。今後のプラスチックパレットは、環境対応、技術革新、グローバル化によりさらに進化し、持続可能な物流システム構築に貢献していくでしょう。
参考